BS11 Research Memo(3):質の高い情報を提供、動画広告市場における収益機会が拡大
■日本BS放送<9414>の事業環境
(株)電通が公表した「2025年 日本の広告費」によれば、2025年における日本の総広告費は前年比5.1%増の8兆623億円であり、2022年以降4年連続で過去最高を更新した。好調な企業収益を背景としたデジタル投資の加速や大阪・関西万博等の大型イベント、インバウンド需要の高まりといった諸要因により、インターネット広告費を中心に、マスコミ四媒体やプロモーションメディアの広告費が成長した。なかでもインターネット広告費は4兆459億円(前年比10.8%増)と成長が著しく、初めて4兆円を超えた。SNS上の縦型動画広告をはじめ、コネクテッドTV(インターネットに接続されたテレビ受像機)等の動画広告需要が高まり、市場全体の拡大に寄与した。同社が属するBS放送は衛星メディア関連(BS、CS、CATV)市場の70%強を占めており、総広告費8兆623億円のうち衛星メディア関連の広告費は1,223億円(前年は1,254億円)と、市場規模は堅調に推移している。
BS放送市場は2000年12月にBSデジタル放送がスタートしたことで本格的に立ち上がり、黎明期の2001年~2003年を除くと順調に右肩上がりで成長を続けてきた。編成の多様化により様々なジャンルの番組が増加したため多くの企業による出稿が増加し成長を後押ししている。2020年はコロナ禍の影響を受けて広告市場全体が低調に推移し、BS放送市場もマイナス成長となったが、通販市況は巣ごもり需要の増加によって好調に推移した。コロナ禍後は一時その反動が見られるものの、その後は徐々に回復している。またコロナ禍後においては、これまで中止となっていたスポーツやイベントが開催されており、それに伴うBS放送の広告収入は増加している。
足元ではテレビメディアにかける広告費は減少傾向にあるが、これはインターネット広告の台頭によるものである。広告費全体では2019年にインターネット広告の構成比がテレビメディアの構成比を上回った。続く2020年から2025年にかけてもインターネット広告の成長は続いており、直近3年間で1兆円近く増加し、2025年には2020年比1.8倍の4兆円超えとなった。これにより、2025年の構成比はテレビメディアが21.8%(前年比1.1ポイント減)、インターネット広告が50.2%(同2.6ポイント増)と、その差がさらに開いている。イベント等のプロモーションメディア広告については、屋外や交通、POPで前年を上回り、「イベント・展示・映像ほか」のカテゴリーではシネアド(シネマ・アドバタイジング)で前年を上回る需要があったが、その他のカテゴリーでは前年並み、または前年を下回った。
もっとも、多くの世帯でBSデジタルチューナーが搭載された薄型テレビへの買い替えが進んだことにより、2019年度のBS放送の視聴可能世帯数の割合は、8割近くまで伸長している。さらにインターネットの情報は正確性において不安な面もあることから、内容の正確さが重要視されるテレビの情報番組からの情報収集需要があると見る。同社は質の高い情報を提供できる強みを持つうえ、地域によって普及差のある地上波放送と異なり、全国に一斉放送可能な衛星メディアであるBS放送の魅力が見直されていると弊社では考えている。さらに配信プラットフォームの拡大によって、成長が続いている動画広告市場における収益機会が拡大すると弊社では考えている。
■業績の動向
減収減益ながらアニメ・配信事業収入が大きく増加
1. 2026年8月期中間期の業績概要
2026年8月期中間期の個別業績は、売上高が5,499百万円(前年同期比0.6%減)、営業利益882百万円(同26.0%減)、経常利益911百万円(同24.6%減)、中間純利益630百万円(同24.6%減)となり、連結業績は売上高が5,834百万円(同0.9%減)、営業利益849百万円(同26.7%減)、経常利益876百万円(同25.3%減)、親会社株主に帰属する中間純利益596百万円(同25.7%減)となった。いずれも減収減益での着地となる。
個別業績では、売上面は主力のタイム収入において引き続き公営競技が好調だったが、ショッピングカテゴリーが伸び悩み同3.4%減となったほか、スポット収入が純広告スポットで増加基調を維持したものの、通販スポットにおいて苦戦し、同3.8%の減収となった。一方でその他部門は同34.6%増と大きく伸びた。アニメ製作委員会からの出資配当収入が好調だったほか、「BS11+」等の配信事業収入の堅調が要因である。利益面は、中間期時点で各段階利益が前年同期比で大きくマイナスとなったが、2026年8月期は放送事業収入最大化やその他事業の収益拡大に向け、既存コンテンツの強化や新規コンテンツの開発、良質なアニメコンテンツの確保に注力するほか、宣伝活動を強化していることが要因である。なお、期初予想比に対しては想定どおりの水準で着地している。連結業績については、出版子会社の減収があったが、予想比の減収幅は個別業績並み、利益面ではやや上回った。
2. 売上区分別の状況(個別)
売上高(個別)全体の70.5%を占めるタイム収入は、3,875百万円(前年同期比3.4%減)とわずかに減収となった。期初予想(4,091百万円)比では5.3%減であった。一定の視聴者層から根強い人気がある競馬中継等の公営競技に関するセールスが引き続き好調だった一方、ショッピングカテゴリーの売上が伸び悩んだ。新規スポンサーの開拓や休眠スポンサーへのアプローチ強化を進めたものの、ショッピングカテゴリーをカバーするには至らなかった。売上高全体の19.4%を占めるスポット収入は同3.8%の減収だった。予想(1,139百万円)比では6.3%減となった。新規取引開拓に注力した純広告スポットで、大口顧客の獲得に成功したこと等により増加基調を維持したものの、通販スポットの売上減が響いた。通販スポットについては、スポンサーの購買層と重なる視聴者を持つドラマゾーンの番組編成を充実させる等、スポンサーに訴求しており、こうした取り組みの成果が現れるまでには、一定期間を要するものと見ている。これらの放送事業収入が伸び悩んだ一方で、その他の収入は同34.6%増の556百万円と大きく伸びた。予想(520百万円)比でも7.0%増を確保し、全体に占める比率は10.1%(同2.6ポイント増)に上昇した。アニメ製作委員会からの出資配当収入の増加に加え、オリジナル配信プラットフォーム「BS11+」やTVer等の配信事業が堅調に推移した。アニメ番組については、獲得競争が激化している中でも、作品のポテンシャルを見極めた積極的な出資が奏功した。重点施策に掲げる独自IPコンテンツ開発については配信事業の強化が実を結びつつある。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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