今年の10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されます。
消費税の課税事業者にとっては事務作業の負担増加の問題がありますが、消費税の免税事業者にとっては、
- 消費税の課税事業者(適格請求書発行事業者)を選択するのか?
- 今年の10月以降も免税事業者のままの選択をするのか?
悩ましいところです。
インボイス制度とは?
インボイス制度は、消費税の仕組みのうちの1つです。
事業者が支払う消費税額の計算方法は、下記のとおりとなっています。
事業者が支払う消費税額の計算方法
課税売上高に対する消費税額(売上税額)-課税仕入れ等に対する消費税額(仕入税額)【仕入税額控除】=納付する消費税額
仕入税額控除は、インボイス制度が導入されるまでの今年の9月末までは、仕入先等が課税事業者・免税事業者に関係なく仕入税額控除の対象となります。
ところが、今年の10月以降のインボイス制度導入後は、仕入税額控除の対象となるのは、適格請求書発行事業者が発行した「適格請求書(インボイス)」に記載された消費税額に限定されます。
また、この適格請求書(インボイス)が発行できるのは、基準期間の課税売上高に関係なく、消費税の課税事業者のみとなっております。
免税事業者からの課税仕入については、仕入税額控除が使えないことになります。
なお、仕入税額控除には経過措置もありますが、商品の買い手(仕入側)にとっては、
- 仕入先が消費税の課税事業者(適格請求書発行事業者)なのか?
- 免税事業者なのか?
によって、納付する消費税額が変わってきます。
フリーランスや小規模事業者の場合、消費税の免税事業者であるケースもあるでしょう。
消費税の課税事業者(適格請求書発行事業者)を選択することで、消費税の申告と納付が発生します。
しかし、今年の10月以降も免税事業者のままの選択をすることで、消費税の申告や納付の義務はありませんが、取引先から除外されてしまう可能性もゼロではありません。
そこで、現在消費税の免税事業者であるフリーランスや小規模事業者が知っておきたいインボイス制度の特例があります。
小規模事業者に対する納税額に関わる負担軽減措置(2割特例)
この制度は、令和5年度税制改正大綱により公表されたものです。
これまで免税事業者だった人がインボイス発行事業者になった場合、消費税の納税額を売上に対する消費税額の2割に軽減できます。
インボイス制度開始前から、課税事業者を選択している小規模事業者は対象外となっています。
対象事業者などは下記でご確認ください。
小規模事業者に対する納税額に関わる負担軽減措置(2割特例)
対象事業者
・ 免税事業者が適格請求書発行(インボイス発行)事業者に登録した場合
(インボイス発行事業者の登録をしなければ課税事業者にならなかった者)
・ 基準期間(前々年、前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下である者
※2年前の課税売上高が1,000万を超える課税期間(年)がある場合、その課税期間は適用対象外。
対象期間
2023年10月1日~2026年9月30日を含む課税期間
(個人事業者は2023年10月~12月の申告から2026年分の申告まで対象)
届出
事前届出は不要。申告時に選択して消費税の確定申告書にその旨を付記する。
具体的にどのように納付する消費税額が軽減されるのか?
<例>
売上高 700万円 (消費税額 70万円)
仕入 200万円 (消費税額 20万円)
※サービス業
小規模事業者の消費税の納税額
- 実額計算の場合 70万円-20万円=50万円(消費税の納税額)
- 簡易課税制度の場合 70万円-70万円✕50%=35万円(消費税の納税額)
サービス業のみなし仕入率:50%
・ 2割特例の場合 70万円✕20%=14万円(消費税の納税額)
ただし、注意点がございます。
卸売業(第一種事業)はみなし仕入れ率が90%であるため、簡易課税制度を選択した方が有利です(事前届出必要)。
それ以外の事業区分では一般的に2割特例の選択の方が有利です。
また、この2割特例や消費税の簡易課税制度ともに、多額の設備投資を行った場合でも消費税の還付は行われませんので、多額の設備投資があり同時に消費税額を多額に納付する可能性がある場合は注意しておきましょう。(執筆者:CFP、FP技能士1級 岡田 佳久)
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