マクセル Research Memo(6):中期経営計画MEX26の定量目標は未達も、事業戦略は順調(2)
■マクセル<6810>の中期経営計画
2. 中期経営計画の進捗
(1) 定量目標の進捗
中期経営計画MEX26最終年度の2027年3月期は、既述のとおり増収増益を見込んでいる。しかし、半導体関連製品の販売回復の遅れをはじめ銀価格の高騰や米国関税の影響などにより、2026年3月期が減収減益となったこともあって、2027年3月期の業績予想は当初のMEX26定量目標に届かない見込みとなった。一方、詳細は後述するが、設備投資に加え、角形LIBの撤退やマクセルサクラの設立、EF2事業の譲渡やJAFCOのファンドへ出資するなどポートフォリオ改革を着実に進めている。期待の全固体電池についてもモジュール化の開発により顧客も増えており、事業戦略はエネルギーを中心に順調に進捗している。
また、アナログコア技術を核とする新たな開発テーマの立ち上げも加速させた。営業については、技術営業の人財を強化し、営業と事業部が連携して顧客に技術提案する体制は整備できたが、グローバルに技術提案する営業体制に一部遅れが発生している。経営基盤については、競争力の底上げに向け、基幹システムの共通化を通じて業務効率化と人財育成を着実に実行しており、順調と言えるだろう。
定量目標の達成はやや厳しくなってきたが、あらためて長期ビジョンの達成へ向け、小型電池事業を成長のメインドライバーとするコーポレートバイライン「Micro batteries. Maximum impact.」を制定した。「高信頼の小型電池領域のフロントランナー」戦略により、規模と先進性の両面でグローバルNo.1を目指す。
(2) 事業戦略の進捗
(a) エネルギー
エネルギーセグメントでは、既存事業、新事業ともに順調に進捗している。既存事業については、一次電池事業でマクセルサクラを設立し、二次電池では角形LIBの撤退を進めた。ベンチャーキャピタル出資を通じて外部から先端技術を取り込み、開発テーマの立ち上げを加速しつつ、さらなる外部連携機会の模索なども強めた。新事業については、全固体電池を事業化させた。
特にM&Aや提携では、村田製作所からの一次電池事業(マクセルサクラ)譲受による規模拡大に加え、JAFCOとの連携により外部の先端技術へのアプローチを強化している。マクセルの小野事業所(二酸化マンガンリチウム電池が強み)とマクセルサクラの郡山事業所(酸化銀電池が強み)のシナジーを創出し、短期的には生産能力の相互補完によって売上高と収益性の向上を目指し、中長期的には技術者交流を通じて開発力を強化、電池事業の成長をけん引する。JAFCOとの連携では、JAFCOが運用する新ファンドに同社が出資することで、外部の先端技術に網羅的にアプローチして必要な技術を積極的に取り入れ、新技術や構造技術による小型電池の性能向上や次世代電池の創出、センサーや通信など小型電池周辺技術と連携したソリューションの提案などへつなげる。
全固体電池では、周辺回路と一体化させたモジュール品の開発によって、従来品からの置き換えだけでメンテナンスフリーや環境負荷低減につながるため、需要拡大と社会実装に加速がついた。2025年8月に、SUBARU<7270>のエンジンやトランスミッションの生産拠点である群馬製作所大泉工場で、産業用ロボット及びコントローラーに搭載するテスト運用を開始した。2025年12月には、京セラ<6971>の半導体セラミックパッケージの生産拠点である鹿児島川内工場で、産業用ロボット及びコントローラーに搭載するテスト運用を開始した。また、モジュール化によって、電源接続を意識せずにエナジーハーベスティング※や通信モジュールなどに実装可能となる。用途に合わせた最適なソリューションモジュールの提供により、さらなる市場展開に期待できる。
※ 微小エネルギーの電力変換などにより、電池交換や配線を減らしてセンサーやIoT機器を長期間動かす技術。
小型電池市場は年間6〜7%成長し、2030年には5,500億円市場になると言われている。そうした市場で、同社は「高信頼の小型電池領域のフロントランナー」として、同社の小型電池をインフラや医療機器、ウェアラブル、メーター、センサー、ゲーム機など広がる用途に活かすとともに、技術革新とM&A・業務提携など外部連携の組み合わせによってより付加価値の高い電池を開発することで、小型電池市場の成長をけん引する考えである。
(b) エネルギー以外
機能性部材料では注力製品を中心に増産投資を実施、光学・システムではポートフォリオ再編を実行するなど、エネルギー以外でも財務規律を徹底するとともに安定成長へ向けた事業展開を行った。光学・システムでは、効率化に向けて光学レンズユニット事業を子会社マクセルフロンティア(株)へ移管した。これにより、従来から運営していたグローバルシェアトップレベルのLEDヘッドランプレンズ事業の、「高精度成形」と「超精密金型」による多様化デザインに対応した自由曲面レンズ設計や金型設計から成形までの一貫生産による高品質・低コストという強みと、事業移管した光学レンズユニット事業の、高精度・高耐熱プラスチックレンズやカスタム光学設計、超音波クリーニングレンズユニットの強みを融合する。その結果として、マクセルフロンティアでは、一気通貫したモノづくり体制の構築や、経営資源の集約による効率化、技術シナジーの最大化といったメリットが見込まれる。また、半導体関連事業の見直しも進めており、EF2事業をソノコムに譲渡する予定となっている(2026年7月)。譲渡のねらいは、経営資源の最適配分とEF2事業のポテンシャルの最大化にある。さらに、アナログコア技術を有効活用した新技術として、高速通信環境下で磁気ノイズを低減する磁気ノイズ抑制フィルムを開発し、スマート工場や自動車向けに2026年4月にサンプル出荷を開始した。
(3) 財務戦略の進捗
財務戦略も順調である。事業環境変化により営業キャッシュ・フローが計画を下回る見込みとなったが、機動的な資金調達と自己資金の活用により成長投資と株主還元は計画どおり実行した。成長投資では前中期経営計画の2倍超となる約350億円を計画。そのうち、成長ドライバーのエネルギーには200億円超を投下し、医療機器用一次電池や耐熱コイン形リチウム電池など小型電池領域で積極的な増産投資を継続した。ほかに半導体DMSや建築・建材用テープなどの事業に100億円超、新規開発、人財やDXなど経営基盤強化に50億円超を投資している。株主還元も、普通配当に加えて2025年11月に自己株式6,292千株の取得を実施し、2026年5月に消却した。3ヶ年累計総還元性向は100%以上を達成する見込みとなった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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