配偶者を看取った後の生活の補填となるものの1つに、遺族年金があります。
遺族年金は夫が受給する場合と妻が受給する場合で要件が異なりますが、女性の社会進出が増えており、働きながら遺族年金を受給するというケースも想定されます。
今回は、働く妻が遺族年金を受給するケースにフォーカスして解説します。
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性別による遺族年金の相違点
まずは、遺族年金の概要を整理しましょう。
まず遺族年金には、
- 国民年金から支給される遺族基礎年金と
- 厚生年金から支給される遺族厚生年金
があります。
遺族基礎年金については原則として、18歳に年度末に達する前の子供がいることが要件となりますので、高齢出産であった場合を除き、ある程度年齢を重ねてから対象となるケースは少なくなります。
他方、遺族厚生年金は遺族基礎年金と異なり、子供の年齢要件はありません。
次に男性と女性の相違点として、遺族基礎年金は性別による差はありませんが、遺族厚生年金の場合、男性は55歳以上という要件があり、かつ、実際の受給は60歳到達以後となります。
他方、女性が遺族厚生年金を受給する場合、男性のように60歳到達以後という要件はありません。
収入要件
遺族年金には収入要件があります。
厳密には生計維持要件とされ、前年の収入が850万円未満であることとされています。
また、前年の収入が確定していない場合は、前々年の数字を用いて判断されます。
そこで、タイミングによっては定年退職に伴い退職金をもらうという場合は、どのように考えられるのでしょう。
たまたま定年退職の時期と夫の死亡により遺族年金の収入要件判定時期が重なる、という場合もあり得ます。
その場合、
とされています。
すなわち、前年または前々年の所得が退職金の受給により850万円を大幅に上回ったとしても受給対象になり得ます。
あるいは、管理職のために、前年または前々年の所得が給与のみで850万円以上であったとしても、5年以内に年額850万円未満になること認められる場合は生計維持関係ありと判断されることがあります。
これは、就業規則等により定年退職の年月日が明らかになっている場合等、これまでの雇用慣行上、給与が減額されることがあればそれを証明できる書類(就業規則等)を提出し、認定を受けられる場合があります。
また、生計同一要件は、原則として住民票上同一世帯に属していることとされていますが、住民票上の住所が異なっていても、単身赴任等の事情であれば要件を満たすと判断されます。
在職老齢年金
2022年4月1日以降、一定以上の給与を得てしまうと年金がカットされるいわゆる「年金カット」と呼ばれる在職老齢年金がありますが、遺族年金や障害年金は在職老齢年金の対象とはなりません。
あくまで老齢年金のみの話ですので混同しないようにしましょう。
遺族厚生年金の受け取れる順位
遺族厚生年金を受け取れる第1順位は、配偶者と子です。
子については、
- 18歳に達する日以後の最初の年度末までにあるか、
- 20歳未満で障害等級1級または2級に該当しており、かつ、婚姻していないこと
という要件があります。
すなわち、ある程度子供も巣立った年齢となれば、年齢要件の時点で妻のみが対象となります。
扶養に入る場合は各種の年収要件をチェックしよう
遺族年金は老齢年金と異なり非課税となりますが、退職後に子供の扶養に入るという場合は扶養の年収要件にはカウントされます。
60歳以上の場合、被扶養者の年収要件は130万円ではなく180万円未満となりますが、65歳以降は自身の老齢年金も受給開始となることから、遺族厚生年金は一部減額となる場合があるものの、健康保険上の扶養は定期的に年収要件のチェックがありますので、自身でもどれくらいの収入が見込まれるのかは気にしておくべきポイントの1つです。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)