所得税の確定申告書の提出件数は2,200万件前後と、6人に1人は申告書を提出している計算です。
普段の年は申告する必要がない方でも、諸事情により今年だけは申告をしなければいけないケースもあります。
税務署に対して「申告が必要だとは知らなかった」は通用しませんので、会社員・公務員の方でも確定申告をすべきケースをご紹介します。
確定申告をしていなくても税務署から電話がかかってくる可能性あり 3つのケースを紹介
会社等で年末調整が行えなかった
会社員・公務員の方が所得税の確定申告が不要なのは、職場で年末調整を行っているからです。
年末調整では、扶養控除や生命保険料控除などの計算を行うことで、所得税の過不足を精算しますので、年末調整済であれば原則確定申告をする必要はありません。
ただし、会社の年末調整に間に合わなかった場合や、複数の会社から収入を得ている方は確定申告でないと所得税の過不足を清算できませんので、申告手続きが必要となります。
20万円を超える副業収入がある
本業以外の収入が発生しても、年末調整が完了している会社員・公務員であれば、他の所得が20万円以下なら申告不要です。
たとえば競馬の馬券が的中した場合、一時所得の対象となりますが、一時所得は50万円の特別控除があるため、的中金額が50万円以下なら一時所得はゼロとなります。
一方で、仮想通貨取引で数百万円の利益を得た人や、フリマアプリ等を利用して副業を行っている人など、給与所得以外の所得が20万円を超える場合には確定申告手続きを行う必要があります。
また他の所得が20万円以下であっても、住宅ローン控除などの適用のために確定申告書を提出する場合には、20万円以下の所得についても申告書に記載しなければいけません。
満期の生命保険金を受け取った
会社員・公務員の方で申告漏れとなりやすいのが、満期の生命保険金です。
満期生命保険金は、受け取った生命保険金から掛け金を差し引いた金額が一時所得の対象となります。
【一時所得の計算式】
総収入金額-経費-特別控除額(最高50万円)=一時所得の金額
※所得の対象となるのは、算出した一時所得の金額の2分の1
満期生命保険金よりも掛け金の方が大きい場合や、所得金額が20万円以下となる場合には申告不要です。
しかし長期的に積み立ててきた生命保険金などは、数十万円、数百万円の所得金額が発生することもありますので、その際は忘れずに申告手続きを行ってください。
相続不動産・株式を売却した
不動産や株式を売却した金額は譲渡所得の対象となり、利益に対して譲渡所得税が課されます。
譲渡所得は売却金額から購入金額の差額を利益として計算するため、購入金額の方が高い場合には赤字なので譲渡所得税を支払う必要はありません。
不動産等を相続により取得した際は、前所有者の購入金額を引き継ぐことになりますが、先祖代々受け継いできた土地の場合、購入金額がわからないケースもありますので、計算上の利益が発生する可能性が高いです。
また相続した株式を一般口座で管理していた場合、株式の損益計算は自身で行う必要があり、利益が発生していれば確定申告で株式の譲渡所得税を支払うことになります。(特定口座でも源泉徴収を選択していない場合には、申告が必要になることもあります。)
配偶者控除・扶養控除対象者は要注意
配偶者控除や扶養控除は、対象者の所得金額が48万円以下であることが要件です。
配偶者控除・扶養控除の判定は毎年行いますので、配偶者等が相続不動産を売却した場合や、満期生命保険金を受け取ったことで、配偶者控除を適用できなくなるケースがあります。
年末調整を行った時点では控除対象要件を満たしていても、突発的な収入などが発生したことで基準となる所得を超えた場合には扶養控除等を適用できません。
扶養控除等を適用しない内容の確定申告書を作成して申告手続きを行ってください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)