不動産投資を検討しているものの、投資金額は決して小さくはないので、詐欺に遭わないか不安という方も多いのではないでしょうか。そこで本コラムでは、不動産投資で起こりうる代表的な詐欺の手口や、要注意フレーズを具体的に紹介します。また、詐欺被害を防ぐための方法や、詐欺被害に遭ってしまった場合の対処法についても詳しく紹介します。
不動産投資詐欺の被害に遭わないためにも、ぜひ最後までご覧ください。
不動産投資で起こり得る代表的な詐欺行為6選
まずは、不動産投資で起こり得る詐欺行為について代表的なものを6つ紹介します。詐欺手口は日々新しいものが生まれているため、常に最新の情報にアップデートするようにしましょう。
- 物件の価値・収益予想を偽る詐欺
- 架空の物件を販売する詐欺
- 手付金詐欺
- サブリース詐欺
- 投資セミナー詐欺
- リフォーム詐欺
物件の価値・収益予想を偽る詐欺
不動産投資において最も注意すべき詐欺のひとつが、物件の価値や収益予想を偽る手口です。
具体的には、悪徳な業者が投資家に対して実際よりも大幅に高い物件価値や収益予想を提示するもので、例えば実際の市場価値は2,000万円程度なのに3,000万円と評価したり、月々の家賃収入が15万円程度の物件を25万円と提示したりします。
このような被害に遭わないためには、自身で不動産情報サイトなどを使って実際に取引されている売買価格や家賃相場について調べてみることが重要です。また、近隣の類似物件との比較のほか、不動産鑑定士による専門的な評価を受けることも、この種の詐欺から身を守る有効な手段となります。
架空の物件を販売する詐欺
架空の物件を販売する詐欺は、不動産投資詐欺の中でも特に悪質な手口のひとつです。この詐欺は、実際には存在しない物件や、売り出されていない物件を投資家に売り付け、投資金を搾取するというものです。
特に海外や遠隔地にある物件は、現地確認が難しいことから詐欺の標的になりやすく、注意が必要です。
手付金詐欺
手付金詐欺は、本契約を締結する前に手付金を支払った段階で不動産業者と連絡が取れなくなってしまうというものです。具体的には、「人気エリアの物件なので、早めに手付金を支払えば確実に抑えられる」と急かし、信頼させたうえで、手付金を詐取する行為が典型的です。
また、宅建業法上申込時の場所によってはクーリング・オフが認められますが、何かと理由をつけて手付金を返金しなかったり、不動産取引に不慣れな買主に対して不利な契約を結ばせたりするなど、悪質な契約を結ばせるケースもあります。
クーリング・オフは不動産業者に説明義務がなく、知らないまま期日を過ぎてしまうことも有り得るため、クーリング・オフについて事前に理解しておくことが重要です。基本的に宅建業法は買主に不利な契約は禁止されており、万が一契約を結んでいても宅建業法違反となる場合は無効になります。契約する前に不利な情報はないか、しっかりと契約内容を確認しましょう。
サブリース詐欺
サブリース契約とは、不動産オーナーと不動産管理会社との間で賃貸借契約(マスターリース契約)を締結し、不動産管理会社が賃借人に転貸する契約形態です。サブリース詐欺とは、長期の家賃保証を謳いながら、実際には約束を反故にするような手口のことをいいます。
例えば、管理会社が「20年間、毎月20万円の家賃を保証する」といった魅力的な条件を提示しオーナーから物件を借りた後、しばらく経ってから「市場の変化」や「経営難」を理由に一方的に家賃の減額や契約の解除を迫るといった手口が代表的です。
また、借地借家法では借主が保護されますが、サブリース契約ではオーナーが貸主、サブリース会社が借主になります。そのため、借主であるサブリース会社が保護され、サブリース契約はなかなか解約ができなません。空室時も家賃を保証してくれると安易に契約せずに長期的な目線で判断することが重要です。
投資セミナー詐欺
投資セミナー詐欺は、「無料セミナー」や「特別講演」といった触れ込みで参加者を集め、高額なマニュアルの購入や、高額なセミナーへの参加を強引に勧誘する手口です。
具体的には、「不動産投資で成功する秘訣」や「確実に値上がりするエリア」といった魅力的なタイトルで人を集め、成功事例を誇張して紹介して参加者の期待を煽ったのち、「特別な投資物件」や「秘伝のノウハウが詰まったマニュアル」を高額で販売するといった手口があります。
リフォーム詐欺
リフォーム詐欺は、不必要なリフォームを勧め、高額な工事費を請求するというものです。この詐欺では、業者が「安全性の問題」や「資産価値の向上」を口実に、実際には不要な大規模リフォームを提案し、数百万円規模の工事を行うようなケースがあります。
また、さらに悪質なケースでは、「無料で点検する」などといって床下や屋根裏に入り込み、自ら柱などを破壊したうえで、「破損箇所を見つけたので早急に修繕すべき」と持ち掛ける場合もあります。
不動産業者から出てきたら注意すべきフレーズ
ここまで紹介したように、不動産投資に関連した詐欺の手口にはいくつもの種類があります。そこで、不動産投資において注意すべき4つのフレーズを紹介します。
- 必ず儲かる
- 節税になる
- 将来値上がりする
- 頭金不要
必ず儲かる
不動産投資において「必ず儲かる」は非常に危険なフレーズです。そもそも、投資には常にリスクが伴うものであり、絶対的な保証はありません。そのため、このような断定的な表現を用いる業者との取引は避けた方がいいでしょう。
通常であれば、過去の実績や市場動向を踏まえたうえで、潜在的なリスクと期待されるリターンの両方を丁寧に説明するはずです。例えば、「この地域では過去5年間で平均5%の家賃上昇がみられましたが、経済状況の変化によっては今後下落する可能性もあります」など、バランスの取れた情報提供を行います。
節税になる
不動産投資には一定の節税効果がありますが、過度にその点を強調する場合は注意が必要です。節税は不動産投資の副次的なメリットの1つにすぎません。
不動産投資では一時的には所得税の節税効果が見込めますが、支払利息や減価償却費といった経費計上額が年々少なくなっていくことにより、不動産投資を始めて数年は税還付を受けられていても、その後は納税へと転じていくことになります。節税効果のみならず、総合的な視点から投資メリットを検討することが重要です。
将来絶対値上がりする
「将来絶対値上がりする」という断言も、極めて危険です。不動産市場は、経済状況、人口動態、都市計画、自然災害など、多くの要因によって影響を受けるため、不動産の将来価値を確実に予測することは不可能だからです。
通常であれば、このような断定的な表現は用いず、過去のデータや市場分析に基づいた見解を提供しつつ将来の不確実性についても言及するはずです。将来の予測は不動産投資において重要なファクターではありますが、それよりも現在の収益性や物件の質、立地条件など、具体的かつ確実な要素に基づいて判断するようにしましょう。
頭金不要
「頭金不要」という言葉も警戒すべきフレーズです。多くの場合、不動産投資には一定の頭金が必要であり、投資家のリスク負担能力を示すためにも重要な指針として考えられています。また、頭金なしでの取引は借入金額も大きくなることから、毎月の不動産投資キャッシュフローが悪化する要因ともなり、投資家の投資リスクや金融機関の貸出リスクを大きくする可能性があります。
住宅ローンのなかには、頭金も含めて融資を受けられるものもありますが、同様に過度なリスクを負ってしまう可能性があるため、長期シミュレーションを行い慎重にリスクとリターンを検討する必要があります。
詐欺の被害に遭わないための基本的な対策
ここまでは、不動産投資詐欺の典型的な手口や、要注意フレーズについて紹介しました。以下からは、不動産投資詐欺の被害に遭わないために必要な、基本的な対策を5つ紹介します。
不自然な高収益は警戒する
不動産投資では、常識はずれな高収益を謳う案件には十分な注意が必要です。一般的に、不動産投資の年間収益率は、マンションであれば3%から5%ほどであり、これを大きく上回る収益率(例えば年間10%以上の利回りなど)を謳う物件には、物件自体やその物件周辺の環境などに何らかの問題がある可能性を疑いましょう。
このような高収益を掲げる業者は、物件の価値を過大に見積もっていたり、修繕コストや固定資産税等の支払いや空室リスク、家賃下落などを加味していなかったりする可能性があるため、まずは自分で徹底的に調べてみる必要があります。
不動産会社を入念に調査する
不動産投資を行う際には、取引を行う不動産会社の信頼性を確認することが重要です。特に、知名度の低い会社や新興の会社と取引を行う場合には、より慎重な調査を行いましょう。
まずは、国土交通省のWEBサイト「宅地建物取引業者情報提供サービス」で、その会社が正規の免許をもっているか確認します。さらに、その会社の過去の取引実績や顧客評価を調べることも重要です。
また、その会社が所属している業界団体(全日本不動産協会や全国宅地建物取引業協会連合会)に問い合わせを行い、会員資格の有無や過去のトラブル歴などを確認するのもおすすめです。
投資物件を確認する
不動産投資では、契約前に現地確認を行いましょう。物件の外観だけでなく、エントランスなどの共用部や室内状況、周辺環境、交通アクセスなどを直接確認することで、書類や写真だけではわからない情報を得ることが可能です。
ただし、中古マンションへの投資など、すでに入居者がいる場合には必ずしも室内を確認できないケースもあります。そのような場合には、同じマンションの他の空室物件を見せてもらったり、詳細な写真や360度ビューの提供を依頼したりするなど、可能な限り物件の実態を把握できる資料を収集するようにしましょう。
専門家に相談する
不動産投資は複雑で専門的な知識を有する分野であり、個人ですべてを把握し、判断することは困難です。そのため、無理に自力で全て判断するのではなく、外部の専門家に相談するのもおすすめです。
不動産鑑定士に相談すれば、物件の適切な価格や将来的な価格変動について専門的な見地からアドバイスを受けることができ、税理士や公認会計士に相談すれば節税面についてアドバイスを受けられます。
これらの専門家への相談には費用がかかりますが、例えば1棟マンションのような大きな物件への投資を検討している場合などは、将来的な損失やトラブルを防止するための必要経費と考えれば、十分に価値のある支出といえるでしょう。
契約書のリーガルチェックを依頼する
リーガルチェックとは、法的な観点から契約書の内容に問題ないか確認する業務になります。不動産投資では、契約書の内容が極めて専門的であり、内容も多岐にわたります。そのため、契約締結前に弁護士によるリーガルチェックを依頼することも検討してみましょう。
リーガルチェックをすることによって、解約条件、賃料保証の詳細、修繕費の負担、固定資産税の扱いなどについて、専門的な見地から助言を受けられます。
リーガルチェックにも費用が必要となりますが、大きな金額の投資を行う場合には将来的なトラブルや損失を防止するために重要な投資と考えてもよいかもしれません。
詐欺の被害に遭ってしまった場合の対処法
ここでは、詐欺の被害に遭ってしまった場合の対処法について解説します。被害金額を取り戻せる可能性を少しでも高め、同様の被害を生み出さないためにも、冷静かつ迅速に行動することが重要です。
速やかに警察や行政機関に通報する
詐欺被害に気づいたら、早急に警察と消費者庁に通報しましょう。通報する際には、契約書や領収書、メールのやり取りなど、詐欺の証拠となる資料をすべて持参すると、その後の手続きがスムーズに進みます。
関係各所への通報は、今後の被害の拡大を防ぐためだけではなく、専門機関による証拠の差し押さえ・保全を依頼するという観点からも重要です。早急に捜査が行われれば、被疑者の逮捕や、被害金額を差し押さえられる可能性も高くなります。
弁護士に相談する
不動産投資の被害にあった場合には、早急に弁護士にも相談しましょう。弁護士に相談することで、法的な観点から被害の実態を分析し、取るべき法的手段を明確にすることが可能です。
弁護士は加害者の資産状況を調査し、差し押さえることも可能なため、被害金額を取り返せる可能性もあります。また、弁護士が被害状況や証拠をまとめることで、警察や行政機関による調査がスムーズに進む可能性も高くなります。
他の被害者と情報を共有する
投資セミナー詐欺など、他の詐欺被害者との連絡がとれる場合には、他の被害者との情報共有も重要です。同様の被害に遭った人々と連携することで、より多くの情報を集めることができ、詐欺の手口や加害者の実態をより詳細に把握できます。
被害者グループを結成することで、共同で弁護士に依頼でき、個人で対応するよりも費用を抑えられる可能性もあります。また、グループとして行動することで、メディアや行政機関の注目を集めやすくなり、問題解決の圧力を高められる点も期待できます。
正しく理解する不動産投資のメリット
ここまでは、不動産投資の詐欺に関する情報について紹介しましたが、不動産投資には魅力的なメリットもあります。不動産投資の主なメリットを3つ紹介します。
- 安定した収益を見込める
- インフレ・物価上昇に耐性がある
- ポートフォリオを分散できる
安定した収益を見込める
不動産投資の最大のメリットのひとつは、長期的な安定収入を期待できるという点です。現在のような低金利環境では、年間数%の利回りであっても、魅力的な投資リターンといえるでしょう。
もちろん、安定的な収益を得るためには、適切な物件選びと管理が不可欠となります。今回紹介した情報も踏まえつつ、景気変動や人口動態、競合物件なども調査し、専門家のアドバイスも受けながら、慎重に投資判断を行うことが重要です。
インフレ・物価上昇に耐性がある
不動産投資の重要なメリットとして、インフレーション(インフレ)や物価上昇に対する耐性が挙げられます。一般的に、不動産の価値はインフレに連動して上昇する傾向があるため、長期的な資産価値の保全が期待できます。
ただし、すべての不動産がインフレに強いわけではありません。立地や物件の質、需給バランス等の要因によって個々の不動産ごとに価格変動は異なるため、長期的な視点での投資戦略を組み立てるようにしましょう。
ポートフォリオを分散できる
投資ポートフォリオを分散できるという点も、不動産投資のメリットとして挙げられます。
不動産は株式や債券とは異なる特性をもつため、株式市場が下落しても不動産市場が必ずしも連動して下落するわけではありません。そのため、すでに株式等の金融資産を保有している場合であっても、その一部を不動産資産へと切り替えることで、リスクの分散・軽減につながります。
不動産投資は、家賃収入からリターンを得ることから株式や債券のように短期的な市場の変動に左右されにくく、長期的な資産形成において安定性が期待できる点も、魅力のひとつといえるでしょう。
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