日本には約930万人の障害者がいると推計されており、これは人口の約7.4%に相当する数です。
その場合、生活の一助になる社会保険制度の一つとして、障害年金が挙げられます。
障害年金を受給するためには初診日を明らかにする必要がありますが、思い出せない場合や、病院が既に閉院しているケース、あるいは、保険料を納めていなかったケースなど、他にも諦める要素となることがあります。
今回は、そのような場合でもチェックしておきたいポイントを解説していきます。
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20歳未満の初診日はないか?
障害年金を受給するには保険料をおさめていなければなりません。
これは社会「保険」制度である以上至極当然の話ではありますが、特に年齢的に若い時代には年金の保険料についてあまり深く考えていないということも少なくありません。
一定期間以上保険料を納めていなければ障害年金を受けられる程度の障害等級であっても障害年金を受け取ることはできません。
しかし、初診日が20歳未満であれば、そもそも年金制度に加入できませんので、保険料納付要件が問われません。
そこで、20歳未満で初診日はないかを一度確認してみることが有用です。
その日は本当に初診日なのか?
障害年金を受給するには初診日がいつなのかを確認する必要がります。
これは制度を確定させる意味でも必要です。
制度を確定させるとは、初診日が国民年金に加入中であれば障害基礎年金となり、厚生年金加入中であれば、障害厚生年金となります。
例えば様々な病気に罹患していた場合、自分自身で初診日と思っていた日が障害年金上の初診日ではないというケースがあります。
そうなると保険料を納めることができていなかった場合でも、初診日が変わることによって対象となる可能性があります。
社会的治癒とは
原則として初診日は変わりません。
しかし、「社会的治癒」が認められることで初診日が変わることがあります。
この社会的治癒とは医学的には治癒していなくても社会生活を営むことについては問題がなくなり、その期間が一定以上続いていることが客観的に認められれば一旦は治癒したものとみなし、以前と同じ疾患が再発しても新たな疾病を発病したとみなすという考え方です。
そうなると、再発した際に受診をすると「新たな初診日」として初診日が変わることになります。
そこで、保険料納付要件が一定以上となれば障害年金の受給可能性が出てくるということです。
社会的治癒について明確な基準はありませんが、症状が消失し、特段療養の必要がないこと、長期的に自覚症状等がないこと、通常の社会生活が長期間にわたって継続できていること等が挙げられます。
また、社会的治癒は救済的な意味合いで設けられた概念ではありますが、社会的治癒を主張して認められた場合に限り適用されますので、自動的に適用されるものではありません。
初診日は何に影響する?
初診日に加入していた制度によって受けられる年金が変わります。
また、初診日に厚生年金に加入していた場合は国民年金から受けられる障害基礎年金(1級~2級まで)よりも障害等級が広く、1級~3級までとなります。
また、保険料納付要件を満たしていないと他の要件を満たしていても受給できませんが、初診日が変わることで保険料納付要件をクリアし、障害年金を受けられる可能性が出てくるということです。
最後に
初診日とは障害の原因となった病気や怪我について初めて医師または歯科医師の診察を受けた日です。
また、同じ病院ではなく、複数の病院に転院しながら受診していた場合は最初の病院が初診日となり、あくまで治療が目的で受診した日となりますので、健康診断を受けた日も原則は初診日になりません。
ただし、医学的に治療が必要と認められる検診結果である場合は例外的に初診日と認められる場合があります。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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