坪田ラボ Research Memo(4):ドライアイ及び近視領域の2つのパイプラインで開発が進捗(1)
■坪田ラボ<4890>のパイプラインの動向
現在、医療機器・医薬品の開発パイプラインとして近視、ドライアイ、脳疾患領域を中心に11本(医薬品5本、医療機器6本)の開発が進んでいる。2026年3月期においては医薬品領域のパイプライン5本のうち3本で開発が前進したほか、TLM-018関連製品となるロート製薬の子ども向け点眼薬「ロートアイビジョン」が2026年3月に上市された。一方、医療機器では近視進行抑制デバイスとなるTLG-001の国内での臨床試験結果が同年2月に発表された。全症例において対照群と比較して統計的有意差が得られなかったものの、サブ解析により屋外活動時間の少ない被験者(60分未満/日)に絞れば有意差が得られる結果となった。この結果を踏まえて国内での開発については改めて戦略を練り直すとしている。
1. 医薬品
(1) TLM-001(ドライアイ)
TLM-001(軟膏薬)は、マイボーム腺機能不全を対象とした治療薬となる。マイボーム腺機能不全とは、瞼の縁にあるマイボーム腺という脂腺が詰まることで油層が不安定となり、涙液の蒸発を防げなくなるドライアイの一種である。同疾患になると、眼表面に炎症や不快感を引き起こし、慢性的な視機能の低下や疼痛症状が現れ、国内外で患者数が増加し続けている。同社はビタミンD関連物質がこの機能を回復させることを動物実験及び臨床試験によって証明し、2021年4月にマルホと国内及び米国、フランス、英国、ドイツ等を対象とした独占的実施許諾契約を締結した。マルホで実施していた第1相臨床試験が2025年2月に終了し、安全性に問題がないことが確認されたことから、同年10月より第2a相臨床試験に移行し、2026年1月に最初の被験者組み入れ(FPI:First Patient In)が開始された。
臨床研究等提出・公開システム(以下、JRCT)で第2a相臨床試験の内容を確認すると、予定症例数は100例で実薬3群(低・中・高容量)とプラセボ群の4群に分類して二重盲検比較試験を実施する。1日2回8週間、実薬またはプラセボを上下の眼瞼縁周囲に塗布するというもので、有効性と安全性を評価する試験となる。有効性を見る主要評価項目は、涙液層破壊時間としている。試験終了予定は2026年8月としており、順調に被験者登録が進めば2026年内には結果が判明する見通しである。
マイボーム腺機能不全治療薬は軟膏薬や点眼薬、経口薬など様々なタイプの薬剤が開発され、市場規模は全世界で20億ドルを超えていると見られる。患者数の増加とともに市場規模は拡大を続ける見通しであり、第2a相臨床試験で良好なデータが確認されれば、パイプラインの価値も一段と高まることが期待される。
(2) TLM-003(近視進行抑制)
同社は近視進行抑制へのアプローチとして医薬品で2本、医療機器で1本のパイプラインを進めている。医薬品のうちTLM-003は、1日1〜2回の点眼によって近視の進行を予防する点眼薬となる。近視は強膜※1小胞体ストレス※2がその発症・進行機序の1つと考えられており、小胞体ストレスの活性化により強膜が菲薄化することで眼軸長が伸長しやすくなり近視が進行する原因の1つとなっている。このため小胞体ストレスの活性化抑制作用を持つTLM-003を点眼投与することで近視進行が抑制できると見ている。
※1 眼球の外側の白色の被膜部分。
※2 小胞体は細胞内にある袋状の構造の小器官で、細胞内の物質輸送の働きをする。何らかの理由で小胞体内腔に正しく折り畳みがなされなかったタンパク質や正常な修飾を受けていないタンパク質が過剰に蓄積する状況を小胞体ストレスと呼ぶ。
近視モデルのマウスによる実験では近視進行抑制効果が証明されており、国内のライセンス供与先であるロート製薬が2023年11月より第1相臨床試験を実施し、安全性が確認されたことから、2025年4月より第2相臨床試験を開始した。JRCTによれば、予定被験者数は210人(6歳~15歳)で、プラセボ対照二重盲検比較試験で実薬は低容量、高容量の2群で実施する。多施設で臨床試験を進めたこともあり、想定を上回るペースで被験者の登録が進み、2026年2月に最終組み入れが完了したことが確認されている。2027年3月期中には治療期間が終了する見通しである。主要評価項目は、他覚的等価球面度数※の変化量としており、有効性が確認されれば次のステップに移行する見込みだ。
※ 他覚的等価球面度数とは、眼科で行う他覚的屈折検査(オートレフラクトメータや検影法などで測定される屈折度)に基づき、球面度数と円柱度数を組み合わせて1つの球面度数に換算した値。同数値は、乱視の影響を含めた視力矯正の目安として用いられる。
また、海外では欧米市場を対象にライセンス契約を締結したThea※1が、2026年1月に第2相臨床試験のFPIを達成し、開発は順調に進んでいることが確認されている。中国市場でもライセンス供与先の大手眼科用医薬品メーカー※2が臨床開発の準備を進めている。
※1 契約一時金とマイルストーン合計で41.5百万EUR+ロイヤリティ
※2 契約一時金とマイルストーン合計で18百万USD
生活様式の変化により、近視人口は世界的に急増しており、WHO(世界保健機関)では2050年に世界人口の50%が近視になると警鐘を鳴らしている。特に、日本や韓国、中国では児童の近視割合が高く、社会課題になっており、近視治療に関して医薬品や医療機器など様々なアプローチで開発が進められている。近視進行抑制剤としては、低濃度アトロピン点眼液が2024年12月に日本で初めて製造販売承認を取得したが、同製品よりも優れた薬効データが得られれば、TLM-003の価値も一段と高まると見られるだけに、国内での第2相臨床試験の結果が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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