認知症には、初期症状に妄想という症状が存在します。
その妄想の中には「物盗られ妄想」と言って、誰かにお金を盗られた!と思い込む妄想があります。
この「物盗られ妄想」は、認知症の方が「お金を盗った」と言って、家族や近しい人たちとトラブルを起こしたり、ひどい場合は警察沙汰のトラブルになることがあり、多くの方たちが頭を悩ませている症状です。
今回は、家族様を支える介護サービスと合わせて、対処法をご紹介します。
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物盗られ妄想の対処法は「話を聞く」
家族ができることは、早めの病院受診と本人の話を聞くことです。
否定も肯定もせず、話を聞く
「お金を盗られた」と言われると、気分がいいものではありません。
しかし、よく話を聞くと、言っていることが何かおかしいと気づきます。
病院に連れて行って、初めて認知症に気づくケースもあります。
認知症以外にも、うつ病やパーキンソン病と言った違う病気も隠されている事があります。
話をよく聞いて何かおかしいと感じたら、早めに、病院受診しましょう。
物盗られ妄想の治療は、薬物療法が一般的です。
主に、精神安定剤が処方されます。薬が合うと、症状が改善されます。
財布をしまった場所や経過を確認しながら話を聞く
「お金を盗った」と疑いをかけられると、間違いを諭したり説得しようとしますが、これは逆効果になり、余計に物盗られ妄想を悪化させます。
話を聞き、確認しながら、聞いていくと思い違いだったかな? と気づく場合もあります。
ないと分かっていても、探せる場合は一緒に探す
人は自分の話を聞いてくれる人に、信頼感を持ちます。
一緒に探すことで、自分を信じてくれた! という信頼感と安心感が生まれます。
まず、否定せずに、本人と探し物の場所や経過を聞きながら一緒に探してあげることで「私の勘違いだったかな?」と思い直すことがあります。
話を聞いてもらえると安心感が生まれます。
物盗られ妄想は、この安心感が不安のタネを大きくさせない秘訣です。
物盗られ妄想の原因を知ろう
物盗られ妄想は、認知症による記憶障害から、自分の財布や通帳をしまった場所を忘れてしまいます。
«画像元:学研cocofump»
物盗られ妄想の恐ろしい所は、自分の財布や通帳をどこに置いたかは思い出せませんが、財布や通帳がないということだけは分かっているという点です。
頭の中は、見当たらない財布や通帳の事で頭がいっぱいになり、見つからない不安感から誰かに盗られたと思い込む事で、本人は、心の不安から逃れられます。
物盗られ妄想は、認知症の方の不安な心を守る防衛反応です。
「お金を盗った!」という事で心を守っています。
しかし、その訴えが家族関係の悪化や対人関係のトラブルに発展する原因です。
そのため、話を聞いて早めの病院受診で「物盗られ妄想」と気付き、治療することが重要になってくるといえるのです。
介護サービスの活用で家族の負担を軽減!
家族が遠方に住んでいて頻繁に様子を見に来られない時は、訪問介護を使うと便利です。
ヘルパーの内服確認
薬がきちんと飲めているか心配な時は、訪問介護で薬の内服確認だけのサービスもあります。
毎日の様子をノートに記録してくれるので、離れている間の様子も分かります。
内服確認だけであれば、身体介護20分未満のサービスで、1回の自己負担額は167円です。
1日2回×167円=334円 334円×31=1万354円になります。(介護保険~基本としくみ、制度の今とこれから~本間清文編著)
参照:Amazon
お住いの地域で定期巡回というサービスがあれば、ホームヘルパーに、1日何回来てもらっても、値段は同じです。
薬の内服確認だけであれば、短い時間なのでその分料金は安いですし、定期巡回であれば介護度が低い場合、安い料金で利用できます。
«画像元:厚生労働省»
ヘルパーの通院介助
通院介助のサービスもあります。
ヘルパーが通院介助をお手伝いします。
薬のために病院の受診が必要だけれど、都合がつかず難しい場合は、ヘルパーに付き添ってもらう事も可能です。
通院介助の料金に関する注意点
車での乗り降りの移乗、道中の歩行介助、車いす介助は身体介護として計算されますが、ヘルパーの交通費の負担、病院内の介助は介護保険外になり、自費で請求される可能性があります。
利用の際には、ケアマネージャーと訪問介護の事業所の確認が必要です。
ショートステイの利用
また、家族が同居で物盗られ妄想に疲れた場合は、ショートステイを使って一時的に距離をとるのもおすすめです。
ショートステイは泊まりのサービスです。
数日でも距離を置くことでお互いの心がリセットされる事もあるので、介護を続けるためにはとても有効な介護サービスであるといえます。
ショートステイは、要支援1.2要介護1~5の方と幅広く利用できます。
1日2,500円~6,000円で利用できます。
利用はケアマネージャーを通して行いますので、利用したい日・曜日があれば、早めに伝えておきましょう。
«引用元:LIFUL介護»
介護サービスを使って家族の心も守っていきましょう
認知症の初期症状である物盗られ妄想は、ネットなどを見ると家族や介護職員の悩みのタネになっており、たくさんトラブルの事例が載っています。
家族は、病気として向き合ったとしても、やはり疑いの目や罵倒を浴びせられると、家族の心は病んでしまいます。
多くの家族の方が認知症による物取られ妄想に悩んでいます。
物取られ妄想は一時の時期が過ぎればおさまる症状ですので、その間だけでも、家族の関係、心の安定を良好に保つために、介護サービスを使って家族の心も守っていくことが大切です。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)