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長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?5年以内の不動産売却は注意が必要


長期譲渡所得と短期譲渡所得は、不動産や株式などの資産を売却した際に課税される税金で、所有期間に応じて税率が異なります。長期譲渡所得は売却年の1月1日時点で所有期間が5年超の場合に適用され、税率は20.315%です。一方、短期譲渡所得は所有期間が5年以下の場合に適用され、税率は39.63%とかなり高くなります。この税負担を軽減するためには、可能であれば売却時期を調整して長期譲渡所得にすることが推奨されます。また、取得費用などの記録を正確に保存し、過大な課税を避けることも大切です。事前にこれらの知識を基にした売却戦略を立てることが重要ですので、必要に応じて専門家に相談することが望ましいとされています。

長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?5年以内の不動産売却は注意が必要

不動産の売却益は譲渡所得税の課税対象となり、不動産の所有期間に応じて、長期譲渡所得と短期譲渡所得のいずれかが課税されます。長期譲渡所得と短期譲渡所得とでは税率が約2倍変わるため、予期せぬ税負担を抱えてしまう可能性があります。

本コラムでは、譲渡所得に関する基本的な考え方のほか、長期譲渡所得・短期譲渡所得の計算方法や、税負担を軽減する具体的な方法を解説します。

長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?基本的な考え方

長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?5年以内の不動産売却は注意が必要
(画像:PIXTA)

一般的に土地、建物、株式などの資産を譲渡することによって得た利益を「譲渡所得」といいます。その譲渡所得に対して所得税や住民税などが課税されますが、それらを総称して「譲渡所得税」と便宜的に呼ばれることがあります。

土地や建物の売却の場合、課税対象となる金額は単純な売却価格ではなく、そこからその資産の取得費用や売却時にかかった諸経費(仲介手数料や登記費用など)、建物の場合には減価償却費までを差し引いた後の「実際の利益額」です。つまり、売却によって得た収入から必要経費を差し引いた純粋な利益が「譲渡所得」として認定され、これに対して税金が課されます。

この譲渡所得には「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」の2種類があり、資産をどのくらいの期間保有していたかに応じて、それぞれ税率が異なります。長期の方が税率は低く設定されているため、税負担を軽減する観点からも保有期間を意識した売却戦略が重要です。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の違い

長期譲渡所得と短期譲渡所得の最大の違いは、資産の保有期間によって異なる税率が適用される点です。

長期譲渡所得の場合、所得税が15%、住民税が5%、さらに復興特別所得税が0.315%加算され、合計で20.315%の税率となります。

一方、短期譲渡所得では、所得税が30%、住民税が9%、復興特別所得税が0.63%となり、合計で39.63%と大幅に高くなります。つまり、同じ利益を得たとしても、保有期間の違いによって税負担は約2倍にまで増加することになります。

所得の種類所有期間所得税率住民税率復興特別所得税合計
長期譲渡所得5年超15%5%0.315%20.315%
短期譲渡所得5年以下30%9%0.63%39.63%

長期譲渡所得と短期譲渡所得の判断基準

ここまで解説したように、長期譲渡所得となるか短期譲渡所得となるかで税率が約2倍変わるため、所有期間の定義と判定時期についてしっかりと理解しておくことが重要です。

以下からは、譲渡所得に関する判断基準や定義、具体的な計算例を紹介します。

判断基準となる「所有期間」とは?

譲渡所得の課税区分を判断する際の「所有期間」とは、不動産を取得した日から譲渡した年の1月1日時点での所有期間によって判断されます。単純に取得日から売却日までを指しているわけではない点に注意が必要です。

長期譲渡所得譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が5年超
短期譲渡所得譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が5年以内

譲渡日と取得日の考え方

譲渡日は、基本的には不動産の引き渡しが実際に行われた日を指します。ただし、納税者の選択によって、契約の効力が発生した日、つまり一般的には売買契約の締結日を譲渡日とすることも可能です。

取得日もまた原則として引き渡しの日とされますが、こちらも納税者の判断で売買契約の日を取得日とすることが可能です。

建設会社との間で工事請負契約を結び建物を建築した場合には、建物完成後の引き渡し日が取得日となります。また、相続や贈与によって取得した場合には、被相続人や贈与者の取得日を引き継ぐというルールもあります。

こうした日付の取り扱いは複雑になりがちであり、判断を誤ると課税区分を間違えるリスクもあるため、不安がある場合には税理士や税務署などに相談するようにしましょう。

所有期間判断の具体例

ここまで解説したように、所有期間の判断はやや複雑なため、具体的な例で確認してみましょう。下記は、2026年1月31日に不動産を売却する2つのケースを比較した図です。

所有期間判断の具体例

まず、2021年2月1日に不動産を購入し、その不動産を2026年1月31日に売却した場合、不動産を物理的に所有している期間は5年です。

しかし、税法上は「売却年の1月1日時点」で所有期間を判断します。不動産を取得した日から売却年である2026年の1月1日時点では、この不動産を取得してまだ5年が経過していないことになります。したがって、このケースでは「短期譲渡所得」として扱われます。

では、不動産を2020年12月1日に購入していた場合はどうでしょうか。この場合、2026年1月1日の時点で不動産を所有して5年経過しているため、「長期譲渡所得」となります。

長期譲渡所得・短期譲渡所得の税金を計算する方法

長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?5年以内の不動産売却は注意が必要
(画像:PIXTA)

譲渡所得の税額は、次の計算式によって求めることができます。

譲渡所得税金=( 譲渡価格-( 取得費+譲渡費用 )-特別控除 )×譲渡所得税率

ここからは、計算式を5つのステップに分け、具体的に解説します。

ステップ1:譲渡価格を計算する

はじめに、譲渡価格を計算します。譲渡価格とは、売却した不動産が市場で実際に取引された金額のことで、基本的には売買契約書に記載された金額を指します。

ただし、売却時に精算される固定資産税や都市計画税を売主が負担した場合には、これらの金額も譲渡価格に含めて計算します。たとえば3,000万円で不動産を売却し、固定資産税の精算分が25万円あったとき、譲渡価格は3,025万円となります。

このように、実際に手元に入る金額よりも高くなることもあるため、譲渡価格の計算時には税の精算や付随する金額ももれなく確認しましょう。

ステップ2:取得費を計算する

取得費とは、不動産を購入する際にかかった費用全体のことを指します。物件購入価格だけでなく、不動産取得税や登記費用、仲介手数料といった購入に付随する諸費用もすべて取得費に含まれます。

また、建物については「減価償却」を適用しなければなりません。これは、建物の価値が年数とともに下がることを考慮し、取得費から一定の金額を差し引く処理のことです。減価償却は「定額法」と「定率法」の2種類の方法で計算します。償却率は建物の構造によって異なるため、国税庁の定める一覧を参照し、自身の物件に適した率を使いましょう。

・定額法:取得価額×定額法の償却率
・定率法:未償却残高×定率法の償却率

また、売った土地や建物が先祖伝来のものであるなど取得費がわからない場合や、実際の取得費が譲渡価格の5%よりも少ないときは、売却金額の5%相当額を取得費(概算取得費)とすることができます。

減価償却の具体的な計算例や注意点については、こちらのコラムで詳しく解説しています。

【関連記事】不動産投資の節税効果を最大化させる「減価償却」の仕組みとは?シミュレーションや注意点を紹介!

ステップ3:譲渡費用を計算する

譲渡費用とは、不動産を売却するためにかかった費用を指し、譲渡所得を算出する際に経費として差し引くことができます。代表的なものとしては、不動産会社に支払う仲介手数料、契約書に貼付する収入印紙代、司法書士に支払う登記費用や土地の測量費用などが挙げられます。

これらの費用は一見見逃しがちですが、合計すると数十万円から場合によっては百万円を超えるケースもあるため、きちんと計上しておくことで節税につながります。証明資料(領収書など)は必ず大切に保管しておきましょう。

・仲介手数料
・収入印紙代
・登記費用
・土地測量費用 など

ステップ4:特別控除を利用する

譲渡所得の計算において、一定の条件を満たすと特別控除を受けることができ、課税対象となる譲渡所得額を大幅に減らすことができます。たとえばマイホーム(居住用財産)を売却した場合には、最大3,000万円まで控除できる場合もあります。

そのほかにも、公共事業などのために土地や建物を譲渡した場合は5,000万円、特定住宅造成事業のための土地譲渡では1,500万円、農地保有の合理化などのための土地譲渡では800万円の控除が受けられます。これらは用途や譲渡時期、取得年によって要件が細かく分かれているため、事前に制度内容を確認し、自身が該当するかどうかをチェックすることが重要です。

特別控除の例
・公共事業などのために土地や建物を譲渡した場合:5,000万円
・マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合:3,000万円
・特定土地区画整理事業などのために土地を譲渡した場合:2,000万円
・特定住宅造成事業などのために土地を譲渡した場合:1,500万円
・平成21年及び平成22年に取得した土地を譲渡した場合:1,000万円
・農地保有の合理化等のために土地を譲渡した場合:800万円
・低未利用土地等を譲渡した場合:100万円

ステップ5:税率を用いて計算する

最後に、これまでに求めた譲渡所得に対して、長期譲渡所得では20.315%、短期譲渡所得では39.63%の税率をかけて最終的な税額を算出します。

また、確定申告は特別控除などを利用して税金が生じない場合であっても、売却した翌年には確定申告を行う必要があるため、申告漏れがないように気をつけましょう。

長期譲渡所得・短期譲渡所得の計算例

では、ここまでの計算式を使って、実際に譲渡所得税を計算してみましょう。

・譲渡価格(販売価格):4,000万円
・物件購入価格などの費用:3,000万円
・減価償却:1,000万円
・譲渡費用:100万円
・特別控除:なし

取得費は、物件購入価格などの費用から減価償却を適用した金額の2,000万円となります。そのため、譲渡所得は、譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額である1,900万円に対して税率をかけて実際の税額を求めていきます。

・長期譲渡所得の場合:( 4000万円-( 2000万円+100万円 ) ) ×20.315%=約385万円
・短期譲渡所得の場合:( 4000万円-( 2000万円+100万円 ) ) ×39.63%=約752万円

このように、譲渡所得税の計算においては「いくらで売れたか」だけでなく、「いつ買って、どれだけ保有していたか」が非常に重要な要素になります。

長期譲渡所得税・短期譲渡所得税を軽減する方法

長期譲渡所得税・短期譲渡所得税を軽減する方法
(画像:PIXTA)

最後に、譲渡所得税等の税負担を軽減する方法を解説します。

できる限り長期譲渡所得にする

譲渡所得税は、長期譲渡所得となるか短期譲渡所得となるかによって税率が大きく変わるため、売却する時期を調整できるのであれば、できる限り長期譲渡所得となるように調整しましょう。

このとき、所有期間の判断を誤らないように、取得日をしっかりと確認し、売却希望年の1月1日時点で5年を経過しているかを正確に把握することが重要です。

取得費のエビデンスを残しておく

基本的なことにはなりますが、実際の取得費を正確に把握しておくことが重要です。全ての費用を漏れなく計上することで過大な課税を避け、適正に納税をすることが可能になります。また、修繕費用など不動産取得後の維持管理費用についても、領収書等の支払った証跡をしっかりと残しておくことが重要です。

不動産取引に関する税負担は高額になりがちで、場合によっては売却益を大きく損ねてしまう可能性があるため、税理士など専門家の意見も聞きながらしっかりと対策を練っておくことが重要です。

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