上新電機 Research Memo(3):顧客のライフスタイルに寄り添う「コンシェルジュ」として付加価値創造(2)
■会社概要
2. 事業内容、市場動向、競合比較
Joshin<8173>は家電製品などの小売業やそれに付帯する業務の単一事業となっている。以下で販売チャネル、商品カテゴリ別売上高、出店戦略について、他の大手家電量販店との違いについて考察したい。
(1) 販売チャネル(家電EC市場への対応)
同社の2026年3月期の販売チャネル別の売上高比率を見ると、店頭販売が81.3%、ECが18.1%、その他が0.6%となっている。同社ではインターネットショップ「Joshin webショップ」を2000年10月に開設しており、競合他社と比べても早期からECに積極的に取り組んできた。同社のEC比率の推移を見ると、特にコロナ禍でリアル店舗への来客が滞った2022年3月期、2023年3月期の同社の売上高に占めるEC比率は18.5%へと大きく上昇し、2024年3月期はコロナ禍の収束によるリアル店舗への顧客回帰の動きもあり16.0%へとやや低下した。2025年3月期は、自社サイト、出店先ともに販売拡大を図ったため、再び上昇に転じ17.1%となった。2026年3月期は18.1%へ伸長し、ECは売上高79,004百万円と過去最高を更新した。店頭販売も354,911百万円となり、リアル店舗とECの双方が拡大した。戦略面では東西2拠点の自社物流体制、Joshin webショップの品揃え拡充、アプリ機能の強化、販売プロモーションの高度化などに取り組んでいる。リアル店舗とECの双方を利用する相互利用会員は、片方のみを利用する顧客に比べて年間購入回数、購入金額が大きいため、OMO戦略(オンラインとオフラインを融合することによって顧客体験の質を向上させるマーケティング戦略)の推進により、リアル店舗と自社ECサイト双方の成長につなげていく。
数値面については、前中期経営計画において2031年3月期にEC比率を25%まで引き上げるという具体的な目標を設定していたが、ECでは高付加価値商品が売れにくく、EC比率の上昇は売上総利益率の低下につながることから、EC比率の具体的な目標を設けない方針へ転換した。家電製品は商品単価が高く、消費者が実店舗とECを往来して慎重に価格を検討する傾向があり、規格が統一されているため商品型番などからの比較もしやすい。店舗とECの両面で顧客との接点を持ち、囲い込みを図ることが家電量販店にとっては重要であるとし、同社が得意とするリアル店舗での付加価値の高いサービスの拡充に最も力点を置きつつ、ECにおける利便性の高さを生かした拡販を進め、将来的にはリアル店舗とECのさらなる融合を進める構えだ。
一方、2025年8月26日に経済産業省が公表したデータによると、2024年の家電EC市場は約2.7兆円、EC比率は43.0%であった(経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」)。これには家電量販店以外の販売チャネルが含まれており、単純な家電量販店とECとの比較は難しいが、EC市場拡大のけん引役はAmazonなどのECと推測される。また、小売業全体のEC比率は9.8%に過ぎないことから、EC比率が4割を超える家電業界においてはEC利用が非常に進んでいると言えよう。また、EC比率は年々上昇傾向にある。
なお、競合の家電量販店各社のECへの取り組みを見ると、ECへの参入時期が遅れ先行企業に勝てるサイトを作りにくいことや、リアル店舗が主体でECに本腰を入れてこなかったことなどから、売上高に占めるEC比率が10%程度かそれにも満たない企業が多い。一方、非上場のため正確なデータは入手できないが、(株)ヨドバシカメラは実店舗をショールームに見立てて販売員による商品説明を行うなどの接客サービスの提供、ユーザーが実店舗と公式オンラインショップのどちらでも購入できる仕組みの構築、そして食品や書籍、日用雑貨などの取り扱いをAmazon並みにしたことでEC比率は40%近くに達していると見られる。上場している家電量販店のなかで、同社はECへ最も積極的に取り組んでいるうちの1社であり、同社の直近のEC比率18.1%は、ビックカメラ<3048>やヤマダホールディングス<9831>など同業他社と比べても相対的に高いのが特徴だ。一方、ヤマダホールディングスやケーズホールディングス<8282>など相対的にEC比率の低い家電量販店がEC比率の高い同社のような家電量販店と比較して売上の伸びが明確に劣後するような傾向はここ数年では見えておらず、売上拡大のための施策が必ずしもECだけに寄らず、リアル店舗におけるサービス力の強化も重要であることも忘れてはならない。それでもコロナ禍を契機にECの利用者が増加し、今後さらにEC比率が増加することは中長期的に避けられない流れであること、そして生成AIの普及によりIoT家電のさらなる高機能化が進むと見られることから、店頭で製品の説明を聞いたうえで購入したいという消費者のニーズに応え、店舗とECの両面で顧客との接点を持ち、囲い込みを図ることが同社も含めた家電量販店にとって今後ますます重要になると同社は考えている。
一方、ECの発展・拡大により、消費者が実店舗で店員から商品などの説明を受けつつ、そこでは当該商品を購入せず、より価格の安いECで当該商品を購入する「ショールーミング現象」、反対に消費者がWebサイトを見た後、実店舗に行き商品などを確認したうえで商品を購入する「ウェブルーミング現象」が見られるようになった。特にECに馴染みやすく、実際に製品を見てから消費者が購入する傾向がある家電製品においては、家具など他の高単価製品と比べてショールーミング、ウェブルーミングが多く、特に実店舗で商品を確かめた後に他ECで購入されてしまうショールーミングへの対応が重要な経営戦略のカギである。この点において、例えば米国ではウォルマートはデジタル部門「Walmart Global Tech」の規模を拡大するなどのデジタル投資を進め、家電量販店大手ベストバイはECでのダイナミックプライシングの活用などで売上高の拡大を進めてきた。なかでもベストバイは2017年に電子棚札※の導入を開始した。現在は日本でも同社が2018年に業界初の電子棚札を導入し、ほとんどの家電量販店で電子棚札を導入している。
※ 基幹システムやPOSと連動した価格情報の一括変更や在庫情報の表示ができる商品。従来の紙の棚札では時間や人員が必要であった作業が一元管理される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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