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イギリスのCPTPP加盟申請は中国に痛手か?(2)【中国問題グローバル研究所】


【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、遠藤 誉所長の考察「イギリスのCPTPP加盟申請は中国に痛手か?(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

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◆中国はどう考えているのか——中国問題グローバル研究所の中国代表に聞いた
その辺はメンバー国の現状や意識調査をしなければならないので、今回はあくまでも、「中国はイギリスのCPTPP加盟申請をどう見ているか」にテーマを絞るしかない。そこで、シンクタンク中国問題グルーバル研究所の中国側代表である孫啓明研究員(北京郵電大学経済管理学院教授)に、中国の本音を聞いてみた。以下に示すのは孫啓明教授の回答である。

——簡単に述べるならば、二点ほど挙げることができます。

先ず、現在の世界情勢から見た時に、いかなる国あるいは経済組織も、米中という二つの大国のパワーゲームのツールになっており、どの国も経済組織も中国とアメリカから逃れることはできません。中国とアメリカが互いにパワーゲームの切り札として、それぞれ一つの経済組織を指導するか、あるいは中米それぞれがいくつかの経済組織の中に同時に入っているかのいずれかの形式が考えられます。実際、CPTPPはそのいずれでもなく、日本は本当の主人公ではありません(筆者注:日本がCPTPPの中で経済規模が一番大きいと言っても、それは暫定的なものに過ぎず、本当の主人公はアメリカだ)。イギリスの現在の経済規模と世界での地位から考えても日本に追いつくだけの力はないので、イギリスがCPTPPに入ったところで別に気にする必要はないし、中国は、日英などがアメリカに追随して中国を包囲しようと試みても、気にしていません。CPTPPは米中パワーゲームの場でしかないのです(筆者注:イギリスがCPTPPに入るか否かは何の関係もなく、アメリカが入るか否かだけが問題だ、という趣旨)。中国にとっては、RCEPがあれば十分にアメリカと対抗でき。中国にとっては、RCEPがあれば十分にアメリカと対抗できます。この二つの経済組織は、基本的に拮抗しています(筆者注:RCEPの規模は世界のGDPや貿易額・人口の約30%を占める。CPTPPを遥かに上回り、世界第二の経済大国である中国が入っている)。

次に、中国の経済力を考えれば、どの国だろうと中国との取引を軽々しく放棄したりはしないでしょう。バイデンが大統領になってから、米中パワーゲームの基調は変えていませんが、中国に対する対抗の仕方に関しては少し変化しています。やっぱり中国の経済力と市場の大きさを考慮せざるを得ないのでしょう。まあ、ひとことで言うならば、CPTPPだろうがRCEPだろうが、中国と離れてビジネス展開をするということはできないということです。アメリカも日本もイギリスも、結局は自分の利益を考えて選択していきますからね(孫教授の回答はここまで)。

たしかにイギリスのジョンソン首相は今年1月4日、「軽率な中国嫌悪」に警鐘を鳴らしている(※2)。中国との交易の余地を残したいのだろう。

一方、李克強首相は2月4日、イギリスの「破氷者」と呼ばれる48社の親中企業グループ倶楽部とリモートで会談した(※3)。1000人ほどが参加したという。日本でも自民党の二階幹事長が数百人や数千人から成る企業団を率いて北京詣でをし、習近平国家主席を喜ばせたことが何度もある。どの国にも、こういった「超親中」の政財界人がいるものだ。実に救いがたい。

なお香港人をイギリスに移民させてパスポートを発行する政策(BNO)に関しては、よくよく見るとBNOでイギリスに移民するには500万香港ドルかかるという試算があるようだ。日本円で6,751万円の財産を持っていないと移民資格が与えられない。だとすれば貧乏な民主活動家に移民の余地はないことになる。つまりBNO政策は、本当は民主活動家を救うためではなかったことになる。本日の発表でイギリスの昨年のGDP成長率はマイナス9.9%となったとのこと。香港からの移民に関しても、少しでも稼ごうかと思っているイギリス政府の意図が透けて見える。

実は、中国のネットに「イギリスがCPTPPに加盟申請したことに興奮しているのは日本だけだ」という論評があり、不愉快だったので中国側の受け止め方を考察してみたのだが、残念ながら、さらに暗澹たる気持ちになっただけかもしれない。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

※1:https://grici.or.jp/
※2:https://www.afpbb.com/articles/-/3326204
※3:http://www.gov.cn/xinwen/2021-02/04/content_5584803.htm

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