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子どもや孫の銀行口座開設 手間や面倒を軽減する「注意点とポイント」を銀行員が解説


「子どもの通帳を作ったのですが、転勤族なので遠くに引っ越した場合、解約するときとかに、大変にならないか不安です」

これは銀行で私の窓口にいらっしゃったお客様から聞いた言葉です。

子どもの通帳を作ったあとでいろいろ心配になるとは、銀行の中にいると気づかなかったので、一緒にいろいろなケースを考えながら説明し、安心されていました。

子どもや孫の口座を作るときに気を付けたい注意点を銀行員が解説します。

子どもや孫名義の口座

令和6年から【税制改正情報】相続税の贈与加算の対象期間が3年から7年に拡大へ

注意点1:口座の作り方

口座作成というスタートから気を付けてほしいポイントを3つ説明します。

(1) キャッシュカードは作りましょう

子どもの口座を作るとき、キャッシュカードも作ることをおすすめします。

銀行の窓口取引は

  • 予約が必要
  • 本人以外が店頭で入出金するときには身分を確認する書類が必要

など、手間が多いので、キャッシュカードがあるとATMが使えて便利です。

窓口取引同様に、口座の解約は本人でも確認書類が必要になるなど結構手間がかかります。

子ども名義の口座を親が解約するのは時間や手間がかかることも予想されますし、本人以外では手続きできない可能性もあります。

キャッシュカードを作っておけば、可能な限り出金できるので、無理に解約手続きまでする必要がなくなります。

遠くに転居してその銀行に本人も親も来店できない場合などに有効です。

子ども名義のキャッシュカード作成については、銀行により異なりますので確認してください。

休眠口座

口座に残高が残ったまま長期間放置していると、休眠預金になり社会福祉などに使われる可能性もあります。

解約のために交通費や書類を揃える実費を考え損しない金額であれば、キャッシュカードでできる限り出金し、端数を残したまま解約せずにそのまま置いておけば終わりにできます。

休眠口座になると、口座維持の手数料として年間1200円ほどひかれる可能性があるので、注意してください。

(2) 印鑑は家計メイン口座と一緒にするのがおススメ

子どもの口座を作るときには、新しく専用の印鑑を準備する人が多いです。

しっかりと分けて管理をできればいいのですが、解約時に「どの印鑑だったかわからない」「印鑑を失くしてしまった」など、困る原因になります。

銀行員としては、家計のメイン口座と一緒の銀行印をおすすめします。

メイン口座とは、給料振り込みや住宅ローン返済、クレジットの引き落としなど家計の中心的な口座のことです。

メイン口座の印鑑なら失くすことも、わからなくなることはありません。

私の長い銀行員生活で痛感している「印鑑は少なければ少ないほうが良い」という結論からくるもので、1番大事な印鑑と一緒にしておけば、子どもの口座印で困ったことは起こりにくいと考えます。

口座の持ち方もさまざまですので、自身にあった方法が1番良いのですが、10~20年後に印鑑が必要になる可能性は高いことを念頭に印鑑を選んでください。

紛失の場合の手順

銀行により多少は異なります。

三菱UFJ銀行では、

  1. 紛失受付センターへ電話
  2. 印鑑登録手続き(窓口)
  3. 「手続完了通知状」の郵送(10日~2週間)

という流れで新しい届け印の登録が完了します。

口座解約の際は、再度銀行へ行く必要があります。

参照:株式会社三菱UFJ銀行

署名について

新しく通帳を作るときには申込書に記入しますが、この時の住所氏名など自署した書類は「印鑑届、顧客台帳」などと呼ばれて、その後も長く本人自署を確認する基礎になります。

そのため、口座作成は本人自らが書類に記入することが大原則になっています。

これが子どもの口座の場合は、たとえば字が書けない年齢なら、親が記入して口座を作ることも可能です。

最近では子どもの口座を作るとき、可能であれば子ども本人が書類に記入する銀行も増えています。

年齢などは銀行により違いますが、私の勤務する銀行では「小学生以上は本人が自署」という決まりになっています。

子どもの口座を親が作ったケースでは、子どもが成人してもその口座を使い続ける場合には、子ども本人が自署して署名確認資料を更新することもあります。

子どもが大学進学や就職などで、子どものころ作った通帳をそのまま渡す場合には、銀行の手続きで「署名が違う」とならないように、事前に銀行に電話などで確認することをおすすめします。

(3) 通帳レスも選択肢

子どもの口座だからこそ、可能であれば通帳レスを検討してもよいと銀行員は思います。

通帳がないので子どもが失くす心配がありません。

入出金もカードやスマホで済ませるなら通牒である必然性は高くないでしょう。

子ども名義で作れるかは銀行により異なるので確認してください。

注意点2:金融機関の選び方

それぞれに一長一短があるので、自分にあったところ、ライフスタイル(転勤があるか?など)なども考えて選ぶべきですが、そのヒントにできるようなポイントを解説します。

メガバンク

全国展開しているので、引っ越ししてもあまり心配はありませんが、支店の統合などはメガバンクでもあることなので安心はできません。

引っ越しがなくても、近くの支店が閉鎖した場合は、「近いから」という理由で決めた意味がなくなってしまいます。

地銀、信金

地域密着型金融機関なので、日頃の取引では親身になって対応してもらえますし、それほど困ることもないでしょう。

ただし、地銀や信金も支店統合はありますし、自分が遠くに引っ越しした場合、支店がないため手続きが困難になる可能性もあります。

他の県や市町に引っ越しした場合には、地銀や信金は支店自体がないことが多いです。

解約やその他の手続きは、どうしても遠くまで出向かないといけない可能性があります。

ネット銀行

ネット銀行は店舗が存在せず、来店での手続きは不要なので、引っ越ししても影響は少ないと思います。

しかしネット銀行の場合も、子ども名義の口座を作れない銀行があるので、確認をしてください。

郵便局(ゆうちょ銀行)

郵便局は全国各地、小さな市町でも店舗があります。

通帳は1つの支店単位の縛りはなく、どこの郵便局(ゆうちょ銀行窓口がある局)で入出金や手続きができるので、サービスや手続きで困ることが少ないです。

振り込み入金の指定口座や口座引き落としなど、銀行や信金でできても、ゆうちょ銀行では取り扱いできないサービスや商品もありますので悩みどころではあります。

個人的には、子どもや孫の口座を作るという点で見るなら、全国どこでも使える郵便局がおすすめです。

通帳デザインを人に話すときは要注意

子どもや孫の口座を作るとき、アニメなどかわいいキャラクターの通帳がある金融機関を選ぶこともあるでしょう。

ただし、これにはひとつ注意が必要です。

アニメや有名なキャラクターなどは著作権もあり、取り扱う金融機関は限定されています。

良く知られたところではJAが国民的長寿アニメのキャラクターを使用していますし、メガバンクでは夢の国にいるネズミや、世界的に有名な猫の通帳があります。

パンから生まれた空飛ぶ正義の味方は、一部地域の信金に行けば通帳を作れます。

そして私の娘はプリンが犬になっているキャラクターが好きですが、この通帳は東海地方の地銀で取り扱っている、といった具合です。

娘の例でわかるように、通帳デザインから金融機関の種類や個別の銀行名も調べれば類推できます

もちろんこれだけでは特に心配ありませんが、「子どもは〇〇(キャラクター名)が大好きなので、キャラクター通帳にした」などは、あまり他人に話さないほうが良いと思います。

たとえば私が金融商品を勧誘したいとターゲットにしているお客様がいて、その会話の中で「〇〇のキャラクター通帳を作った」と聞けば、その人がどの金融機関と取引しているか?を推定できて、その後の勧誘にとって有益な情報になるからです。

取引銀行を知られるだけで即座に危ない、という訳ではありませんが、意図しない形でも個人情報を他人に知られるのは避けたほうが良いでしょう。

注意点3:「贈与」と「借名預金」

お年玉を貯めるなどで子どもの口座を作るならあまり心配することもありませんが、その金額が大きくなると「贈与」や「借名預金」に注意しなければいけません。

贈与とは言うまでもなく「プレゼント」のことで、その金額やシチュエーションによって「贈与税」という税金を課せられる場合もあります。

たとえ子ども名義の預貯金でも、それが税務署から贈与だと見なされると、贈与税が発生する恐れもあります。

贈与にならないように(贈与したと見なされないように)するには、いろいろと工夫があります。(工夫については後述)

子ども名義でお年玉を毎年貯めるくらいならまず問題はないでしょう。

なぜなら子ども一人のお年玉なら、年間に多くても10~20万円程度(筆者調べ)。

この金額なら、贈与や借名預金のことを心配する必要はないと考えます。

参照:国税庁「暮らしの税情報(財産をもらったとき)」(pdf)

金額が大きい場合は「借名預金」にも注意

子どもや孫名義の預金でも、一度にまとまった金額(例:子ども一人に一回で1,000万円など)で口座を作ると「借名預金(名義預金)」と見なされる可能性もあります。

借名預金(名義預金とも)とは、表面的にある人名義の預金になっているが、実際には別人のお金で、その別人は名義だけ借りて他人の口座と使っているものです。

口座を作るときの本人確認が厳格な現在とは違い、以前はこのように借名預金を作ることも可能でした。

借名預金は「財産を隠したい、税金を払いたくない」といった目的で作られるもので、「商売の売上をごまかすため、妻名義預金に売上の一部を入金して隠す」「相続税を払いたくないので、子どもや孫名義で定期預金にしてしまう」などがあります。

これらはいずれも隠ぺい、偽装であり、当然やってはいけない悪いことです。

借名預金を作っただけで罪に問われるわけではありませんが、上記したようなケースでは発覚したら脱税として、自分名義の預金だと判定され課税の対象になります。

そして、悪質と判断されれば追徴課税や、最悪は詐欺など罪を問われるかも知れません。

もちろん子ども名義の預金を親御さんが作るのは普通のことで、これは借名預金ではありません。

ただそのあとに悪意を持って財産隠しなどに子どもの口座を「悪用」すれば、借名預金と言われる可能性もあるので注意してください。

贈与や借名預金だと言われない工夫

意図的に贈与や借名預金をして財産を隠そうとするのは偽装・隠ぺいなのでやってはいけないのは言うまでもありません。

ここでは、そんな意図がないのに贈与や借名預金だ、と言われないよう注意すべきことを説明するものです。

実際に税金や借名預金について心配なことがあれば、税務署や税理士・弁護士と言った専門家、あるいは取引銀行にご自身で確認してください。

工夫1:子どもが自立後は印鑑や通帳は区別しておく

子どもが未成年で同居しているなら、親が通帳や印鑑を持っていても不自然ではありません。

ただし、子どもが親元を離れた時点(自宅外への進学や就職して自立するときなど)で通帳とカードを渡すのが普通です。

いっぽう子どもが自立したのにいつまでも通帳や印鑑が親の手元にあると、悪気はなくても疑われる原因になりかねません。

特に個人事業主の人は税務調査の対象になることもありますので、心配な場合は子どもの通帳の印鑑は別にするべきでしょう。

工夫2:暦年贈与も慎重に考えながら

暦年贈与とは、贈与税の非課税範囲である年間110万円以内の金額を定期的に子どもや孫に贈与することです。計画的に財産を分け与えていくことで、これは財産分与の正当なやり方です。

ただし、時期や金額が毎年同じなどあまりにパターン化させすぎると、贈与を計画的に分散したと見なされる恐れもあります。

「その年その年で、思い立ったときになんとなく適当に決めた額を子ども名義に貯金した」

といった雰囲気を醸し出したほうが良い場合もあります。

こちらも金額や頻度など、心配な場合は税務署や専門家に相談したほうが良いでしょう。

参照:国税庁「暮らしの税情報(財産をもらったとき)」(pdf)

変更は面倒、費用や手間がかかる可能性

全般に銀行ではあとからいろいろ変更するのは面倒です。

店舗が遠くなってしまった場合は、交通費も発生します。

1度で用件が終わらない場合は、その都度、交通費・時間・労力が消費されます。

子どもや孫や成人するまでは、数年の歳月があります。

「お年玉をもらい始めたから子ども(孫)名義通帳を作ろう」

と思ったときには、窓口取引には手間と時間がかかることを念頭において、銀行選びをしてください。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)

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