ここ最近は新聞やテレビなどを見ていると、マイナンバーカードに関するトラブルが、よく取り上げられている印象があります。
例えばマイナ保険証(健康保険証の登録を済ませたマイナンバーカード)に関しては、自分のマイナンバーと別人の資格情報が誤って紐付けされたことにより、次のようなトラブルが起きているようです。
・ 病院などの窓口に設置されたカードリーダーにマイナ保険証を置き、4桁の暗証番号を入力したら、別人の名前が表示された
・ マイナポータルにログインして、医療情報(診療を受けた病院の名前や処方された薬の名前など)を調べようとしたら、別人の医療情報が表示された
またカードリーダーの不具合などにより、マイナ保険証を使えなかったため、病院などから医療費の10割負担を求められたという、紐付けとは関係のないトラブルも起きているようです。
現在はマイナ保険証を使えなかったとしても、紙やプラスチックなどの健康保険証を持っていれば、それを代わりに使えます。
しかし2024年秋頃までには、紙やプラスチックなどの健康保険証が原則廃止され、マイナ保険証に一本化される予定です。
この時になっても同様のトラブルが絶えないようだと、安心して診療を受けるのが難しくなると思います。
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トラブルの原因は人為的なミスとシステム
マイナ保険証以外にもマイナンバーカードに関するトラブルは発生しており、それは例えば次のようになります。
・ 市役所にマイナンバーカードを受け取りに行ったら、別人の写真が張り付けてあった
・ コンビニで住民票の写しを取得しようとしたら、別人の住民票の写しが出てきた
・ マイナポータルにログインした後に、ねんきんネットで年金記録を調べようとしたら、別人の年金記録が表示された
・ マイナンバーカードの取得、健康保険証の登録、公金受取口座の登録を済ませた方に付与されるマイナポイント(最大2万円分)が、別人に付与されてしまった
・ 公金受取口座に別人名義の口座が登録されていた(市役所にある共用端末で登録を済ませた後にログアウトしなかったため、その後に登録した方の口座が上書きされたことが原因)
・ 例えば親が子供の公金受取口座に、親名義の口座を誤って登録した(子供名義の口座を登録しないと、給付金などが振り込まれない)
これらのトラブルの主な原因について政府は、健康保険組合の職員などの人為的なミスだと説明しています。
ただ人為的なミスを防ぐためのシステムが設計されていれば、多くのトラブルは防止できたと主張する方もいるため、人為的なミスであると同時にシステムの問題でもあるのです。
死亡後もマイナンバーカードの返納は待った方が良い
こういったトラブルが次々に発生しているため、不安を感じている方は多いと思います。
JNNが全国の18歳以上の男女2,572人を対象にして、マイナンバーの活用に関するアンケート調査を実施したところ、「大いに不安を感じている」が32%、「ある程度不安を感じている」が40%になったそうです。
両者を合計すると72%になるため、約7割の方がマイナンバーの活用に関して、不安を感じているとわかります。
TwitterなどのSNSを見ていると、「マイナンバーカード返納運動」といったハッシュタグを付けて投稿している方がいるため、マイナンバーだけでなくマイナンバーカードの活用にも不安を感じているようです。
2024年秋頃までには、紙やプラスチックなどの健康保険証が原則廃止されますが、マイナ保険証を保有していない方には、健康保険証の代わりになる資格確認書が発行される予定です。
また公金受取口座を登録していない場合、給付金などの振り込みが遅れる可能性がありますが、受け取れないわけではありません。
こういった理由によりマイナンバーカードを返納しても、すぐに困ることはないと推測されますが、個人的には待った方が良いと思います。
その理由としてはマイナンバーカードを取得する時に、マイナンバーが記載された通知カードを返納し、かつ再発行できないため、例えば証券口座を開設する時などに、マイナンバーを証明する書類がなくなるからです。
住民票の写しや住民票記載事項証明書は、マイナンバーが記載されたものを発行できるため、これらをマイナンバーの証明書類にするという方法も考えられます。
しかしマイナンバーの証明書類が必要になるたびに、市役所に行って住民票の写しなどを取得するのは、手間や時間がかかるのです。
そうなるとマイナンバーカードを返納する現実的なタイミングは、死亡して必要がなくなった時だと思います。
なお市区町村に死亡届が提出されると、マイナンバーカードは自動的に失効するため、返納しないで親族が破棄しても良いのです。
ただ市区町村のウェブサイトを見ていると、死亡保険金の請求や相続の手続きなどの際に、マイナンバーが必要になる場合があるため、返納や破棄は待った方が良いと記載されています。
死亡後に被保険者番号を探すのが大変になる
原則として75歳になると、都道府県単位で設置された後期高齢者医療広域連合が運営している、後期高齢者医療に加入します。
この後期高齢者医療の加入者が死亡した場合には、葬儀を行った親族などに対して、5万円の葬祭費が支給されます。
自営業やフリーランスなどが加入する国民健康保険、会社員などが加入する健康保険にも同様の制度があるため、忘れずに受け取りたいところです。
現在は病院などの窓口に行くと、マイナ保険証を読み取るためのカードリーダーが設置されている場合が多いため、資格確認などの人間が行っていた作業を軽減できます。
これと同じように葬祭費を受け取るための手続きも、マイナンバーや公金受取口座の活用によって、人間が行っていた作業を軽減できると思ったのです。
例えば市区町村に死亡届が提出されると、この中の情報はマイナンバーによって後期高齢者医療広域連合に伝わり、登録した公金受取口座に葬祭費が振り込まれるとしたら、人間が行っていた作業はかなり軽減されます。
しかし葬祭費の支給申請書には、死亡届に記載した情報(例えば死亡年月日など)を、再び記入する必要があるため、マイナンバーによる連携が不十分だと思います。
また公金受取口座の登録を済ましている場合でも、葬祭費の振込先口座を記入する必要があるようです。
これら以上に問題があると思ったのは、後期高齢者医療被保険者証(後期高齢者医療の健康保険証)の表面に記載された被保険者番号を、記入する必要がある点です。
なぜ問題なのかというと、マイナンバーカードの表面には被保険者番号が記載されていないため、2024年秋頃までにマイナ保険証に一本化されたら、被保険者番号を探すのが大変になるからです。
ただ2024年秋頃までには書式が変わり、被保険者番号ではなくマイナンバーを記入するようになるかもしれません。
もしマイナンバーを記入するようになった場合、これのわかるものが必要になるため、マイナンバーカードの返納や破棄は待った方が良いのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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