山忠 Research Memo(7):ビジネスホテルを新設するとともに、想定される諸問題に取り組む
■山忠<391A>の成長戦略
1. ビジネスホテル開発
2027年4月期には、以下の事項に重点的に取り組む計画である。ホテルセグメントでは、4店舗目のビジネスホテルとして、「ジャストインプレミアム東海太田川駅前」(全153室)に2026年4月に着工し、2027年4月に竣工予定である。名古屋鉄道太田川駅は、産業・文化・観光の要所に面している愛知県東海市の代表駅であり、名古屋駅や中部国際空港へのアクセスにも優れている。2024年に「Relay to the Next〜次の東海市へつなぐ」をコンセプトに「東海太田川駅西土地区画整理事業」が開始され、同社グループは、ホテル部門を担当する企業として参画した。同ホテルでは、これまでのジャストインホテルにはない新たな設備として、大浴場や環境を意識した太陽光パネルによる自家発電も導入する予定である。
2. 課題と対策
グループの事業遂行に際して予想される課題に対しては、以下の対策を考えている。
(1) 建築費増加への対応
人件費や建築資材価格が高騰を続けており、建築費が増加して売上総利益を圧迫する可能性がある。実際、慢性的な人手不足、建築資材やガソリン・電気料金の高騰などを背景にした集合住宅の工事原価は、2015年と比較して約1.4倍に増加している。そこで、同社では対策として、スケールメリットを求めて小中規模マンションから中大規模マンションにシフトし、1戸当たりの建築費を抑える対応を始めている。具体的には、2026年4月期にプロジェクトを開始した「パルティール車道」は、総戸数66戸と大規模ではないものの、1フロアの戸数を増やすことで建築コストの抑制を図っている。今後も中大規模マンションへのシフトと設計の工夫で、高騰する建築費に対応する。販売戸数の増加に伴い、完売に時間を要するリスクはあるが、デザイン性や徒歩5分圏の駅近物件の開発により、質も重視して対応する考えだ。
(2) 土地代金高騰への対応
土地代金の高騰により、プロジェクト開発の停滞や売上総利益の減少につながる可能性がある。そこで、同社グループでは、ビジネスホテル・商業ビル開発を中心に「買う→借りる」へのシフトチェンジを検討中である。また、購入済みの土地についても隣地を借りることで選択肢を広げるなど、進行中のプロジェクトにおいても様々な角度から発想する計画だ。「土地を借りる」メリットについては、高くて買えない好立地でも開発が可能となり選択肢が広がること、抑えた土地代金で設備に付加価値を加えて収益性が増加すること、不動産取得税や固定資産税等が抑制できることなどが挙げられる。ビジネスホテルや商業ビルの開発では、従来は土地を取得していたが、今後は借地で対応することにより、プロジェクトを円滑に進めるケースも増えそうだ。
(3) 金利上昇への対応
金利上昇が続けば、支払利息の増加により利益の減少につながる可能性がある。そこで、今後の金利上昇に対しては、自己資金を活用して借入金の総量を減少させる計画だ。例えば、金利1%で10億円を借入れた場合、年間支払利息は1,000万円であるが、金利が1.5%に上昇すると支払利息は1,500万円に増加する。そこで、自己資金投入により借入金を7億円に圧縮すれば支払利息は1,050万円となり、利息負担を450万円削減することが可能だ。現状は、借入金利が金融機関平均で0.7%程度上昇したなかで、借入総量の減少や金融機関との折衝によって支払利息を抑制している。その結果、2026年4月期末時点におけるインタレスト・カバレッジ・レシオ((営業利益+受取利息・受取配当金)/支払利息)は9.0倍となり前期に比べて改善している。一般にインタレスト・カバレッジ・レシオは、5倍超であれば利払い余力がかなり高く、安全性が高いと評価される。
(4) 人材採用への対応
同社では、新卒・中途とも求人応募者が想定以上に増えないという課題を抱えている。現在の本社所在地では、近くに鉄道がないことから、限られたエリアからの採用にとどまっていることが原因の1つと考えられる。そこで、就業人口が減少傾向のなか、幅広いエリアから優秀な人材を確保するために、交通利便性の高い名古屋市内への本社移転を計画しており、2028年2月以降に新社屋が竣工の予定だ。2026年5月には本社移転プロジェクトを始動しており、立地だけでなく、生産性やセキュリティを意識したゾーニングや機能性に優れた設備の導入によって働きやすい環境づくりを推進する計画だ。
3. 中期経営計画
同社では、数値目標にとらわれて環境の変化に合わせた柔軟な対応が阻害されることを防ぐため、中期経営計画を策定しているものの非公表であった。ただ、投資家からの要望に応えて、同社グループの将来像と成長のロードマップを明示するために、2027年4月期には中期経営計画を公表するための準備を進めている。中期経営計画には「経営指標」「重点戦略」「人材開発」などを盛り込む予定だ。経営指標では、利益の質を追求する。重点戦略では、ストック型ビジネスモデルの拡充を図り、人材開発では、働きがいのある組織づくりを目指す。
経営方針を明確化し、投資家や従業員と将来像を共有するためにも、中期経営計画の公表は有意義であると弊社では考えており、正式発表が待たれる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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