自営業などの国民年金の第1号被保険者の夫が亡くなってしまった場合、「遺族厚生年金」や「中高齢寡婦加算」などの遺族に対する厚生年金の給付を受給できない妻がほとんどです。
また、国民年金の給付には、「遺族基礎年金」がありますが、18歳になった年度の3月31日までの間にある子、若しくはこ20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級である子がいなければ受給できません。
さらに、遺族基礎年金が受給できる対象の子がいるとしても、18歳の年度末を迎えるなど対象からはずれた場合は、遺族基礎年金の受給は打ち切られます。
このように、遺族年金が受給できない高齢寡婦に対する所得の補償や、第1号被保険者の夫が納付した保険料が掛け捨てにならないための国民年金の給付として、「寡婦年金」と「死亡一時金」があります。
今回は、この「寡婦年金」と「死亡一時金」について詳しく解説していきます。
1. 寡婦年金とは?
寡婦年金とは、第1号被保険者での保険料納付済期間と保険料免除期間が合算して10年以上ある夫が死亡した場合に、以下の要件を満たした妻が60歳から65歳までの間受給できる年金です。
・ 夫が死亡した当時に生計を維持されていたこと
・ 夫と10年以上継続して婚姻関係にあったこと(事実上の婚姻関係を含む)
(1) 寡婦年金が支給されないケース
以下の場合は、寡婦年金を受給することはできません。
・ 亡くなった老齢基礎年金や障害基礎年金を受給したことがあること
・ 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受給している場合
(2) 寡婦年金の受給額
・ 夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3の額
2. 死亡一時金とは?
死亡一時金とは、第1号被保険者としての国民年金保険料を納付していた月数が36か月以上ある方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受給する前に亡くなってしまった場合に、一定の遺族が受給できる一時金です。
一定の遺族とは、亡くなった方と生計を同一にしていた
の優先順位の高い方から受給することができます。
(1) 死亡一時金の受給額
保険料を納めた月数に応じて12万円~32万円です。
付加保険料を納めた月数が36か月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
3. 寡婦年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たしていた場合
寡婦年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たしていても、どちらか片方しか受給することはできません。
そのため、どちらを受給する方が受給金額が大きいかを判断して、有利な方を受給することになります。
時効には注意
寡婦年金の請求は、夫ほ死亡日の翌日から5年を経過した場合は時効によって消滅します。
死亡一時金を受ける権利は、死亡日の翌日から2年経過した場合は時効によって消滅します。
時効を過ぎてしまった場合は受給することができませんので、注意が必要です。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)
遺族厚生年金を受給している人が、自分の老齢厚生年金を受給できるようになった場合