学資保険とは、将来の子供の教育資金確保を目的とした貯蓄型保険のこと。
かつては教育費を準備する方法の定番であり、子供が生まれたら多くの家庭が加入するものという位置づけでした。
しかし近頃は、学資保険は必要ないと考える人や、他の方法で運用をして教育資金を積み立てる人も多くなってきています。
そのため、
と悩む家庭も少なくないでしょう。
そこで、今回は学資保険の必要性について元銀行員の筆者が考えてみました。
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子供一人にかかる教育資金の平均総額は1,000~2,000万円以上
まず学資保険の必要性について考える前に、子供一人あたりにかかってくる教育資金の平均総額がいくらくらいなのかを知っていますか。
文部科学省の「子供の学費調査」によると、幼稚園~大学まですべて公立に通った場合約1,000万円、すべて私立だった場合で約2,000万円以上の費用がかかると算出されています。
公立なのか私立なのか、また大学も短大なのか4年制なのかなどによっても教育資金に差が出てきます。
将来子供の希望する進路を応援してあげるためにも、親としてできるだけいくつかの選択肢を用意しておいてあげたいもの。
そのため、子供が生まれたのならなるべく早いうちから計画的に教育資金は貯めておく必要性があるでしょう。
学資保険に加入するメリットってあるの?
学資保険を検討するにあたって、加入すると具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
【メリット1】契約者に万が一の際があった場合にも保証がある
学資保険に加入する大きなメリットとして、契約者に万が一のことがあった際にも保証があることが挙げられるでしょう。
契約者が死亡もしくは高度障害を負った場合でも特約を付けていれば、保険料の払い込みが免除されます。
もちろん、その際も契約内容に変更はなく、祝い金や満期時の保険金は受け取ることが可能です。
一家の大黒柱でもある父親が突如働けない状況に陥ってしまうと、家計が苦しくなってしまったり、子供の進路にも大きな影響を与えたりするケースも少なくありません。
その不安要素がカバーできる点は、学資保険ならではの魅力と言えるでしょう。
【メリット2】貯金が苦手な人でも半強制的に蓄えられる
学資保険の保険料は、自動的に口座から引き落とされていくのが一般的です。
そして、その資金は満期になったタイミングで受け取るか、どうしても必要な際は元本割れ覚悟で途中解約する方法でしか手元に戻ってきません。
そのため、自動的にお金が積み上がっていき、半強制的に教育資金が蓄えられえる学資保険は、お金があるとつい使ってしまう、貯金があまり得意でないという世帯にとってはメリットのある商品と言えます。
また、子供のための費用だと一目でわかる「学資保険」という名のおかげで、子供の将来のためのお金だからと多少無理をしてでも解約せずに続けたい、使うわけにはいかないといった心理的な面での手助けやストッパー的存在となることも期待できるでしょう。
【メリット3】普通預金よりも高利率
長引くゼロ金利政策により、現在の普通預金の金利は0.001%ほど。
まとまった資金を預けていても、ほとんど利子はつかない状態にあります。
しかし、学資保険の場合は商品や契約内容にもよるもののなかには返礼率は105%前後となるものも少なくありません。
さらに、確実に必要なタイミングでいくら戻って来るのかはっきりしているという安定性も魅力です。
そのため、安全性が高く普通預金よりも有利という点は学資保険のメリットの一つと言えるでしょう。
さらに、生命保険料控除が受けられる点も学資保険ならでは。
年間の保険料が8万円でかつ所得税・住民税が10%の場合では、税金が1年あたり6,800円(所得税4,000円、住民税2,800円)安くなります。
ただし、既に終身保険等で控除枠を使ってしまっている場合は、追加で控除を受けることはできない点には注意が必要です。
学資保険にデメリットはある?
では近年、学資保険は必要ないと考える人が多くなってきたのはなぜでしょうか。
学資保険のデメリットについても確認していきましょう。
【デメリット1】返礼率が低い
学資保険に加入するデメリットの一つとして、まずは返礼率が低いことが挙げられるでしょう。
返礼率とは、支払った保険料に対して、トータルで将来お金がいくら戻って来るかを示す数値ですが、近年の学資保険はマイナス金利の影響を受け、かつての返礼率と比べるとかなり低くなっています。
商品や契約内容などにもよりますが、元本割れしないものでも100~105%程度。
なかには、保証が手厚い分返礼率が100%を割る商品もあるほどです。
過去には返礼率が120~130%という時代もあったため、学資保険は高い人気を誇っていましたが、その時代と比較すると貯蓄性という点での魅力は薄まっていると言えるでしょう。
【デメリット2】途中解約した際の元本割れリスク
学資保険は基本的に満期まで解約せずに持ち続けることが望ましい商品ですが、どうしても資金が必要となった場合は、途中解約することで返戻金を受け取れるようになっています。
しかし、一般的に解約返戻金はすでに払い込んでいる保険料の総額よりも少ない場合がほとんどで、多くの場合元本割れしてしまうことになります。
学資保険は最低でも10年以上の長期にわたって保険料を支払わなければなりませんが、その間に予期せぬ事態に見舞われ大きな支出が必要となる可能性も否めません。
預貯金のように簡単に引き出せず、長期で固定されてしまう点を不安に感じる人も多いでしょう。
【デメリット3】インフレ状況に弱い
インフレとは、物やサービスの値段が上がり、お金の価値が下がることを言います。
例えば、インフレが10%進んだ場合では、それまで100円で購入できていた商品は110円支払わないと買えないこととなります。
つまり、100円の価値が目減りしてしまい、かつての100円の価値がなくなってしまうというわけです。
しかし、学資保険は契約時の利率が満期時まで固定されてしまいます。
そのため、今後インフレが進行し物価が上昇してしまうと、満期を迎えて将来受け取れるお金が目減りしてしまい、学資金が足りなくなるという可能性も否めないのです。
最低でも10年以上固定されてしまううえ、インフレや金利上昇は簡単に予測できないものであるがゆえにリスク視する声も少なくありません。
【デメリット4】保険会社が倒産した場合のリスク
もしも銀行が破綻した場合、銀行に預けている預金は「預金保険制度」によって、元金1,000万円とその利息分までは全額保証されています。
学資保険も同じように制度があり、「生命保険契約者保護機構」という制度によって一定の保護が受けられるようになっています。
しかし、この生命保険契約者保護機構は、全額保証するものではなく、保護されるのは責任準備金の90%のみ。
万が一の際に全額保証されない点もデメリットと言えるでしょう。
学資保険が必要or不要なのはこんな人
前述した学資保険のメリット・デメリットを踏まえて、学資保険が必要な人とそうでない人の特徴についてまとめてみました。
学資保険が必要なのはこんな人
・ コツコツと貯蓄をするのが苦手な人
・ 万が一の際の死亡保障額が少ない人
・ 運用の知識はさっぱりで分からないという人
・ 安定志向で運用リスクをできるだけ取りたくない人
学資保険は加入してしまえば、あとは月々の保険料が自動的に引き落とされていくだけです。
解約さえしなければ強制的に貯蓄できる仕組みのため、
「手元にお金があるとつかってしまう」
「コツコツと自分で貯蓄する自身がない」
という人には打ってつけの商品です。
さらに、加入後に利率や解約金が変動するものではないため、リスクを取りたくないという安定志向の人にも向いているでしょう。
また、家計に他の保険商品に加入する余裕がない、年齢的な理由や過去に患った病気のせいで大きな死亡保障がつけられなかったなど、さまざまな理由で万が一の際の死亡保障額が少ない人もいるかもしれません。
そのようないざというときのために、保険機能も兼ね備えた学資保険に加入しておくというのも方法です。
学資保険が不要なのはこんな人
・ 既にまとまった学資金を準備できている人
・ 自分で積極的に資産運用ができる人
・ お金を増やしたいと考えている人
・ 強い意思で計画的にコツコツと貯金ができる人
・ 途中で保険料を払えなくなる可能性がある人
反対に、学資保険が不要な人の特徴は上記の通りです。
まずかつてのような高利率ではなくなった学資保険は、貯蓄性のメリットが薄れてしまっています。
さらに途中で解約できないという縛りもあるため、自身で計画的に貯蓄できる人やお金を増やしたいと考えている人は、あえて学資保険に加入しなくてもよいでしょう。
例えば返礼率105%の学資保険で毎月2万円×18年間積み立てた場合を仮定してみましょう。
このケースで満期時に手元に戻るのは約454万円です。
これでは、前述した一人当たりに必要となる教育資金の平均総額には大きく足りません。
児童手当をすべて貯めていた場合でも約200万円。
学資保険とこの児童手当を合算しても1,000万円には到達しません。
そのため、お金を増やして足りない部分をカバーしたいという人は、学資保険ではなく資産運用を検討するのも方法です。
また余裕があるのであれば、無理のない掛け金の範囲で学資保険に加入し、併せて他の運用方法を検討してみるのもよいでしょう。
学資保険以外に教育資金を準備する方法
学資保険以外にも教育資金を準備する方法はいくつかあります。
例えば、学資保険よりも利率の高い個人年金保険や終身保険を利用しているという人もいることでしょう。
しかし、これらの保険商品はタイミングによっては解約すると元本割れしてしまう場合も。
さらに現在は低金利のため、昔に比べると運用利率も低いものとなっています。
そのため、近年教育資金の準備方法として人気が高まってきているのが「つみたてNISA」です。
つみたてNISAのよい点を次にまとめてみました。
・ まとまった資金がなくても毎月少額から積立できる
・ 投資商品の買い付けは自分でしなくていいため、タイミングが分からない初心者にもよい
・ 信託報酬が低く販売手数料も0円で、低コストで運用できる
・ いつでも換金可能
・ 非課税枠は年間40万円、最長20年利用可能
つみたてNISAの対象商品は、金融庁が定めているリスクの少ない投資信託がメインです。
そのため、投資未経験の人でも預貯金の延長と考え取り組む人も多くなってきています。
もちろん投資商品なので元本が保証されているものではなくリスクはありますが、長期で保有すれば利息に利息がついてくる複利の効果が得られるので、時間がたつほどお金は増やしやすくなります。
そのため、「学資保険では利率が低い」、「学資保険だけでは教育資金として不安」という人は、つみたてNISAについて勉強をし、検討してみるのも方法です。
学資保険が必要か不要なのかは、各家庭の状況によって異なる
以前は子供が生まれたら学資保険に加入するというのが自然な考え方でした。
しかし、近頃はゼロ金利で商品の魅力や強みが変わってしまったことや新しい運用方法が出てきたことによって、教育資金の準備の仕方は多種多様になってきています。
まずはどのような方法があるのかや、それぞれのメリット・デメリットを知ることが大切です。
そして各家庭の状況やライフプランに合わせて適切な方法を選択する必要があるでしょう。
現在学資保険への加入を迷っている人は、ぜひ今回紹介した内容も参考にしてみてください。(執筆者:元銀行員 吉村 みき子)
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