三期目狙う習近平 紅いDNAを引く最後の男(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、「三期目狙う習近平 紅いDNAを引く最後の男(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
◆三期目を狙う習近平
だからと言って憲法を改正してまで三期目を狙うのか、ということには抵抗を持つ党員もいないではないだろう。
しかし中国の経済も軍事力も圧倒的に強くなり、アメリカが脅威を感じて、あの手この手で中国を潰しにかかってきているときに、党員も一般人民も、「経済と軍事を強くしてくれたのだから」と習近平を肯定する傾向にある。
もちろん経済にはさまざまな問題を抱えてはいるものの、大国アメリカと対等に渡り合える「存在感」は、この「紅いDNA」が強めているのは確かだ。党員ともなれば、中国共産党がどこから立ち上がってきたのか、中華人民共和国が如何にして建国されたのかを思うとき、「紅い革命の血筋」は絶対的だ。
反腐敗運動により軍に巣食う腐敗の巣窟を除去し、2015年12月末日に軍事大改革を成し遂げた上で、第19回党大会で「習近平新時代の特色ある中国社会主義思想」を党規約に書き込んで翌年2018年3月に国家主席任期に関する制限を撤廃した。
もっとも、この制限、かつてはなかったもので、果たしてこれが「党内民主」という性格から来たものか否かは、実はそこには複雑な背景がある。
◆トウ小平ほど独裁的だった人は中国建国以来いない
習近平が「独裁的である」という批判は、世界中から受けているところだろう。
筆者自身も習近平をかつて「紅い皇帝」と位置付けて本を書いたことがある。その時にはまだ勉強が不十分で、まさか習近平の父・習仲勲が、トウ小平の陰謀によって失脚させられたのだということを思いもしていなかったし、知らなかった。
しかしこのたび、『習近平父を破滅させたトウ小平への復讐』を書くに当たり、徹底して、これでもか、これでもかと追跡に追跡を重ねた結果、本当にトウ小平がさまざまな国家リーダーとなり得る人を倒してきたことを実感するに至った。
トウ小平がどれだけ多くの国家リーダーあるいはリーダーとなり得る人物を倒し、かつ自分が推薦して就任させておきながら、気に入らないと失脚させるということを繰り返してきたかを以下に列挙してみよう。
・1954年:毛沢東が後継者に考えていた高崗(西北革命根拠地)を自殺に追い込んだ。
・1962年:習仲勲を冤罪により失脚させた(16年間、軟禁・投獄・監視)。
・1980年9月:華国鋒を国務院総理辞任へと追い込む。
・1981年6月:華国鋒(中共中央主席、軍事委員会主席辞任)を失脚に追い込む
・1981年6月:自分のお気に入りの胡耀邦を中共中央主席に就任させる。(但し、1982年9月で中央主席制度を廃止し中共中央総書記に。)
・1986年:胡耀邦(中共中央総書記)を失脚に追い込み、趙紫陽を後任にした。
・1989年:趙紫陽(中共中央総書記)を失脚に追い込んだ。
・1989年:江沢民を一存で中共中央総書記・中央軍事委員会主席に指名。
・2001年:胡錦涛を隔代指導者に、トウ小平の一存で決定した。
ここまで国家のトップを自分一人の意思で失脚させたり指名したりした人は、建国後の中国には存在しない。毛沢東でさえ、たった一人の国家主席(劉少奇)を失脚させるために、わざわざ文化大革命を起こさないと、一存で失脚させる力は持っていなかったし、そうしなかった。
そのトウ小平が一存で決めた「国家主席の任期」を撤廃した習近平の「独裁度」は、遠くトウ小平に及ばない。
軟禁された趙紫陽は、テープに回顧録を録音し、それがのちに出版されたが、その中で趙紫陽は「トウ小平の声は神の声だった。すべては彼の一声で決まった」と語っている。
集団指導体制自体はトウ小平が決めたものではなく、毛沢東時代からあった。
国家主席に関する任期を区切ったのはトウ小平だが、習近平が撤廃したのは、このルールだけだ。
◆アメリカに潰されない国を求めて
中国はもともと、こういう国なのである。
それでもアメリカと対等に対峙できるリーダーを中国共産党員も中国人民も求めている。「紅いDNA」を持つ最後の男は、アメリカを凌駕するところまで粘るつもりではないだろうか。
岸田内閣はゆめゆめ「紅いDNA」の夢の実現に手を貸すようなことをしてはならない。日中国交正常化50周年記念を口実に、岸田内閣は何をするかわからない。今から警鐘を鳴らしておきたい。
写真: REX/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
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