アンジェス Research Memo(4):HGF遺伝子治療用製品の売上ポテンシャルは米国だけで1千億円を上回る(2)
販売パートナーとのライセンス交渉については、2026年4月以降本格的に開始し、可能であれば2026年内に契約締結まで行いたい考えだ。当初は米国での臨床試験に関する論文の詳細版(2026年1月発表)をもってライセンス活動を本格化させる予定であったが、3月に株主総会を挟むことやBLA申請書類の内容もある程度まとめたうえで相手先と交渉したほうが効率的と考えたためだ。候補企業としては10社程度あったが、最終的には疾患が重なるケースの多い糖尿病治療薬の大手2社と、循環器領域で豊富な実績を持つ大手2社の4社に絞って交渉を進める予定で、米国専門医の協力も得ながら契約締結を目指す。交渉期間としては半年程度を想定している。契約締結に成功した場合は、契約一時金、マイルストーン収入、上市後の販売に関わるロイヤリティ収入を得られることになる。
契約一時金やマイルストーン収入については、ピーク時売上高を基に一定率を乗じて算出するケースが多い。HGF遺伝子治療用製品の市場規模については、米国だけで少なくとも1千億円を超える規模になると弊社では試算している。米国での対象患者数は調査会社の調べで約50万人と見られており(日本では5千人〜2万人)、このうち約1割程度の5万人が使用し、これに国内で設定されていた薬価(約61万円/1瓶(4mg))×4回を掛け合わせた。年間5万人分の治療薬を供給するため、原薬の調達量拡大に向けた検討もしているようだ。なお、血行再建術による治療コストと同程度になると仮定すれば、さらに4倍以上の規模になるとの見方もある。米国で上市されれば日本や欧州にも展開し、世界規模ではさらに大きなポテンシャルを持つことになり、同社の業績も飛躍的に成長するものと期待される。
慢性椎間板性腰痛症の第2相臨床試験結果は2027年末頃の発表を想定
2. NF-κBデコイオリゴDNA
NF-κBデコイオリゴDNAは、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬品」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を惹起する転写因子と呼ばれるタンパク質(NF-κB)に対する特異的な阻害剤である。NF-κBが遺伝子の特定のDNA配列領域に結合し、スイッチが入ることで痛みなどの炎症の原因であるタンパク質が生成されるが、NF-κBデコイオリゴDNAを細胞内に入れることで、炎症を引き起こすタンパク質を生成する遺伝子領域とNF-κBが結合しにくくなり、炎症の原因であるタンパク質の生成を抑制する。
NF-κBデコイオリゴDNAの国内第2相臨床試験は、2023年3月に塩野義製薬との協力に関する契約(臨床試験費用の一部を負担)を締結し、同年10月から慢性椎間板性腰痛症※を対象に開始した。予定症例数を92例とし、最初の2例で最大投与量20mgの安全性試験を実施し、その後に10mg、20mg、プラセボの3群(各30例、単回投与)に分類した比較試験を実施している。観察期間は12ヶ月で、有効性については「痛み」の指標であるNRSスコアの変化で評価する。現在、20mg投与群の被験者登録が進んでおり、登録完了時期は2026年後半となる見通しだ。当初の想定よりも若干遅れ気味となっているが、できるだけ良好な結果が得られるよう被験者の選定を精緻に行っているためだ。このため、臨床試験結果の発表は最短で2027年末頃になると想定される。良好な結果が得られた場合、ライセンスアウトする意向だが、塩野義製薬との協議次第となる。
※ 慢性椎間板性腰痛症とは、3ヶ月以上痛みが持続し、椎間板が原因で起こる腰痛症を指す。慢性腰痛症の約40%を占めるとされている。臨床試験対象者は、18~75歳で腰痛のNRSスコア(自己申告による痛みの指標)が臀部痛や下肢痛のNRSスコアよりも大きい。腰痛に対する保存的治療で効果が不十分な患者で、かつスクリーニング時点、及び投与実施日と前日のNRSスコアが4~9の患者(中等度から強い痛み)としている。また、複数個所に痛みを持つ患者は除外している。
国内の臨床試験に先駆けて米国で2018年より実施した後期第1相臨床試験(プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験、25症例、観察期間50週)の結果については、2025年5月に脊椎疾患専門の学術誌「The Spine Journal」※で論文が発表された。安全性及び忍容性に問題がなかったほか、有効性においても投与量3群(0.3mg、3.0mg、10.0mg)のうち最大投与量群において投与後早期に腰痛が大幅軽減し、1年後には投与前と比較して痛みのスコアが平均77%軽減(プラセボ群では平均40%)したほか、同投与群に関しては治験期間を通して鎮痛薬を追加投与した症例がなく、鎮痛効果が持続していることも示唆された。詳細に見ると、同投与群のうち半数の患者については痛みがほぼ完全に消失した。また、椎間板の高さもプラセボ群では減少したのに対し、10mg投与群では増加が認められ、椎間板の形態的な改善効果も示唆される結果が得られたとしている。日本の臨床試験では米国の最大投与量を上回る20mg群の試験も行っていることから、好結果を得られる可能性が高いと弊社では見ている。
※ 「The Spine Journal」は、北米脊椎学会が発行する脊椎外科に関する研究論文やレビュー、症例報告などを掲載する脊椎疾患分野を代表する国際的な学術誌で、各国から寄せられた質の高い論文を隔週で提供している。
国内では慢性椎間板性腰痛症の患者に対して、内服・外用薬治療や理学療法などの対症療法が一般的に行われているが、NF-κBデコイオリゴDNAは単回投与で少なくとも1年間の効果持続が見込まれるため、患者のQOL向上に貢献する。開発に成功すれば、慢性椎間板性腰痛症に使用される世界初の核酸医薬品となる可能性があり、2027年末頃に発表される臨床試験結果が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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