ベルトラ Research Memo(3):現地体験型オプショナルツアー専門予約サイト「VELTRA」を運営(2)
2. 事業概要の続き
(2) 観光IT事業
観光関連事業者のITインフラを提供するほか、子会社のリンクティビティがチケットプラットフォーム事業を展開している。
チケットプラットフォーム事業では、交通機関・観光施設チケットプラットフォームによってあらゆる交通機関や観光施設がシームレスにつながることを目指している。様々なサービスを連携するMaaSや電子チケット化を推進する動きが高まるなか、プラットフォーム基盤が拡大しており、2025年12月期末のサプライヤー数は前期比164社増の710社、販売チャネル数は同67社増の492社と順調に拡大している。
チャネルマネジャーとしてのLINKTIVITYは、顧客の様々な課題に対して、販売サイトの構築や運営・マーケティングを支援する直販ソリューション、企画商品を造成しパッケージ・バンドル販売を可能にする企画商品、クラウドによりローコストで入退場関連の機器を提供する入退場ソリューションなどのサービスを提供している。なお、チャネルマネジャーとは「海外・国内OTA、旅行会社、ホテルなど、複数の販売先に対する契約や精算などの一括管理を可能にするシステム」を指す。インバウンド市場が盛り上がるなか、同サービスの有用性やコスト面などが顧客から評価され、導入が加速している状況だ。
■業績動向
2025年12月期は営業黒字に転換、OTA事業の収益性が大幅に改善
1. 2025年12月期の業績概要
2025年12月期の連結業績は、営業収益が前期比6.4%増の4,581百万円、営業利益が105百万円(前期は175百万円の損失)、経常利益が99百万円(同298百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益が140百万円(同407百万円の損失)となった。
営業収益はOTA事業、観光IT事業ともに増収となった。とりわけ観光IT事業では、子会社であるリンクティビティが展開するチケットプラットフォームが大きく伸長した。訪日外国人数の拡大を背景に、鉄道パスや観光施設チケットなどの取扱商品を拡充し、販売チャネルを広げたことが奏功した。取扱高は市場全体の成長率を上回って拡大しており、同事業はグループの成長ドライバーとしての存在感が一段と高まったと言える。OTA事業についても海外旅行需要の回復を捉え、体験型商品の販売が堅調に推移したことが増収に寄与した。
営業費用は前期比4百万円減となった。人件費は、リンクティビティにおいて人員数が増加したものの、OTA事業での組織集約と業務効率化が進み、同31百万円減少した。広告費はマーケティング投資の最適化により同142百万円減少し、収益性改善に貢献した。取扱高の拡大に伴い、決済手数料や業務委託費などのその他費用は同169百万円増加した。
その結果、営業利益は105百万円となり、前期の175百万円の損失から黒字へ転換した。黒字化は2019年12月期以来であり、事業構造の改善と需要回復を着実に取り込んだ成果と評価されよう。収益基盤の回復が顕在化した点はポジティブである。
事業別の状況は以下のとおりである。
(1) OTA事業
OTA事業の営業収益は前期比2.2%増の3,672百万円、営業利益は同110.9%増の852百万円となった。営業収益については、訪日外国人需要の回復を背景として国内事業が堅調に推移したことに加え、法人向けサービスの拡大や高付加価値商品の販売比率上昇が増収に寄与した。特に、単価の高い体験型商品の販売強化やリピーターの増加が客単価の底上げにつながっている模様である。
コスト面については、2025年12月期は高収益体質への転換を掲げ、広告出稿の選別、マーケティングROIの改善、人員配置の最適化や業務プロセスの見直しなどを徹底し、営業費用が前期比11.6%減少した。集客効率を重視した広告運用への転換や、固定費の変動費化を含むコスト構造の見直しが奏功した。その結果、営業利益は大幅増益となり、営業利益率も前期比12.0ポイント改善した。黒字化が一過性の需要回復に依存したものではなく、収益構造そのものの改善に基づくものである点が評価される。
また、クルーズ専門サイト「VELTRAクルーズ」の立ち上げや法人向けサービスの強化、官公庁と連携した国内観光施策への参画など、新領域の開拓にも着手している。クルーズ分野では専門性の高い商品ラインナップを拡充することで顧客層の拡大を図り、法人向けでは福利厚生やインセンティブ旅行などの需要取り込みを進めている。加えて、官公庁案件への関与は安定的な取扱高の積み上げに寄与する可能性がある。従来の海外・国内アクティビティ販売に依存しない収益源の多角化を進めており、外部環境の変動に左右されにくいポートフォリオの構築が進展している。持続的に利益を創出できる事業基盤への転換が着実に進んでいると考える。
(2) 観光IT事業
観光IT事業の営業収益は前期比24.0%増の891百万円、営業損失は262百万円(前期は132百万円の損失)となった。増収の主な要因は、主力のチケットプラットフォーム事業がインバウンド需要の回復を的確に取り込み、取扱高を伸ばしたことにある。訪日客の移動・観光需要の高まりを背景として、交通・体験商品を中心に流通が拡大した。併せて、取扱商品の拡充と販売ネットワークの強化を推進した結果、サプライヤー数は前期比164社増の710社、販売チャネル数は同67社増の492社と拡大し、プラットフォームとしての厚みと送客力が一段と高まった。
商品面では、タクシーアプリ「GO」や「Tokyo City Pass」など交通周辺商材を拡充し、旅行者の移動ニーズを取り込む体制を整備した。また、韓国・中国エリアへ展開を広げるなど、日本発のプラットフォームモデルの海外展開にも着手し、将来的な成長余地の開拓を進めている。
一方で、営業損失が拡大した要因はITインフラ事業への戦略的な先行投資である。QR改札機導入支援など新領域への展開に伴い、システム開発投資、営業・開発体制の強化を目的とした人員増強などを実施したことが費用増につながった。なお、これらは中長期的な収益基盤の確立を見据えた投資であり、短期的な損益悪化は成長段階における一時的なものと捉えられる。足元では収益性よりも事業基盤の拡充を優先する局面にあり、プラットフォーム基盤の拡大とITインフラ領域の強化を並行して進めることで、将来的な事業規模の拡大と収益性の改善が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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