住宅ローンの借り換えはタダではできません
2022年の年末に日銀総裁発言をきっかけに、
と不安になっている人もいると思います。
このように、金利について動きがあるとき銀行は、他の銀行で返済中の住宅ローン借り換えを積極的に推進しますので、もしかしたら明日、あなたのところに銀行員が借り換え提案に来るかもしれません。
借り換えには必要な費用がいくつもあり、住宅ローン借り換えはタダではできません。
この記事では、住宅ローンの借り換えに必要な費用を説明します。
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住宅ローン借り換えに必要な費用
住宅ローンの借り換えの流れは、
- 借り換えする銀行で新規に借り換えローンを借りる
- 返済中の住宅ローンを完済する
- 前の住宅ローン担保の登記を抹消する
といった順序で進み、それぞれのステップで必要な費用を払うことになります。
費用1:保証料またはローン手数料
銀行やローンの種類によっては保証料が不要な住宅ローンもあります。
ただしその場合、保証料の代わりに手数料が必要になります。
この章では「保証料またはローン手数料」と表現します。
銀行の住宅ローンは「保証会社の保証付き」が主流で、これは借り換えでも同じです。
保証会社とは、住宅ローンを借りた人(債務者)が、収入の減少などでローン返済ができなくなったとき、保証会社が一括して銀行にローン残額を返済する仕組みです。
保証会社という会社が保証人になり、住宅ローンを借りるイメージで、保証会社がローンを保証する対価として保証料が必要になります。
保証料は「融資額に対し◯%」と計算しますが、借入年数が長いほど料率(保証料額÷借入額)が高くなり、借入額が大きくなれば保証料も増える仕組みになっています。
保証料の料率を公表している銀行は少ないのですが、相場としては0.1〜2.0%程度で借入年数が長いほど料率が上がる決まりです。
例)借入額100万円あたりの保証料(料率=保証料÷1,000,000×100)
※料率、保証料額の計算は筆者・小数点第二位切り捨て
借入1年の保証料:1,016円(料率0.1%)
→借入額3,000万円の保証料総額:30,480円(別途消費税)
借入10年の保証料:8,544円(料率0.8%)
→借入額3,000万円の保証料総額:256,320円(別途消費税)
借入20年の保証料:14,834円(料率1.4%)
→借入額3,000万円の保証料総額:445,020円(別途消費税)
借入30年の保証料:19,137円(料率1.9%)
→借入額3,000万円の保証料総額:574,110円(別途消費税)
これはりそな銀行が公式ページで公表している保証料を参考にしたものです。
なお銀行の公式ページにある「住宅ローン借入シミュレーション」などで保証料が表示される場合は、その銀行における保証料率を反映しているものもあります。
実際の保証料計算方法は銀行、ローンの種類によっても違いますので、ご自身で確認してください。
参照:りそな銀行 保証料(一括前払い)の一覧表
費用2:ローン手数料
こちらの手数料は「ローン手数料」(「ローン取扱手数料」「融資手数料」などとも)と呼びます。
呼び方はいろいろですが「ローンを扱うことに対する手数料で、保証料に相当するもの」といった意味で「ローン事務手数料」とは異なります。
ローン手数料は借入額に対し2.0%(消費税込みで2.2%)程度が相場です。
「保証料は不要です」といった住宅ローンでも、ローン手数料が税込み2.2%必要なら保証料と変わらない金額が必要になります。
【例】借入額3,000万円×2.2%=660,000円
- 保証会社の保証をつけて、2%程度の保証料を保証会社に支払う
- 保証会社の保証は無しで、2%程度の手数料を銀行に支払う
費用としてはほぼ同じ水準になります。
参照:三井住友銀行 ローン手数料(住宅ローン等)
費用3:ローン事務手数料
住宅ローンの事務処理に対する手数料で、他に「事務手数料」「ローン取扱手数料」などと表現する場合もあり、上記の「ローン手数料」と似ていますが、共通しているのは事務に対する手数料で、こちらは定額で55,000円(税込)程度です。
費用2の「ローン手数料」に事務手数料を含む場合や、ローン手数料とローン事務手数料が必要な銀行もあります。
保証会社保証付きで保証会社の事務手数料と銀行の事務手数料が必要な場合もあり、手数料は銀行により名目や金額が違うので、必ずご自身で確認するようにしてください。
費用4:登記費用
住宅ローンでは購入する土地や建物を担保にしますので、そのため法務局に登記する必要があり、そこで必要になるのが登記費用です。
登記は法務局に印紙として収めるのですが「名義変更」「担保の登記(抵当権設定登記)」など内容により金額が変わります。
また登記は専門家である司法書士に依頼する場合がほとんどなので、司法書士への費用(報酬)も加わります。
住宅ローンの借り換えでは
- 返済中の銀行担保を解除する登記
- 借り換える銀行で新たに担保とする登記
の流れになります。
登記費用は不動産の数や借り換えるローン金額にも左右されます。
ある銀行のシミュレーションでは、借り換え金額3,000万円の場合、登記費用は概算で21万円でした。
費用は必ずご自身で確認してください。
費用5:利息精算
今返済している住宅ローンを、次の返済日が来る前に完済するときに利息精算が必要になります。
住宅ローンは「利息後取り(あとどり)」といって、毎回支払う利息は前月のローン残高に対する利息を翌月に支払う形式です。
実際に住宅ローンを返済中の人は手元にある「返済明細(返済計画表)」をご覧になるとわかります。
たとえば今月(2023年4月)に支払うローン返済額で利息が15,000だとしたら、それは2023年3月のローン残額に対しての利息です。
ローン返済日は人によって違うので、仮にローン返済日が毎月1日の人が15日に借り換えして全額返済すると、15日分の利息を精算して支払わないといけません。
これはボーナス払いも同じで、借り換えするときには利息精算が必要になるので、自分が想定しているローン残高より利息精算分費用が必要になると覚えておいてください。
費用6:収入印紙
住宅ローンの借り換えも、新しく銀行で住宅ローンを借りて今のローンを返済するので、新規の借用金証書(正式には「金銭消費貸借契約証書」)に貼る収入印紙代は費用として必要になり、意外と大きな金額なので注意が必要です。
【例】住宅ローン借り換え金額3,000万円の場合、契約証書の収入印紙は2万円
参照:国税庁 印紙税額 文書の種類3.消費貸借に関する契約書(pdf)
費用7:繰り上げ返済手数料
住宅ローンを借り換えする場合、返済中の銀行には住宅ローンを全額返済(完済)することになるので手数料が必要になるケースがあります。
一般に「繰り上げ返済手数料」(全額返済手数料などとも)と呼ばれるものです。
「借金がなくなるんだから銀行は嬉しいんじゃないの?」
こう感じることがあると思います。
繰り上げ返済に対応する際に銀行では事務処理が伴います。
その手間に対する対価として手数料をもらう仕組みなのですが、実態として住宅ローンを途中で全額返済されてしまうと、残り何年かに渡ってもらえるはずだった利息収入の「アテが外れてしまう」ので手数料をもらう、という意味合いもあります。
手数料は無料の銀行があるいっぽうで、数千円〜数万円の手数料が必要になるケースもあります。
いくつかの銀行で手数料を見ると以下のとおりです。
手数料の金額だけ並べると銀行の優劣比較になっってしまうので、以下は筆者が銀行公式ページで調査しましたが銀行名は伏せてありますので、実際の手数料はご自身で確認してください。
A銀行:11,000円(インターネット手続きの場合・窓口扱いは33,000円)
B銀行:5,500円(インターネット手続きの場合・窓口は22,000円)
C銀行:無料
「変動金利(変動金利期間中)は無料、固定金利(固定金利期間中)は有料」という金融機関もあります。
上記以外にも「保証会社手数料」(保証会社の保証付きローンの場合)が別途必要になるケースなどもあります。
最近は数が減りましたが「違約金」などの名称で主に固定金利形式の住宅ローンで繰り上げ完済するときには「ローン残高×2.2%(税込み)」の手数料が必要になる可能性もありますので、必ず自分の返済している金融機関に確認してください。
繰り上げ返済手数料や違約金が必要になると、借り換えでお得になる金額が吹っ飛んでしまう可能性もありますので、注意が必要です。
ローン完済で「戻ってくるお金」「戻ってこないお金」
借り換えでも自己資金でも、住宅ローンを完済した場合に戻ってくるお金もあります。
たとえば「保証料」(保証会社扱い住宅ローンで一括前払いしたケース)は、当初の借入年数など計算して戻ってくる場合があります。
筆者が調べたところ、「融資手数料」(住宅ローンを借り入れるとき「融資額×2.2%(税込み)」程度の金額を銀行に一括支払いする形式 最近ネット銀行や他の金融機関で増えているローン)は、繰り上げ完済しても戻ってこないところが多いようですので、こちらも自分の契約書類などを見直しておく必要があります。
諸費用を考えてメリットを検討すべき
「諸費用込みで借り換えできるので、自己負担なし!」といった宣伝文句の意味は、
ということであり、実際には借り換えに必要な費用は支払います。
借り換えを考えるときは諸費用を計算し、メリットを慎重に検討する必要があります。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)