不動産投資では現金一括でなく不動産投資ローンを利用することが一般的ですが、入居者の退去や建物の改築工事などによって一時的に収入が減ったり費用が発生したりすることで、月々の返済が苦しくなってしまうことがあります。
本コラムでは、返済が重荷になった時のために知っておきたい「元金据置」について、メリットやデメリット、元金据置が適している人の特徴を解説します。不動産投資を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
ローンの元金据置とは
不動産投資ローンでは、借りたお金の「元金」とその「利息」を支払う方法が一般的です。ローンの元金据置とは、元金の支払いを一定期間猶予され、その期間は利息のみを支払う返済方法です。
元利均等返済を選んだ際に特約として付加できる場合があります。例えば、元金据置期間1年の特約を結んだ場合、特約期間の1年間は利息のみを返済し、翌年以降から残ったローン期間で元金と利息を返済することになります。
元金据置の特約は住宅ローンでは比較的よく使われることがあるものの、不動産投資ローンでは対応している金融機関が少ないので気を付けましょう。
なお、不動産投資ローンの返済方法は一般的に「元利均等返済」「元金均等返済」の2通りから選択します。各返済方法の違いについては以下のコラムで詳しく解説しているので、こちらも参考にしてください。
【関連記事】元利均等返済と元金均等返済はどっちがいい?それぞれの違いやおすすめの人を解説
元金据置のメリット・デメリット
ここでは元金据置のメリット・デメリットを紹介します。特に不動産投資ローンでは元金据置を提供している金融機関は少ないということを把握しておきましょう。
元金据置のメリット
・据置期間の月々の返済額を減らすことができる
元金据置のデメリット
・必ず利用できる訳ではない(取り扱っていない金融機関も多い)
・金融機関への交渉の手間が発生する
・返済総額が増える
・据置期間以降の月々の返済額が大きくなる
元金据置のメリット
元金据置のメリットは据置期間の月々の返済額を減らすことができる点です。元金の返済を一定期間猶予されるため、猶予期間中の返済負担を軽減することができます。収入が不安定になった時や急な出費等で一時的に返済が苦しくなった場合に有効な返済方法です。
【借入金額2,000万円、返済期間35年、固定金利2.0%、元利均等返済の場合】
毎月の返済額 | 総返済額 | 利息総額 | |
---|---|---|---|
元金据置なし | 6万6,252円 | 2782万5,861円 | 782万5,861円 |
元金据置1年間 (開始~12ヵ月) | 1年目まで:3万3,333円 2年目以降:6万7,600円 | 2798万823円 | 798万823円 |
上記シミュレーションの場合、元金据置なしだと毎月の返済額は6万6,252円ですが、元金措置をした場合、1年目までの返済額は3万3,333円と低く抑えられますが、据置期間(1年)以降の月々の返済額は6万7,600円と負担が増加となります。
上記のように一定期間利息のみの支払いを続けることで短期的なキャッシュフローを確保し、他の支出に充てることができます。しかし、この後に詳しく解説しますが、据置期間中の元金返済自体が免除されるわけではなく総返済額は増加するため慎重に検討することが重要です。
元金据置のデメリット
そもそも、元金据置は希望すれば必ず利用できるわけではありません。理由はすべての金融機関で取り扱っているわけではないため選択できる金融機関が限られているからです。また、取り扱いがあったとしても返済履歴等の個人属性や物件の収益性等の物件属性、元金据置を受ける背景や返済計画等から判断されて特約を利用できない場合があります。さらに、元金の返済を一時的に猶予することから金融機関側にもリスクがあります。そのため金融機関への交渉が必要になります。
また、利息は元金に対して計算されますが、据置期間中は元金が減らないため返済総額が増えてしまいます。さらに、ローン返済期間は変わらないために据置期間分を除いた残りの期間で支払う必要があり、据置期間以降は月々の返済額が大きくなります。
元金据置の利用がおすすめの人
元金据置にはそれぞれメリット・デメリットがあると紹介しましたが、実際に利用するかは状況によって異なります。ここでは、元金据置が適している人や状況について解説します。
- 計画的に将来返済するための資金を用意できる人
- 急な出費等で一時的に返済が苦しい人
- 一時的な収入減に陥った人(退去・改築など)
計画的に将来返済するための資金を用意できる人
一次的な減収や研修期間中の医師など直近の収入は多くありませんが、将来的に増収を見込める人には元金据置が適しているといえます。元金据置はあくまで返済を一時的に猶予する特約なので、金融機関は据置期間後にきちんと返済できるかどうかを重視します。そのため、元金据置後に収入の回復が可能だと予想される場合や資金繰りの改善が見込めるかどうかが重要です。
急な出費等で一時的に返済が苦しい人
子どもの教育費や予期しない医療費などで一時的な出費が発生する場合、元金据置を利用することで当面の返済負担を軽減し他の支出に充てた後に、返済していくことができます。これにより、短期間の資金繰りを改善し、安定した生活を維持しやすくなります。
一時的な収入減に陥った人(退去・改築など)
前述した「将来的には返済をきちんとできる人」と類似しますが、一時的に収入が減少する場合に元金据置を利用することで収入が戻るまで猶予を受けることができます。例えば、本人の退職や転職、入居者がなかなか見つからないといった場合や不動産のリノベーションによって家賃収入が得られない際に有効です。
返済が苦しい場合にできる元金据置以外での対処法
返済が苦しい場合には、元金据置以外にも主に以下の方法で改善できることがあります。どちらの方法も返済負担を軽減するための有効な手段ですが、それぞれのメリットとデメリットを理解して自分の状況に最も適した対策を選ぶことが重要です。
- 投資物件を売却する
- 不動産投資ローンの借り換え
投資物件を売却する
投資物件を売却することでローンを一括返済して返済負担を大幅に軽減できます。ローンの元金よりも高値で売却することができれば現金収入を得ることになります。
なお、売却に伴う手数料や税金が発生すること、売却までに時間がかかることなど注意が必要です。投資物件の売却方法については以下のコラムで詳しく解説します。
【関連記事】不動産投資を始める前に知りたい売却の基本 売却タイミングとポイント
不動産投資ローンの借り換え
現在投資用不動産の借入がある場合はローン返済状況を見直し、他の金融機関の条件と比較することも重要です。より有利な条件の新たなローンに借り換えることによって月々の返済額を減少させることができます。
なお、借り換えに伴う費用が発生することや時間や手間がかかることに注意しましょう。不動産投資ローンの借り換えについては以下のコラムで詳しく解説します。
【関連記事】住宅・不動産投資ローンの借り換え費用はいくら?相場や手順を紹介
不動産投資を見直す
そもそも急な出費等で一時的に返済が苦しい場合や一時的な収入減に陥った場合は、不動産投資を行うのではなく収入面を安定させ、貯蓄を増やすことに努めましょう。状況が安定してから、不動産投資を検討することが重要です。
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