坪田ラボ Research Memo(5):ドライアイ及び近視領域の2つのパイプラインで開発が進捗(2)
■坪田ラボ<4890>のパイプラインの動向
(3) TLM-017(重症ドライアイ)
同社は、新たに眼GVHDによる重症ドライアイや角結膜障害を対象としたTLM-017(点眼薬)の安全性及び予備的な有効性を検討する臨床研究を開始し、2026年3月にFPIを達成した。眼GVHDは同種造血幹細胞移植後にドナーの免疫細胞が患者の眼の表面組織(幹細胞)を異物とみなし攻撃することで発症する合併症(GVHD)の一種である。重度のドライアイや激痛、視力低下を伴い、悪化すると角膜損傷を招き生活の質(QOL)を著しく損なう恐れがある。このため、早期診断と適切な治療が重要と言われている。現在、治療薬としてステロイドなどの抗炎症薬があるが、緑内障や白内障など感染症などのリスクがある。人工涙液や治療用コンタクトレンズなど物理的に目の表面を保護する対処法もあるが、効果は限定的でアンメットメディカルニーズの強い疾患と言える。TLM-017は、幹細胞を活性化する成分により目の表面組織の炎症を抑制する新たな作用機序となり、動物実験での効果が確認されている。特定臨床研究の予定症例数は16例で、安全性評価のほか副次評価として重症度スコアの推移を見る試験となり、2028年4月の終了を予定している。同社では有効性と安全性の両立により長期治療の継続が可能な新規治療薬として開発を進める方針である。
同種造血幹細胞移植は国内で年間約3,500件実施されているが、このうち慢性GVHDとなる患者の割合が4~6割、さらにそのうち眼GVHDを発症するのは2~6割と言われており、患者数は年間でも1,000人前後と見られ希少疾患に該当する。希少疾患に対する早期承認制度を活用できれば、開発コストも低く抑えることが可能となるため、従来のように開発のアーリーステージでの導出だけでなく、第2相臨床試験まで自力で行い、パイプラインの価値を高めたうえで導出交渉を行うといったケースも想定される。
(4) その他
TLM-018(OTC点眼薬)はパートナー先のロート製薬にて小規模な臨床試験を実施し販売承認を取得、2026年3月より子ども向け点眼薬「ロートアイビジョン」として発売された。デジタルデバイス使用による子どもの「デジタルストレスによる疲れ目」に着目した目薬で、目の表面の炎症を多角的にケアする成分が含まれている。同社業績への短期的な影響は軽微と見られるが、中長期的には事業基盤強化に寄与するものと考えられる。
また、TLM-023(近視進行抑制)は、新規開発化合物による新たな作用機序による点眼薬である。現在は前臨床試験を実施するとともに、国内でライセンス契約の交渉を進めている。
2. 医療機器
(1) TLG-001(近視進行抑制)
近視進行抑制デバイス「TLG-001」は、メガネにバイオレットライトの光源を装着し、能動的に1日3時間程度、眼にバイオレットライトを照射することで網膜内層にある非視覚型光受容タンパク質「OPN5」の活性化を促し、血流改善によって脈絡膜厚を維持し、近視進行を抑制する効果が期待されている。
2022年6月より実施していた検証的臨床試験※が2025年10月に終了し、2026年2月にその速報結果が発表された。安全性には問題なかったものの、有効性においては被験機器群と対照機器群で統計的有意差は得られなかった。ただし、屋外活動時間が平均60分未満と短い被験者群に絞れば、調節麻痺下屈折値及び眼軸長の両方で近視進行抑制が示唆される結果が確認された。
※ 試験方法は、弱度近視(-1.5D~-3.0D)を有する6歳~12歳を対象に予定症例数160人を被験機器群と対照機器群に均等に割り付け、それぞれ12ヶ月間毎日3時間装用する。その後12ヶ月間は機器を装用せずに経過観察を行い、2年間で合計9回の検査を行う。
同社は今回の臨床試験で有意差が得られなかった理由として、被験者の屋外活動時間が関係したと見ている。途中離脱者を除く被験者数は146例(被験機器群70例、対照機器群76例)であったが、平均屋外活動時間が被験機器群で84分、対照機器群で101分と全体的に屋外活動時間の長い被験者が多く参加しており、これが試験結果に影響したと見ている。文部科学省が実施した児童の近視実態調査によると、平日は1日90分、休日は120分以上屋外で過ごすと、30分未満の児童と比較して視力が低下しにくい結果が出ているが、今回の臨床試験ではそのボーダーライン上となったことで、両群に差が出なかったと考えられる。試験計画どおりに評価可能であった被験者集団において、近視進行の指標である眼軸長の伸長は対照群と比較して統計学的に有意に抑制された。また、調節麻痺下他覚的屈折値についても、近視進行の抑制を示唆することが確認された。
この結果はバイオレットライトの作用仮説を裏付けるものとなり、対象被験者を適切に設定することで有効なデータを得られる可能性が高まったと同社では評価している。このため、国内での開発については改めて戦略を練り直すことにしている。文部科学省の調査では小中学生の65%が屋外活動時間が60分未満とされており、対象者層の大きさを踏まえれば、追加試験を行う意義は十分にあると弊社では見ている。
一方、中国のライセンス供与先であるBYPTでも、2026年内の臨床試験開始に向けて準備を進めている。今回の国内での臨床試験をもとに被験者の条件を設定すれば、成功確率が高まることが予想され、日本よりも早く販売承認される可能性がある。中国でも子どもの近視保有率は日本や韓国並みに高く、政府も近視人口の抑制を目標として掲げていることから、開発に成功すれば収益貢献度も大きくなると予想される。
(2) TLG-020(網膜色素変性症)
網膜色素変性症を対象としたTLG-020の特定臨床研究を2026年1月より開始した。網膜色素変性症は、眼球の内側を覆っている網膜に異常をきたす遺伝性・進行性の希少疾患で、夜盲や視野狭窄及び視力低下が徐々に進み、失明リスクもある。原因遺伝子は100を超えており、有効な治療法も確立されておらず、日本では難病指定となっている。2023年に遺伝子治療薬「ルクスターナ」が国内で販売承認されているが、治療費が両眼で約1億円と高額であるほか、特定の遺伝子変異を対象とした治療薬であり、すべての患者のニーズを満たしているわけではない。また、遮光眼鏡の使用や内服薬の使用によって症状の進行を遅らせる対症療法も行われている。
TLG-020はバイオレットライトの照射により脈絡膜の血流を改善することで、安全かつ遺伝子の種類を問わずに症状の進行を抑制する効果が期待されている。今回の特定臨床研究では、予定症例数3例で安全性や重症度、不具合の発生状況等を確認することにしており、2026年12月に終了予定となっている。バイオレットライトにより網膜色素変性症の進行を既存療法と比較して有意に抑制することが証明されれば、アンメットメディカルニーズの強い疾患だけに国内外でライセンス契約が進む可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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