2022~2023年にかけて全国で強盗事件が相次いでおり、治安の悪化が懸念されている。治安の悪化は、当該エリアの住民の不安につながりかねない。また、家を決める際にも防犯対策の有無が大きな評価の分かれ目となる可能性がある。本コラムでは、大家さんが保有するアパートなどの共同住宅に防犯カメラを設置すべきか、設置のメリット・デメリットについて解説する。
防犯カメラの有用性とは?
警察庁が発表した「警察が設置する街頭防犯カメラシステムに関する研究会」よると、神奈川県川崎警察署の管内で2009年に街頭に防犯カメラを設置したところ、翌2010年の刑法犯認知件数が2007年に比べて減少したとの報告がある。防犯カメラの設置が犯罪抑止につながっていると推測できる情報と言えるだろう。
警察庁の「令和3年 警察白書」によると、警察が設置した街頭防犯カメラは31都道府県で2,150台にのぼる。2013(平成25)年の18都道府県で921台に比べて、8年でかなり増大していることがうかがえる。
防犯カメラのメリット・デメリット
防犯カメラの設置には、どのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。
防犯カメラ設置のメリット
防犯カメラを設置する最大のメリットは、犯罪抑止効果だ。犯行に及ぼうとする人が、防犯カメラの存在に気付き、犯行を思いとどまったという事例は実際にある。また、防犯カメラの設置台数を増やしたことが、地域の治安改善につながった事例も報告されている。防犯カメラの有用性について先述しているが、ここではさらに具体的な事例を紹介したい。
例えば、愛知県刈谷市は2012~2018年にかけて防犯カメラの設置台数を約100台から1,000台超へと増やした。公園や駅、地下道といった公共の場に防犯カメラが増えた結果、年間2,000件以上あった刑法犯認知件数が1,000件あまりと半数近く減ったそうだ。
また、防犯カメラの犯罪抑止効果については、一般の人も実効性を期待している。警備会社ALSOKは、2018年11月に20~69歳の男女500人を対象とした「防犯カメラに関する意識調査」を実施した。「防犯カメラがあることで安心と感じるか、不快と感じるか」と質問したところ、70%にあたる350人が「安心と感じる」と回答。さらにそのうちの73.7%が安心と感じる理由について「犯罪の抑止になると思うから」と答えた。
防犯カメラが明示的に設置されていれば、いたずらやゴミの不法投棄などに対しても抑止効果が期待できる。さらに防犯カメラは、防犯意識が高い人に安心感を与えることから入居率の向上にも寄与するだろう。
防犯カメラ設置のデメリット
一方で防犯カメラ設置のデメリットとしては常に監視されていることに対して不快に感じたり、プライバシーが侵害されていると感じたりする可能性があることだ。
また、録画データのセキュリティ面に対して不安に感じる入居者もいる可能性がある。このため、防犯性も担保しつつ、そういったプライバシー面やデータのセキュリティ面には一定配慮する必要がありそうだ。
クラウドカメラの導入も進む
近年は、インターネットに接続し映像をクラウド上に保存できるクラウドカメラの導入が進んでいる。防犯カメラをクラウドカメラにするメリットは、映像を遠隔で確認できるだけでなくタブレットやスマートフォンからもアクセスできる点だ。従来のハードディスクドライブ(HDD)などでの保存では、機器の故障や盗難のリスクがあった。
それに比べてクラウド上の保存はリスクが少なくデータ消失も起きにくい。もちろんクラウドサーバーの利用料がかかったり、情報漏えいリスクがあったりするデメリットはある。しかしHDDといった録画機器が不要になることで導入コストは抑えられ、情報漏えいに関してもデータの暗号化といった対策が可能だ。
防犯カメラ設置は時代のニーズ
「体感治安」の悪化が懸念されている時代においては、防犯カメラの設置を求める声が高まっている。クラウドカメラといった新しい機器の導入も進んでおり、保有物件に防犯カメラの設置は時代のニーズにマッチした対応といえるだろう。
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