「4月から6月にいっぱい残業をすると、厚生年金保険料が増える」
という話を聞いたことがあるかもしれません。
これは、厚生年金保険料の決定の方法に関係があります。
今回は、4月から6月にいっぱい残業をすると厚生年金保険料が増えるケースについて詳しく解説していきます。
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厚生年金保険料の算出方法
会社員などの厚生年金保険の被保険者は、毎月の給与と賞与から天引きにより、厚生年金保険料を支払わなければなりません。
厚生年金保険料は、被保険者の標準報酬月額(毎月の給与時)と標準賞与額(賞与時)に保険料率(18.3%)を掛けて算出されます。
この算出された厚生年金保険料は、事業主と被保険者が折半して支払います。
標準報酬月額とは、厚生年金保険の被保険者の毎月の報酬を報酬月額の区分(等級)ごとに当てはめて設定されている金額のことです。
厚生年金保険の標準報酬月額は、1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています。
この標準報酬月額の算出の基となる報酬とは、基本給、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当などの労働の対償として支給されるものです。
また、標準賞与額とは、税引前の賞与総額から千円未満の端数を切り捨てた金額のことです。
標準報酬月額の決定のタイミング
このように、被保険者の毎月の給与から厚生年金保険料を天引きするには、被保険者ごとの標準報酬月額を決定する必要があります。
標準報酬月額決定のタイミングは、大きく分けて以下の3つになります。
1. 定時決定
事業主は毎年7月1日現在にて使用されるすべての被保険者の標準報酬月額を見直すために、前の3か月間(4月、5月、6月)の報酬額を基に標準報酬月額を決定します。
決定の方法は、4月、5月、6月(いずれも支払基礎日数17日以上)に受け取った報酬の総額を、その期間の総月数で除して得た額を報酬月額として、標準報酬月額に当てはめます。
この標準報酬月額の決定方法を定時決定といい、その年の9月から翌年8月までの1年間使用するのです。
定時決定手続き対象外の一部の被保険者を除き、ほとんどの被保険者が定時決定の対象者となります。
4月、5月、6月に受け取った報酬の総額が多くなり標準報酬月額が高くなれば、厚生年金保険料も上がります。
残業代も標準報酬月額を算出する報酬の中に含まれるため、4月、5月、6月に残業を多く行えば、厚生年金保険料が上がる可能性もあるのです。
2. 資格取得時決定
転職した方など、被保険者が資格取得した際の報酬に基づいて報酬月額を決定する方法です。
資格取得月からその年の8月(6月1日から12月31日までに資格取得した方は、翌年の8月)までの次回の定時決定まで使用します。
3. 随時改定
随時改定とは、昇給や降給などで固定的賃金に大きな変動があった場合に標準報酬月額を改定する方法です。
継続した3か月間に受け取った報酬総額を3で除して得た額が、従前の標準報酬月額の基になった報酬月額と比べて「著しく高低を生じた場合」に、定時決定を待たずに改定します。
4-6月の残業が厚生年金保険料のUPにつながる可能性あり
このように、4月、5月、6月に残業を多く行った場合、定時決定により厚生年金保険料が上がる可能性があります。
ただし、厚生年金保険料が上がるということは、将来受給する年金額も上がるということにもなります。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)
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