目次
「不動産投資はやめとけ」といわれるが、失敗した人は事前に知っておくべき基礎知識を身につけていなかったことが要因の一つだ。本コラムでは、「やめとけ」といわれる理由を解き明かし、事前に知っておくべき不動産投資の基礎知識を解説する。
不動産投資は「やめとけ」と言われる理由
はじめに「不動産投資はやめとけ」という一部の意見について確認してみよう。主な理由は、次の通りだ。
「不動産投資はやめとけ」の理由 |
多額の借り入れをして返済ができるかわからないから |
知識がないまま始めてしまう人が多いから |
思っていた以上に支出が多く手残りが少ないから |
空室・家賃滞納・家賃下落など収入減リスクが多いから |
災害・大規模修繕・金利上昇など支出発生リスクが多いから |
事件事故・周辺環境など資産価値低下リスクがあるから |
購入前の想定通りに進むとは限らないから |
多額の借り入れをして返済ができるかわからないから
融資を受けて手元資金にレバレッジを効かせることは、不動産投資のメリットの一つである。一方、不動産投資の知見のない人は「多額の借り入れをしても大丈夫だろうか」と不安になりやすい。
これを解消するには、「消費のための借り入れと投資のための借り入れは根本が異なること」を正しく認識する必要がある。例えば不動産投資のように、投資のための借り入れにはリスクはあるものの家賃収入が返済原資となる。消費のための借り入れには返済原資がない。
知識がないまま始めてしまう人が多いから
不動産投資には、管理業務を委託することでオーナーの負担を減らせるメリットもある。この部分だけを見て「不動産投資は楽をして儲けられる」と勘違いしてしまう人も少なくない。こういった人が不動産投資で失敗して、「不動産投資はやめとけ」と情報発信するケースもある。
書籍を読んだり、セミナーに参加したりするなど、事前に知識を身につけることが必要だ。
思っていた以上に支出が多く手残りが少ないから
不動産投資の初心者のよくある勘違いは「家賃収入の大半が利益になる」というものだ。実際には、家賃収入から数多くの諸経費を差し引いた金額が手残り(不動産所得)となる。目安として家賃収入の3割程度が手元に残ると考えておくといいだろう。特に新築の区分マンション投資では、収支が赤字になるケースも多い。
これは、どういった経費が発生するのかを理解し、詳細な諸経費を見込んでのシミュレーションをする。それでもキャッシュフローが回る物件であれば購入を考えるのがよいだろう。
空室・家賃滞納・家賃下落など収入減リスクが多いから
通常、不動産投資ローンの返済は家賃収入でまかなう。しかしいくつかのリスクによって家賃収入が途絶えたり、減ったりするケースもある。これも「不動産投資はやめとけ」という意見の根拠になりやすい。最も警戒すべきは空室リスクだろう。家賃収入がなければオーナーの手持ちのお金でローン返済を負担しなければならない。また入居者がいても家賃の滞納や下落による収入減リスクもある。
これらも事前にある程度の空室・家賃滞納・家賃下落があるものと想定したシミュレーションするのがよいだろう。
災害・大規模修繕・金利上昇など支出発生リスクが多いから
不動産投資には、不可抗力のリスクもある。これも不動産投資がネガティブに捉えられる原因になりやすい。その代表が災害リスクだ。地震や火災などにより、物件が倒壊・損壊すれば修繕費がかかるだけでなく家賃収入が得られなくなる。
また経年劣化による大規模修繕を行うには、多額の費用が必要だ。必要な修繕費を計画的に積み立てていれば問題ないが、積立金が不足すれば建物を適切に維持できなくなる。さらに借り入れ金利の上昇によるローン返済の負担増も考えられる。
大規模修繕はある程度、予測は可能だが、災害リスクや金利上昇リスクについては想定するのが難しい。いつ起きても対応できるように、余裕のある額の手残りを準備しておくと良いだろう。
事件事故・周辺環境など資産価値低下リスクがあるから
立地や建物に問題がなくても資産価値が下がってしまうリスクもある。例えば、入居者が自殺や事件に巻き込まれて亡くなった場合は、一定期間の告知義務があるため、家賃や物件価格が下がりやすい。近隣に嫌悪施設ができてしまうことも資産価値にとってはマイナスだ。
事件事故は想定できないが、嫌悪施設などは事前に調査することでリスク回避をすることも可能だろう。
購入前の想定通りに進むとは限らないから
ここまでご紹介してきた「不動産投資はやめとけ」と言われる理由には、すべて効果的な対策がある。この対策を行うことでリスクを軽減することも可能だ。とはいえ、いくら対策を行ってもリスクをゼロにすることはできない。これは、株式や債券など他の投資も同様である。
だからといって資産運用をしなければ、今後考えられる公的年金の減額やインフレによる資産の目減りに対するリスクに弱くなってしまう恐れがある。こうした「資産運用をしないリスク」もあることを意識したい。
すべての理由への対策でもあるが、何が起きても対応できるだけの資金を手元に残しておくことが重要になる。返済額を抑える目的で自己資金を多く入れたいからといって、手元資金が乏しくなるといったことは避けるべきである。
不動産投資の失敗事例
不動産投資で安定経営を実現するには、失敗事例も知っておくことが重要だ。失敗には共通するパターンがあるが、これを事前に知っておくことで失敗を回避しやすくなる。失敗の一例は、次の通りだ。
<失敗事例1.悪徳業者の勧誘を断れなかった>
悪徳業者の勧誘には次のようなものがある。
「今がチャンス」といった煽り文句を使う
「損をさせません」といった嘘の保証を伝える
「初期費用はかかりません」といった嘘を言う
これらの勧誘への対策は、まずは鵜呑みにしないこと。業者から言われたことを自分で調べたり専門家に相談したりして、不動産投資の知識を身に付けて冷静に判断することが大切だ。
<失敗事例2.相場より割高な価格で物件を購入してしまった>
相場より割高な価格で物件を購入してしまったケースの具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
不動産業者の勧誘のまま、相場を十分に調べずに購入してしまった
物件の立地や周辺環境に魅力を感じ、相場を無視して購入してしまった
利回りが高い物件に目がくらんでしまったが、表面利回りの数値で実際はそこまで高くなかった
これらのケースでは、不動産投資の知識や経験が不足していることが原因で、相場を正しく理解できずに購入してしまったことが失敗の原因となっている。対策としては、物件の相場を充分に調べてから購入することだ。
<失敗事例3.収支シミュレーションを鵜呑みにしてしまった>
このケースの具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
収支シミュレーションの条件を十分に理解せずに鵜呑みにしてしまった
収支シミュレーションをする際に空室率など不利な条件を考慮しなかった
収支シミュレーションはあくまでも目安であることを理解していなかった
収支シミュレーションはいかに緻密に行うかが大切になる。大雑把なシミュレーションや不利な条件を無視したものは、リスク対策としては意味がない。対策としては、「空室の発生」「修繕の発生」「突発的な支出の発生」などを厳しめの条件でシミュレーションし、それでもキャッシュフローが回るかどうかで判断するようにしたい。
<失敗事例4.住宅設備の入れ替えをしなかった>
住宅設備に関する失敗には次のようなケースが多い。
エアコンや給湯器などの設備が古く、入居者から敬遠されてしまった
エアコンや風呂、トイレなどの設備が故障して入居者の満足度が低下、結果的に退去してしまった
空室が埋まらないため最新設備に変えたが、想定以上に費用がかかりキャッシュフローが悪化
住宅設備は所有している部屋を空室にしないようするために重要である。設備が古いと入居者が敬遠する傾向にあり、最悪の場合は退去されてしまうこともある。これらのケースでの対策としては、定期的に住宅設備の状態を点検する、入居者のニーズを把握する、住宅設備の入れ替えを計画的に行うといったことが求められる。
上記の不動産投資の失敗事例は、別の内容のように見えて根本では共通している。これらは、不動産投資の知識を身に付けていれば回避できた内容ともいえる。
【関連記事】ワンルームマンション投資で陥りがちな失敗パターンとは?初心者向けの対策も
不動産投資に向いていない人
下記にあてはまる人は、不動産投資を始めるか否かを慎重に判断しよう。
・短期間で利益を出したい人
「大きなリスクをとってもいいから短期間で儲けたい」という人には、不動産投資に向いていない。このタイプが不動産投資を選択するとミスマッチになってしまう。ハイリスク・ハイリターンの投資を選択したほうがよいだろう。
・融資審査に通りにくい人
「収入が少ない」「出来高制など収入が不安定」「収入があっても借り入れが多い」といったタイプは、不動産投資ローンの審査に通りにくい。不動産投資をしたいなら属性を高めてから審査に臨むのがよいだろう。
・不動産投資を学ぶ意欲のない人
不動産投資は、知識と経験が成果に反映されやすい投資である。そのため基礎知識を得たあとも不動産や税務、法律などの知見を得ていくことが必要だ。そういった意味で勉強嫌いの人は、不動産投資に向かない。
・ほったらかし投資がしたい人
不動産投資は決して「ほったらかし投資」ではない。「面倒なことが嫌い」「楽をして儲けたい」という人は、不動産投資に向いてない。
不動産投資に向いている人
今度は「不動産投資に向いている人」をまとめてみよう。
・副業として投資したい人
前述のように不動産投資は、業務を管理会社に委託すれば拘束時間が短くて済む。この特性を踏まえると、会社員や他の事業をしながら副業として投資をしたい人に向いている。
・長期間で資産形成したい人
不動産投資の利益には、インカムゲイン(家賃収入)とキャピタルゲイン(売却益)があるが、家賃収入を積み上げて資産形成をするインカムゲインが基本だ。そのため不動産投資は目先の利益でなく長期間で資産形成をしたい人に向いている。
・融資審査に通りやすい人
不動産投資には、ローンを利用して手元資金にレバレッジを効かせられるメリットがある。このメリットを享受できるのは、融資審査に通りやすい「属性が高い人」だ。具体的には、以下のような人は融資審査に通りやすい。
- 高年収かつ安定収入
- 資産が多い
- 勤続年数が長い
- 借り入れが少ない など
・不動産好きの人
さまざまな物件を見るのが好きなど、不動産に興味がある人は不動産投資に向いている。なぜなら、それほど努力しなくても不動産投資の勉強や物件の情報収集を自然にしやすいからだ。
不動産投資とは家賃収入を得ることがメイン
不動産投資とは、賃貸物件を購入しこれを第三者に貸して家賃収入を得ることが主目的の投資だ。一般的に不動産投資は、他の投資方法と比べて「ミドルリスク・ミドルリターン」と言われている(下図参照)。
しかし、最終的に「不動産投資が成功したか否か」は、物件を売却してトータルリターンを算出してみないとわからない。なぜなら、充分な家賃収入を得ていても売却損を出してトータルでマイナスになってしまえば、不動産投資で失敗ということもあり得るからだ。
なお不動産投資は、直接的に投資するアパートやマンションの賃貸経営などや、間接的に投資するREITや不動産クラウドファンディングなどに大別される。自身に合った種類を選ぼう。
種類 | 特徴 |
---|---|
アパートやマンションの賃貸経営 | ・高額な資金が必要になりやすい ・融資が受けられる |
REITや不動産クラウドファンディング | ・数万円など少額でも始められる ・融資は受けられない |
不動産投資で利益が出る仕組みを理解することが大事
前述の通り不動産投資の利益と一口にいっても、インカムゲインとキャピタルゲインの2種類に大別される。
インカムゲインとは、資産を保有していると継続的に得られる利益のことだ。不動産投資では家賃収入にあたる。一方、キャピタルゲインとは、その資産を売ることで得られる利益のことだ。不動産投資では物件の売却益(損)にあたる。
家賃収入も物件価格も常に変化している(下図参照)。
<三大都市圏の分譲マンション賃料推移>
上図から算出すると、首都圏の分譲マンションの家賃はワンルーム(30㎡)で9万9,840円、ファミリー向け(70㎡)で23万2,960円である。家賃は景気に左右されにくいと言われるが、人口減少で賃貸需要が低迷する可能性もある。また物件の経年劣化で家賃が下落していくことも頭に入れておきたいところだ。
<中古マンション成約状況 価格推移>
中古マンションの価格はここ10年間で右肩あがりが続いている。ただし、いつ下落に転じるかはわからない。売却するときがちょうど下落基調だと売却損になる可能性もあるため、市場動向には注目しておくのが賢明だろう。
なお家賃収入は、毎月の賃料だけでなく以下のような項目も含まれる。
・礼金
・更新料
・管理費(共益費)
・駐車場代
・敷地に設置した自販機収入 など
また不動産投資の初心者が混乱しやすいことに「消費税の扱い」がある。家賃収入は非課税(用途が住宅用の場合)、売却益は課税となるため注意しよう。
不動産投資の物件の種類
不動産投資で成功するためには、物件の種類に関する基礎知識も欠かせない。自身の目標や重視すること(空室リスクや利回りなど)に合わせて適切な種類を選ぼう。物件の種類ごとの違いは次の通りだ。
マンション(区分/一棟)・アパート・戸建
不動産投資の物件を建物の種類で分けるとマンション、アパート、戸建てなどがある。このうち建物の寿命(法定耐用年数)が長いのは、マンション(例:新築のRC造で47年)だ。
<構造別の法定耐用年数の比較>
さらにマンションは、区分(部屋ごとの購入)と一棟(建物丸ごとの購入)に分かれる。立地や築年によって異なるとはいえ、一般的には物件価格が高いのは部屋数の多い一棟マンションだが、これに比べてアパートや戸建ては物件価格が低い。
<一般的な物件価格の比較>
新築・中古(築古)
不動産投資では、新築物件と中古物件どちらを選ぶかでリスクや投資金額が変わってくる。新築物件は、購入価格が高いが建物が新しい分、空室リスクが低い傾向がある。購入直後に経年劣化の修繕費用が発生するリスクも少ない。
一方、中古物件は低いが建物が古い分、空室や修繕などのリスクが顕在化しやすい。特に「築古」と呼ばれる築年数の古い物件は長期空室や大規模な修繕が発生しやすいため注意しよう。
木造・RC造など
不動産投資の物件選びでは、構造にも着目したい。なぜなら構造によって費用や設計の自由度、性能などが変わってくるからだ。ここでは、代表的な構造である木造とRC造(鉄筋コンクリート造)を比較してみよう。
木造は、木材や合板を組み合わせてつくった構造だ。木造の主なメリットは「建築費用が割安」「間取りの自由度が高い」「工期が短い」など、デメリットは「耐震性や遮音性がRC造など他工法に比べて劣る」などが挙げられる。
RC造は、鉄筋を組み合わせコンクリートで固めた構造だ。RC造のメリットは「木造と比べて耐久性が高い」ことが挙げられる。しかし「建築費用が割高」「建物が重いので軟弱地盤に向かない」といったデメリットも忘れてはいけない。
都市・地方
不動産投資は、投資するエリアによっても投資額やリスクが変わってくる。例えば東京や大阪、名古屋、福岡などの大都市圏は物件価格が高い傾向がある半面、賃貸ニーズが高いため空室リスクを軽減しやすい。
一方、地方都市では大都市圏と比べて物件価格が安い傾向だ。しかし人口が減少しているエリアでは、安定経営の難易度が高くなる。また、家賃も都心と比較すると安いため、月々の家賃収入も低くなる。ただし地方都市でも大学のキャンパス移転や大規模な工場誘致などの影響で賃貸ニーズが高いエリアも見られる。
不動産投資をする目的
不動産投資を始めるときには、事前に目的を決めることが大事だ。なぜなら目的によって選択する物件や収支計画、出口戦略(売却タイミング)などが変わってくるからだ。不動産投資の目的の一例は、次の通りだ。
・家賃収入で私的年金を得ていきたい
・高利回り物件で儲けたい
・投資規模を大きくしてFIREしたい
・所得税や相続税の節税をしたい
など
目的を設定しないと不動産投資で成功したのか失敗したのかも判断しにくくなる。また、ライフスタイルや経済状況の変化によって目的が変わる可能性もあるだろう。そのため、定期的に目的を見直すことが大切だ。
不動産投資で期待できる主なメリット
不動産投資で期待できるメリットを正しく認識しておくことで「不動産投資はやめとけ」といった他人の意見に左右されず、自身で的確な判断をしやすくなる。主なメリットは次の通りだ。
他人資本で投資できる
不動産投資には「他人資本で資産運用ができる」というメリットがある。不動産投資における他人資本とは、融資で得たお金のことだ。他人資本を利用して資産運用をすることで、少ない元手で大きな資金を運用できる(レバレッジを効かせられる)。
自己資金が1,000万円あったとしよう。すべてを購入に回したとしても1,000万円の物件しか購入できない。ところが他人資本を活用して4,000万円の融資を受けたとすると5,000万円の物件が購入できる。
ただし、融資を受ければ利息が発生することは頭に入れておくべきだろう。また、金融機関の審査に通らないと融資は受けられない。
ここで注目したいのは、他人資本で資産運用ができるのは不動産投資だけということだ。例えば、株式投資や投資信託、個人国債などの場合、購入目的での融資は受けられない。
所得税対策になる
不動産投資では、より多くの不動産所得(計算式:家賃収入-諸経費)を得れば所得税が増えるのが基本だ。
不動産所得が赤字になった場合、その分を給与所得や事業所得などから引いて所得額を計算できる。所得額が少なくなれば所得税が圧縮できる。さらに、不動産所得の赤字は3年間繰り越すことができるのもメリットだ。
ただし、節税効果は物件の種類によって異なる。基本的には、新築物件は効果が薄く、木造中古物件は効果が高いといわれている。
【関連記事】不動産投資で節税効果が薄くなるケースとは?物件購入前に確認しよう
相続税対策になる
不動産投資が相続税対策になる理由は、現金よりも不動産で資産を所有しているほうが評価額を抑えられるからだ。あわせて「貸家建付け地の減額措置」や「小規模宅地等の特例」などに該当すれば、さらに評価額が抑えられる。
なお、相続税対策の有効性は、資産状況や家族構成などによって異なるため、税理士など専門家に相談するのが良いだろう。
【関連記事】不動産投資で節税できる仕組みとは?リスクや低減策を解説!
安定収入が期待できる
不動産投資は、入居者がいる限り安定した家賃収入を得られる。ローン完済後は、まとまった不動産所得を得やすいため、「老後の個人年金」目的で不動産投資を始める人も多い。
とはいえ、何の努力もせずに安定収入が得られるわけではない。オーナー自身が不動産投資の勉強をして、それを経営に生かす努力が必要だ。
また、入居者募集や家賃滞納の対応などの管理業務を行う必要がある。本業を持っている場合、すべてを自分で行うのは時間的にも難しいだろう。管理業務は専門の不動産会社に委託することが可能だ。管理業務を委託する場合は、管理会社と信頼関係を築いたり適切な指示を出したりすることも重要になってくる。
生命保険の代わりになる
不動産投資では、融資を申し込むローン際、金融機関から団体信用生命保険(以下、団信)の加入を打診されるのが一般的だ。
団信とは、契約者が亡くなったり高度障害状態になったりした際などにローンの残高が保険金で相殺され0円になる保険のことを指す。遺族は、ローン返済のない物件で家賃収入を得たり物件を売却してまとまったお金を得られたりするなどの恩恵を受けられる。
<団信のイメージ>
団信の保険料は物件の価格や年齢などによって異なる。支払い方は、金利に上乗せされて払うパターンと、別途保険料を払うパターンがある。金融機関によって異なるため事前に確認することが必要だ。また、それぞれの金融機関によって扱っている団信の商品も異なるため、併せて確認するといいだろう。
インフレヘッジになる
物価が上昇するインフレ時には、現金の価値が相対的に下がるのに対し、モノの価値が上がるのが一般的だ。不動産投資の原資となる物件もモノのため、価格が上昇するケースもあり、これが実現すれば売却益を期待しやすい。加えてインフレ時には、物価上昇に伴って家賃相場が上昇するケースもあるだろう。
ただしすべての物件の家賃が上昇するわけではない。立地が悪い物件は、インフレ時でも家賃相場が逆に下がることもあるため、注意したい。
不動産投資で想定される主なデメリット
不動産投資はメリットだけでなく、デメリットも把握したうえで「やるか否か」を判断することが大事である。主なデメリットは、次の通りだ。
物件を選ぶのが難しい
不動産投資で安定経営を実現するには、優良物件を手に入れることが必要だ。優良物件とは「好立地にある」「物件管理が行き届いている」「入居者に人気の設備をそろえる」などの条件を備えた物件のことである。単に優良物件というだけでなく、適切な価格で手に入れることも重要だ。なぜなら高値つかみをしてしまえば、低利回りになってしまうからだ。
数ある物件のなかで、適切な価格帯の優良物件はごく一部である。さらに、これを購入したい人は多く競争率が高い。優良物件を見極めて購入に至るには、知識と経験の積み重ねが必須だ。
ランニングコストがかかる
不動産投資ローンの返済が終われば、家賃収入がそのまま手元に残るわけではない。以下のようにさまざまな諸経費(ランニングコスト)を差し引いた手残りが、最終的に得られる不動産所得となる。
- 管理会社に払う委託手数料
- 仲介会社に払う仲介手数料
- 固定資産税、都市計画税
- リスクを軽減するための火災や地震の保険料 など
こういったランニングコストの想定が甘いと、期待していた不動産所得とのギャップが大きくなるため注意したい。ランニングコストを抑えるためには、管理会社や保険会社を比較検討する必要があるだろう。
物件を維持し続けなければならない
空室リスクを抑えるための方法の一つは、入居者満足度を高めることだ。これを実現するためには、物件の維持管理に努める必要がある。具体的には、外観や室内、共有スペースなどのメンテナンスをすることだ。
また住宅設備の故障など突発的な修繕に迅速に対応することも大切だ。こういった維持管理の費用と手間がかかることも不動産投資のデメリットといえる。
売却に時間がかかる
不動産投資には、売却に時間がかかるというデメリットもある。例えば株式投資なら取引所の取引時間内に売り注文を出せば、すぐに現金化が可能だ(条件:当日中執行、成行などの場合)。しかし不動産投資の場合、所有している物件の売却した際には、物件登録や買主探し、契約などを含めると数ヵ月~半年以上の期間を要することが多い(仲介の場合)。
売り先が決まらない間に物件価格が下がってしまうリスクもある。現金化を急ぐなら不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」を利用するのがよいだろう。仲介よりも売却価格が低い傾向があるが、短期間での現金化が期待できる。
ほったらかし投資ではない
不動産投資のメリットとして「ほったらかしで投資ができる」が挙げられることもある。しかし実際には「ほったらかし」で安定収入を得られるほど甘くはない。
たしかに不動産投資の業務を管理会社に委託すれば、オーナーの業務負担(手間)は少なくなる。とはいえ不動産投資の本質は、賃貸事業の経営である。経営者としてリスクに備えたり、入居者満足度を高めるための努力をしたりしていかなければならない。
デメリットの主な対応策
・物件選びの際には、立地や築年数、周辺環境などを考慮する
・ランニングコストの想定額を多めにする
・物件の維持管理を定期的に行う(突発的な修繕にも対応できる余裕資金を保っておく)
・購入段階から売却時期を計画的に検討する
・不動産投資の知識と経験を身につける
不動産投資の基礎知識
不動産投資の基礎知識をこれから固めていきたい人は、下記のテーマを中心に勉強していくのがおすすめだ。知識を深掘りしたい人は、各テーマの解説内にある【関連記事】もチェックしよう。
リスクの種類
不動産投資には、数多くのリスクがある。大事なことは、それぞれのリスクに有効な対策があることだ。事前に対策を取っておけば、リスクを軽減することが可能となる。不動産投資の主なリスクは、次の通りだ。
- 空室リスク
- 家賃滞納リスク
- 事件事故リスク
- 修繕リスク
- 物件価格変動リスク
- 金利上昇リスク
- 災害リスク
それぞれのリスクの対応策については下記の関連記事を参考にしてほしい。
【関連記事】不動産投資はリスクを理解することが成功への第一歩
利回りの種類と目安
利回りとは、投資資金に対して得られる利益の割合のことだ。不動産投資においては、物件購入時などに重視されるが、利回りの種類と目安をきちんと理解しておきたい。不動産投資でよく使われるのは、次の2種類の利回りである。
・表面利回り
物件情報の広告で使われていることの多い利回り。計算方法が簡易で使い勝手がよい。
計算式:表面利回り(%)=年間賃料収入÷物件価格×100
・実質利回り
物件取得時にかかった諸経費、年間の諸経費を反映させた現実に近い利回り。
計算式:実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100
収支シミュレーションの際はどちらの利回りを使用するべきかなど、詳しいことは下記の関連記事に書かれている。
【関連記事】不動産投資の利回りとは?表面利回りと実質利回りの違いや計算方法を徹底解説
初期費用はどれくらいかかるか
不動産投資を始めるときは、物件価格だけでなく「初期費用がどれくらいかかるか」を事前に把握することも大切だ。この部分を曖昧にして契約を進めてしまうと、「途中で資金が足りない」という事態になりかねない。主な項目は、次の通りだ。
- 不動産取得税
- 印紙税
- 登記費用(登録免許税)
- アパートローン手数料
- 各種保険料(火災保険、地震保険など)
- 外注費 など
それぞれの金額の目安などは下記の関連記事を参考にするといいだろう。
【関連記事】アパート経営に必要な初期費用は?気をつけたいポイントも解説
融資の注意点
前述したように不動産投資ローンの審査においては、属性が重視される。加えて実際に融資審査を受ける際は、数多くの書類が必要となるため、チェック漏れがないようリスト化しておくのがおすすめだ。
【融資申込者に関する必要書類】
- 身分証明書、住民票、印鑑証明書
- 職務経歴書、勤務先の会社概要
- 所得を証明する書類
- 金融資産を確認できる書類
- 借り入れ状況がわかる書類
- 健康診断書(団体信用生命保険加入時)
ほかにも投資対象不動産に関する必要書類も必要となる。下記の関連記事が参考になるだろう。
【関連記事】不動産投資で融資を受けるときの必要書類と入手方法を解説
不動産投資に関するQ&A
Q.不動産投資で元を取るには何年かかる?
一般的に不動産投資で元を取るための期間(自己資本を回収する期間)の目安は5~10年程度といわれる。この元を取るための期間を参考にしながら、不動産投資ローンの返済期間を設定するのがよいだろう。
Q.不動産投資家の平均年収はいくらですか?
国税庁の統計によると、不動産投資家(不動産所得者)の平均所得は約542万7,000円だ(令和3年分申告所得税標本調査)。ちなみに平均所得とは、家賃収入から諸費用を差し引いた手残りである。
Q.不動産投資の最大のリスクは何ですか?
不動産投資の最大のリスクについては、さまざまな意見があるが、その一例は「金利上昇リスク」だ。過剰な借り入れをしている状態で金利が上昇すると、毎月の返済負担が重くなり、場合によっては手元資金で赤字を埋めなくてはならない。
Q.不動産投資で失敗するとはどういうことですか?
一般的に不動産投資の失敗とは、最終的な収支が赤字になることだ。不動産投資の利益には、家賃収入と売却益がある。仮に運用中(家賃収入)で赤字でも、物件を売却したときに黒字転換するのであれば失敗にはならない。
Q.不動産投資で成功するIRRの目安は?
IRR(Internal Rate of Return)とは、内部収益率のことだ。IRRを用いることで物件を所有している全期間の平均利回りがつかめる。一般的に不動産投資で成功と言われるIRRの目安は5%以上と考えられる。
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