エルイズビー Research Memo(7):現場DXサービスの拡充により、安定的・持続的な成長モデルの確立を目指す
2. 成長戦略
L is B<145a>は2024年の上場以来、成長戦略として5つの柱を掲げている。「direct」をベースに現場DXサービスを拡充することで、安定的・持続的な成長モデルの確立を目指す。現時点では数値目標は掲げていないが、中期的には「direct」やOEMサービスの提供先の拡大・多様化、長期的には連携ソリューションやDXコンサルティングの拡大と、M&Aにより、課題解決の領域拡大を目指す成長イメージを描いている。
5つの成長戦略は、セールス面で「建設業界のさらなる開拓」「現場のある他業界への展開」の2つ、サービス面で「既存サービスの品質向上」「新サービスの開発・提供」の2つ、インベストメント面で「M&A、出資」である。
セールス面のうち「建設業界のさらなる開拓」では、ゼネコンから協力会社へ顧客を拡大する。前述のとおり、大手ゼネコンでの「direct」導入率は高いものの、建設業界での未取引先は多く開拓余地は大きい。同社は、大手ゼネコンが評価するメリットなどを、協力会社や地方の建設会社の開拓で訴求し、顧客拡大につなげる。さらに2025年12月期にBIM事業を扱うIU BIM STUDIOをグループ会社化したことで、建設業界攻略のためのサービスラインナップ拡大の準備を整えた。建設業に関する上流工程から現場での施工・メンテナンスまでを一気通貫でカバーするDXソリューションを拡充させることにより、新たな分野の顧客開拓や既存顧客へのクロスセルを通じた単価向上・継続利用を実現させる。「現場のある他業界への展開」では、建設業と同様に作業現場がある業界に「direct」を展開する。現在は、各業界の現場ニーズを掘り下げている段階である。各業界の大手企業に優先的にアプローチし、業界共通のニーズを発掘して対応を図ることで拡大を目指す。
サービス面の柱のうち「既存サービスの品質向上」では、定期的なアップデートを行い、サービスの進化を進める。既存サービスに関する顧客からの要望をサービス化することで、優位性をさらに高める。また中長期的な施策としてAIサービスの拡充を図る。既存サービスへのAI機能のアドオンのほか、AIに関するコンサルティングや新サービス開発を行い、AIを業績拡大のためのツールとして活用する考えだ。同社は2025年9月に「現場AI×direct」構想を発表し、「direct」を現場のDXプラットフォームとしてさらに進化させる方針を掲げた。その第一弾として、2025年10月に「directアシスタント(AI機能)」のベータ版をリリースした。顧客による現場でのトライアルから技術検証を重ね、AI機能の活用によるベテラン知識の体現化やナレッジ共有、業務アシスタント機能等をブラッシュアップし、正式にリリースする計画である。
「新サービスの開発・提供」では、「direct」を現場DXプラットフォームとして中心に据え、「direct」との連携サービスの開発や、他社ソリューションとの連携を推進する。2025年12月期は「Yoom」(業務自動化ツール)、「Arch」(建機・仮設材管理)、「スリーゼロ」(アルコールチェック管理)との連携を開始した。2026年12月期は「Arch」(現場のデジタル管理)や「MAMORIO Biz Assistant」(備品の所在管理)との連携が始まっている。これらは、利用顧客の声に応える形で連携を実現させるケースが多いようで、潜在需要が想定され販路拡大につながるほか、マーケットイン志向は顧客解約防止の一役を担うだろう。また「direct」の利用顧客との共同開発の事例もみられる。2026年1月に、矢作建設工業<1870>と共同開発した、建設現場の安全指示を高度化する「AIあんぜん指示ボット」を発表した。矢作建設工業が蓄積した労災事例データを「direct」に連携させ、AIが作業予定に応じて適切な労災事例を自動抽出することで注意喚起し、現場の安全向上を目指す。建設現場における課題は類似していることが多いと考えられ、引き続き作業現場に寄り添い、要望が多いものを優先してサービス開発し提供することで、顧客の評価が上がると弊社では見ている。
インベストメント面の「M&A、出資」では、目的と対象を明確化しており、積極的な投資を行う方針だ。M&Aについては同社グループの売上高、利益の拡大を目的とし、シナジーが見込めるシステム開発会社などを対象とする。2024年12月期に子会社化したシステム・エムズはインターネットサービスの開発に関して高い技術力を持ち、同社が提供するDXサービスの開発体制の拡充を目的としており、業績面への大きな貢献が予想される。また2025年12月期に子会社化したIU BIM STUDIOは、建設や工事の着工前の計画や設計領域でBIMソリューションを提供し、同社のDXソリューション事業を補完する。同社は、2026年12月期以降も連続したM&Aの実行により、長期的に売上高や利益の拡大を目指す。出資については、2025年12月期に設立したdirectX Venturesが中心となり投資事業を推進する。DXソリューション事業が手掛ける領域に近く、サービス連携や営業政策の観点から協業が見込める先や、将来的なキャピタルゲイン獲得やグループインが展望できる、50%未満のマイノリティ出資を基本とする。
一般的なSaaSサービスは、かつての急成長を見せた時期を経て、生成AIの登場によって成長鈍化とサービスや企業の選別が進む段階に入ってきている。さらに今後AI活用のさらなる浸透によって、業務やサービスの形態自体が「人の利用するサービス」から「AIエージエントによる業務代行」といった形に変容し、SaaS自体の提供するサービス範囲が縮小していく可能性が高い。そのような中で同社は、「現場DXの担い手」としての立ち位置を明確にすることで他社との差別化を図っているほか、コミュニケーションツールとしてのサービス強化の一環としてAI機能を取り込み、その活用による業務革新の方向性を明確にした。またグループとしてスタートアップ投資ビジネスに本格参入するなど、将来に向けた種蒔きも着実に進めている。このような施策によって、「顧客に選ばれるサービスベンダー」としての地位を固めている状況である。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
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