2022年4月からは民法の改正により、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたのです。
日本で成人年齢が変わるのは、約140年ぶりになるそうなので、歴史的な転換点になると思います。
また今後は親の同意がなくても、次のような行為を18歳から、一人で出来るようになります。
これにより新成人が詐欺などの、ターゲットになる可能性が高まってきたので、金融リテラシー(お金に関する知識や判断力)を高めるための教育が、不可欠になってくるのです。
18歳の新成人だけでなく、例えば60歳以上で定年退職を迎えた後に再雇用された会社員も、金融リテラシーを高めた方が良いと思います。
その理由としては退職金という、まとまった資金を持っている場合が多いため、金融機関のターゲットになりやすいからです。
また退職金を上手く運用したり、節約によって無駄な支出を減らしたりすれば、老後資金が枯渇するのを先延ばしできるからです。
このように18歳の新成人と60歳以上の会社員は、似ている点があるのですが、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の加入については、次のような違いがあるのです。
2022年度から始まる「年金の新制度」は、組み合わせて利用した方が良い
国民年金は60歳以降に任意加入できる制度がある
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方は、厚生年金保険に加入している方などを除き、国民年金に加入する必要があります。
成人年齢が18歳になるタイミングで、この20歳以上が18歳以上に引き下げられるのかに、注目が集まっていたのですが、特に改正はなかったようです。
いずれは18歳以上に引き下げられるかもしれませんが、例えば大学生だと申請すれば、学生納付特例という学生の間は保険料の納付を猶予される制度を、利用できる場合が多いのです。
そのため18歳から国民年金に加入するようになっても、実際に保険料を納付する方は、あまり増えないと思います。
一方で60歳以上の会社員は、60歳未満という要件を満たしていないため、もう国民年金に加入する必要はありません。
ただ次のような要件に当てはまる方は、厚生年金保険に加入している方などを除き、65歳になるまで国民年金に任意加入できるのです。
・ 公的年金の保険料を納付した期間や、免除を受けた期間などの合計が、原則10年に達していないため、65歳から老齢基礎年金を受給できない方(任意加入によって年金を受給できるようになる)
・ 20歳以上60歳未満の間に、国民年金の保険料の未納期間や、免除を受けた期間などがあるため、満額の老齢基礎年金を受給できない方(任意加入によって満額を受給できるようになる)
このように60歳以上の会社員は、国民年金に任意加入できる制度があるのですが、20歳未満を対象にした任意加入の制度はないため、18歳の新成人は国民年金に加入できません。
ただ20歳になる前に、初診日(障害の原因になった傷病で、初めて診療を受けた日)がある傷病であっても、20歳に達した時に所定の障害状態にあれば、国民年金から支給される障害基礎年金を、20歳から受給できます。
そのため20歳未満は国民年金に任意加入できませんが、国民年金の保障をまったく受けられないわけではないのです。
厚生年金保険の加入に関する旧基準と新基準
厚生年金保険に加入する年齢の上限は70歳になるため、所定の基準に該当する場合には、この年齢まで加入する必要があります。
しかし厚生年金保険に加入する年齢に下限はないため、所定の加入基準に該当する場合には、20歳になる前の新成人も、厚生年金保険に加入しなければなりません。
また正社員として採用されると、厚生年金保険に加入する場合が多いのですが、パートやアルバイトなどの短時間労働者の場合、次のような旧基準か新基準の、いずれかに該当すると厚生年金保険に加入するのです。
(A) 昔から存続している「旧基準」
1週間の所定労働時間(雇用契約書などに定められた労働時間)および、1か月の所定労働日数(雇用契約書などに定められた労働日数)が、正社員の4分の3以上あると、厚生年金保険に加入します。
(B) 2016年10月から開始された「新基準」
2016年10月からは新基準が開始されたため、次のような要件をすべて満たした場合にも、厚生年金保険に加入するのです。
・ 1週間の所定労働時間(残業時間などは除く)が、20時間以上あること
・ 雇用期間の見込みが、1年以上(2022月10月以降は2か月超)あること
・ 1か月あたりの決まった賃金が、8万8,000円(年収に換算すると約106万円)以上あること
・ 学生ではないこと(通信制、夜間、定時制の学生や休学中の学生などは、他の要件を満たすと厚生年金保険に加入する)
・ 従業員数が501人(2022月10月以降は101人、2024月10月以降は51人)以上の企業、または労使の合意がある、従業員数が500人以下の企業で働いていること
このように新基準では、1週間の所定労働時間が20時間以上あると、厚生年金保険に加入する可能性が高くなります。
一方で旧基準おいては、正社員の1週間の所定労働時間が40時間の場合、その4分の3である30時間が、厚生年金保険に加入する目安になります。
18歳の新成人と60歳以上の会社員が公的年金に加入するケース
18歳の新成人と60歳以上の会社員が、公的年金に加入するケースを整理してみると、次のような3つになります。
【18歳の新成人が加入するケース】
・厚生年金保険に加入する旧基準に該当した時(ただし学生ではない場合には、新基準に該当した時にも加入する)
【60歳以上の会社員が加入するケース】
・国民年金に任意加入する時
・厚生年金保険に加入する旧基準か新基準の、いずれかに該当した時(ただし企業規模によっては、旧基準に該当した時だけ加入する)
以上のようになりますが、新基準には「学生ではないこと」という要件があるため、18歳の新成人は旧基準に該当しなければ、厚生年金保険に加入しない場合が多いと思います。
一方で新基準には企業規模の要件があるため、小規模の企業で働いている60歳以上の会社員は、旧基準に該当した時だけ、厚生年金保険に加入します。
ただ新基準は今の形になるまでに、何回か法改正が実施されているため、いずれは学生や小規模の企業で働いている方も、厚生年金保険に加入するかもしれません。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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