「相続税」という税金の名前は知っていても、実際に手続きしたことがある人はひと握りの方だけです。
申告経験がないと、誤った情報をそのまま覚えていることが多いですので、今回は誤解されやすい相続税の知識について解説します。
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1. 相続財産を取得しても、相続税の申告が不要になるケースもある
相続税は、亡くなった人の財産に対して課される税金です。
相続が発生した場合、相続人が申告をすべきか判断することになります。
相続税には基礎控除額が用意されており、基礎控除額よりも相続財産が少なければ「相続税の納税額はゼロ」となります。
相続税の申告をしなければいけないのは、相続税の納税額が発生する方であり、相続財産が基礎控除額以内に収まれる場合、申告手続きは原則不要です。
相続税の基礎控除額の計算式
たとえば相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円、3人なら基礎控除額は4,800万円です。
基礎控除額は亡くなった人の財産に対しての控除なので、相続財産の総額が基礎控除額以内なら、1人の相続人が全財産を相続しても相続税を支払う必要はありません。
2. 特例制度を適用するためには申告手続きが必須
相続税には、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの制度が用意されており、適用することで相続税を大幅に減額することが可能です。
しかし特例制度は適用要件があり、申告書に特例を適用する旨を記載することではじめて特例を適用したことになります。
そのため特例を適用するためには、相続税の納税額がゼロになる場合でも、申告書を作成し提出しなければなりません。
3. 申告義務がなくても申告書を提出することは可能
相続税は取得した財産に応じて各相続人が支払うことになりますが、相続財産を取得していない相続人は納税額がゼロであるため、申告しなくても問題ありません。
ただ申告期限を過ぎた後に取得する財産が増えた場合、期限内に申告書を提出していたかどうかで、課される加算税の種類が異なります。
・ 期限内に申告書を提出していた場合には「過少申告加算税」
・ 期限後にはじめて申告書を提出した場合には「無申告加算税」
の対象です。
過少申告加算税は本税の10%ですが、無申告加算税は15%と、期限内に申告書を提出していないと課されるペナルティが重くなります。
(加算税は税務調査の有無などにより、適用される税率が変わります。)
そのため相続財産が基礎控除額ギリギリの場合には、相続税が発生していなくても申告書を提出する選択肢もあります。
4. 物納制度は基本的に利用することはできない
相続税を支払う方法の1つに、物納制度が存在します。
相続税は原則現金で支払うことになりますが、物納は現金ではなく、不動産などの財産で税金を支払う方法です。
しかし物納制度を利用できるのは、現金での納付が困難と判断された場合に限られ、現金での支払いが可能であると判断されれば、物納制度は利用できません。
また物納に使用する財産は、不動産など現金化しやすいものに限られ、使い勝手の悪い財産を物納に当てることはできないです。
物納は申請手続きが複雑ですので、制度を利用したい場合には、事前に税理士や税務署へご相談ください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)
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