LiNKX:金融基幹システム・モダナイゼーションの担い手、今期5割増収・6割増益へ
LiNKX<584A>は、金融領域を中心とした基幹システム等のモダナイゼーション事業を展開する。2020年設立で、製造業向け開発支援のプログレス・テクノロジーズから一部事業を承継して独立し、2026年6月に東証グロースへ上場した。老朽化したオンプレミスの基幹システムをクラウドネイティブなアーキテクチャへ刷新する支援を主力とし、収益構造は準委任契約を中心とするフロー型収入が売上高の95.6%を占め、2026年6月期のハイエンド・エンジニア1名当たり年間平均売上高は2,304万円となる。一方、PoC・コンサルティングから本開発、保守・運用へと案件を長期化するとともに、自社ソリューションのライセンス提供を拡大することでストック型収入の積み上げを進めている。クラウドネイティブ・AIを強みのキーワードに掲げ、AI技術を実装した自社ソリューション「AXcelerator(アクセラレーター)」の本格展開も始めている。
同社の強みは、第一に、「ミッションクリティカル×高い開発生産性」という独自のポジショニングにある。大手SIerや外資系ベンダーとは競合ではなく協業・分業の関係にあり、北國銀行(CCIグループ<7381>)の次期勘定系システム「BankWill」プロジェクトではBIPROGY<8056>・CCIグループと、AI領域ではキンドリルジャパンと資本提携を含むパートナーシップを組む。モダナイゼーションの工程の中で、既存SIerが担いきれない部分、すなわち(1)クラウドネイティブ化に際して将来の拡張性を見据えたアーキテクチャ設計の最初の筋道を描く工程、(2)銀行の夜間バッチ処理のようなコア機能を最新技術で開発する重要工程、(3)最新技術を使った開発効率化・品質向上支援を担っており、金融の勘定系という最もミッションクリティカルな領域に食い込んでいる点が参入障壁となる。第二に、自社ソリューション「AXcelerator」である。同社が金融基幹システムの開発で培ってきた知見とAI技術を組み合わせ、複雑な既存システムの構造や依存関係を可視化し、影響調査からコード解析、モダナイズまでを効率化する。従来は膨大な工数を要した大規模レガシーシステムの刷新をAIによって現実的なものとすることで、モダナイゼーション市場そのものの拡大にもつながる可能性がある。また、PoC・コンサルティングを入口に本開発へつなげるだけでなく、ライセンス提供による継続収入も見込めるため、人月×単価を中心とする従来の収益モデルからストック型収入を組み合わせたモデルへの転換を担う重要な成長ドライバーとなる。第三に、ハイエンド人材の採用・育成力と、それによって実現する高い生産性である。採用率2~3%という厳選採用を維持しながら、2026年6月期には40名を採用し、期末のハイエンド・エンジニア数は前期末比31名増の72名まで拡大した。ソフトウェアエンジニアの外国籍比率が50%を超えるなど日本人採用市場だけに依存しない人材獲得力を持つほか、高度な技術力を持つエンジニアをミッションクリティカルかつ高難度の案件へ集中させることで、高い生産性・収益性を実現している。退職率も8.0%と市場平均を下回っており、採用難が続くIT人材市場において、質を維持しながらエンジニア数を拡大できている点は、高成長を支える重要な競争力といえる。
上場初年度となった2026年6月期の業績は、売上高1,909百万円(前期比39.0%増)、営業利益456百万円(同35.7%増)と、売上高・営業利益は過去最高を更新し、ハイエンド・エンジニア数も計画どおりに増加。金融領域におけるシステム・モダナイゼーション案件の拡大などを背景に高成長を継続した。具体的には、北國銀行の次期勘定系システムをはじめ、既存顧客の開発支援案件は順調に拡大、新規顧客獲得の拡大を目的としたパートナーシップの構築を推進した。売上総利益率は50.0%と高水準を維持。続く2027年6月期は、売上高2,840百万円(前期比48.7%増)、営業利益715百万円(同56.8%増)を計画する。内訳ではCloud &AIベースモダナイゼーション2,576百万円に対し、AXceleratorの本格展開によりAXベースモダナイゼーションを264百万円まで拡大する計画である。また、自社ソリューションや保守運用の拡大によりストック型収入の売上高比率を前期の4.4%から8.7%へ高めるほか、売上総利益率も51.0%へ改善する見通しである。販管費は採用強化等により731百万円(同47.1%増)を見込むものの、上場準備に伴うコーポレート部門増強等の費用増加が一巡することから、営業利益率は前期の23.9%から25.2%へ上昇する計画である。そのほか、ハイエンド・エンジニア1名当たり年間平均売上高は2,430万円(前期比125万円増)を見込む。
市場環境は追い風が強い。地方銀行の勘定系システムではクラウド化をはじめとしたモダン化の余地が大きく、金融機関のレガシーシステム刷新需要は中長期的な成長ドライバーとなる。「BankWill」は2027年1月に1stローンチを予定しており、その後も2ndローンチに向けた開発支援を継続するほか、完成したシステムは他行への展開も予定されている。北國銀行をはじめとした上位顧客への売上依存度は高いものの、プロジェクトの大型化と上場を契機とした新規顧客開拓、パートナー経由の案件拡大により顧客基盤の分散を進める方針である。生成AIについては、既存SIerを単純に代替するものではなく、エンジニアがAIを活用することで従来は困難だった大規模なレガシーシステムのモダナイゼーションを現実的にする技術と位置付けられ、むしろ同社の対象市場を拡大する可能性がある。中期的には保険会社など銀行以外の金融領域への展開や、金融以外の業界への横展開、M&A・アクハイヤリングも成長余地となる。
株主還元については、現在は無配であり、2027年6月期も無配を予想する。現時点では高い成長率を維持するためのエンジニア採用や自社ソリューション開発などへの成長投資を優先する段階にある。2026年6月末時点で現金及び現金同等物1,755百万円、自己資本比率82.4%と財務基盤は良好であり、今後は成長投資やM&Aへの資金活用とともに、利益水準や自己資本の積み上がりに応じた中長期的な株主還元方針の提示が注目される。
総じて、LiNKXは、レガシーシステムのクラウド化・AI活用という構造的な需要拡大を追い風に、大手SIerと補完関係を築きながら金融基幹系の中核工程を担うユニークなポジションを確立しつつある。2027年6月期は5割近い増収、6割近い営業増益を計画しており、営業利益率も25%台へ上昇する見通しである。今後の成長を左右するのはハイエンド・エンジニアの継続的な採用とAXceleratorの本開発案件への移行であり、特にストック型収入比率を前期の4.4%から8.7%へ引き上げる計画は、同社の収益モデルが人月中心から変化していく第一歩として注目される。「BankWill」の2027年1月の1stローンチとその後の他行展開、AXceleratorの案件拡大、顧客集中の緩和を確認しつつ、高成長の持続性に注目していきたい。
<YS>
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