近年日本で、「木造ビル」が徐々に増えていることをご存じだろうか。少し時代と逆行しているように感じるかもしれない。しかし国土交通省の調査によると、ゆるやかな右肩上がりの状況が続いており、なかには階数が高いビルも目立つ。なぜ木造ビルの建設が相次いでいるのだろうか。本コラムでは、日本で木造ビルが増加している理由やメリットについて解説していく。
4階建て以上のビルでも木材の使用が可能に
木造ビルが増えている理由はいくつかあるが、大きな要因として2000年の法改正が影響している。従来、4階を超えるビルで木材の使用は原則禁止されていたが、2000年の建築基準法の改正後は耐火性能を満たすことで木材が使用できるようになった。このことが、現在の木造ビル建築の機運が高まることにつながっているのだ。
木造ビル・マンションが続々と登場!銀座でも竣工が相次ぐ
2022年5月、国内最高となる44メートルの木造高層ビル(地下1階・地上11階建て)が完成した。メディアでも大きな話題となったため、記憶に新しいかもしれない。国が定める耐震基準を満たしており、純木造耐火建築物として注目を集めた。
木造ビルに関しては、東京銀座のビルにも注目が集まっている。大手ゼネコンにより2021年に竣工した木造ビルは、地上12階建てでさまざまな木造建築の技巧が施されている。今後銀座では、新たに木造ビルが建設される計画もあり、9~12階部分を木造として2023年5月に竣工予定だ。
しかし、なかには「木材を使うと建築コストが上がるのでは?」「耐震は問題ないのか?」など疑問を抱く人も多いのではないだろうか。結論からいえば、「木材を使うコストよりメリットを重視するケースが増えた」「耐震に強い建築用木材が登場した」といったことで、結果として木造ビルが国内で増加することにつながっている。
木造高層ビルの意外なメリットとは?
ビルで木材を使用する主なメリットは、以下の4つがある。
建築費用の一部が安く済ませられる
基本的に木造ビルを建築する場合、木材価格が高い分、トータルの建設費用が膨らみやすい。しかし、費用の詳細を紐解いていくと基礎工事などの費用は、木造ビルの場合のほうが安く済むことがある。なぜなら、木材を使うと鉄筋コンクリート構造や鉄骨構造の建物よりもビル全体の重量が軽くなり、その分ビル全体を支えるための基礎工事費用が抑えられるからだ。
環境への配慮でブランディング
SDGs(持続可能な開発目標)は日本国内でも環境への配慮から注目されており、脱炭素の動きはグローバルな加速を見せている。そんななか建設時に炭素の排出量を抑え、かつ炭素を固定する役割も担う木材を使ったビル建設は、環境に配慮した建築工法として関心が高まっているのだ。そのため木造ビルは、SDGsの観点からの価値向上やブランディングにつながることが期待できる。
断熱効果アップで光熱費を抑えられる
光熱費を抑える効果も期待できる。鉄やコンクリートと木材の熱伝導率を比較すると、木材のほうがはるかに熱伝導率は低い。これは、空気を多く含んでいることなどが理由だ。「熱伝導率が低い」ということは、「断熱性が高い」ということである。木材を使った建物は、夏は涼しさを、冬は暖かさをキープしやすいため、冷暖房などの光熱費を抑えやすい点が大きなメリットの1つだ。
調湿性・通気性で強み
木材には調湿性や通気性といった強みがあり、木造ビルにおける快適性に直結する。この点も特筆すべきことといえるだろう。
木造建築はビル以外でも
木造ビルが徐々に増えている日本。木材という材料が持つ断熱性や調湿性、環境への配慮の観点からブランディングにもなることは大きなメリットだ。また、最近では中低層の区分マンションにおいても木造の物件が建築されており、さまざまな物件で木造という選択肢が模索されつつある。もしかすると投資用のマンションにおいてもそういった物件が建築される日もそう遠くない未来で来るのかもしれない。
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