クスリのアオキHD:フード&ドラッグと調剤の融合で成長加速、2035年5月期に売上高1兆円目指す
同社は1985年のドラッグストア業態への転換以降、時代の変化に即応した変革を続けてきた。主要なビジネスモデルは、医薬品や化粧品にとどまらず、生鮮食品を含む「フード」と「調剤」を組み合わせた「フード&ドラッグ」形態である。一店舗で生活のすべてがそろう利便性と、食品スーパーを凌駕する価格優位性を両立させることで、地域のワンストップショッピング需要を確実に取り込んでいる。そのほか、店舗立地は、住宅地を中心に、顧客が通勤等で利用する生活導線上にある幹線道路や主要道路沿いなど、利便性を第一に考え、出店を進めている。さらに、品揃えの充実とともに、短時間で効率良く買物ができることを重視した店舗面積を設定し、来店頻度を高める業態開発と運営を行っている。
同社の強みは、第一に、生鮮食品を質・量ともに拡充した「フード&ドラッグ」フォーマットの確立にある。従来のドラッグストアの枠を超え、青果・精肉・鮮魚・惣菜といった生鮮食品を全店規模で導入しており、これによる来店頻度の飛躍的な向上が、利益率の高い医薬品や化粧品の販売増につながる相乗効果を生んでいる。第二に、創業の原点である「薬屋」としての専門性を活かした、高い調剤併設率と運営能力が挙げられる。調剤薬局の併設は顧客の囲い込みを強化するだけでなく、処方箋を待つ間にドラッグストア部門で買い物を促す仕組みとして機能しており、開局数の増加に伴って調剤部門の売上も着実に伸長している。第三に、ドミナント戦略と機動的なM&Aによる圧倒的な地域支配力の構築である。自社出店に加え、地場の食品スーパーを積極的に買収して自社フォーマットへ転換し、生鮮部門の熟練人材を確保することで、新規エリアにおいても短期間で競争優位性を確立する独自のノウハウを有している。
直近の業績について、2026年5月期第2四半期累計期間は売上高279,808百万円(前年同期比15.2%増)、営業利益13,494百万円(同6.7%増)と増収増益で着地した。ドラッグストア業界において、季節商材の需要増加やインバウンド需要の継続により販売が好調に推移しており、全エリアを通して販売が好調だった。商品別では、例年よりインフルエンザの流行が早く、11月度で風邪薬・マスク・体温計等の風邪関連商材が良好だったほか、ビューティー・ライフ共に猛暑・残暑影響によりシーズン商品の販売が好調だったようだ。2026年5月期通期の連結業績予想は、売上高560,000百万円(前期比11.7%増)、営業利益23,000百万円(同13.5%減)を据え置いているが、上期実績が計画を大きく超過していることから、通期目標の達成についても蓋然性は高い。特にフード部門の構成比が伸長する見込みで、物価上昇下で節約志向を強める消費者が、価格優位性のある同社へ流入する有利な市場環境も続いている。
今後の成長見通しとして、同社は2035年5月期に売上高1兆円を目指す「50周年ビジョン」を策定し、その通過点として第4次中期経営計画(2026年5月期〜2030年5月期)を推進している。第3次中期経営計画までは、フード&ドラッグへの転換、調剤併設率70%、ドミナント化への移行の3つを重点施策として実行しており、第3次中期経営計画目標売上高5,000億円を1年前倒しで達成した。
今期から始まっている第4次中期経営計画では、2030年5月期の数値目標として売上高8,000億円、営業利益440億円、出店400店舗(M&A込み)という目標を掲げ、売上高・営業利益ともに年平均成長率(CAGR)10%の継続的な成長を目指している。フード&ドラッグ+調剤の進化を方針として続ける中、成長のドライバーとなるのは、生産ノウハウの向上と収益構造の強化、M&Aの推進となる。生産ノウハウの向上では、フォーマットの大型化により、品揃えと利便性の最大化を図りつつ、フードと生鮮を合わせた売上構成比を55%~60%に伸ばしていく計画。また、生鮮PC3拠点新設と物流網再構築し、3拠点で総店舗数の約90%をカバーして生鮮食品の品質・鮮度向上、供給の安定化及び店舗運営・物流コストの低減を図る。収益構造の強化では、MDの更なる強化を行い、プライベートブランド(PB)比率10%を目指す。最後に、出店では新規出店の3割をM&Aで補完(5年間で120店舗)していく方針である。
株主還元については、第4次中期経営計画の始動に合わせて方針を抜本的に見直し、配当性向を従来の8%程度から30%へと大幅に引き上げた。2026年5月期の年間配当金は、普通配当に加え設立40周年記念配当として40円の実施を予定。今後5年間で2,000億円規模の成長投資を維持しながらも、キャッシュインの20%を安定的に株主還元へ配分するキャッシュ・アロケーションを計画しており、持続的な成長と利益還元の両立を志向している。
直近は、イオン <8267>との資本業務提携終了、岡田元也イオン会長の社外取締役辞任のリリースが発表された。イオンは、クスリのアオキホールディングスのガバナンスに対する姿勢を問題視し、流動株式比率向上への姿勢、同スタンダードへの上場区分変更、名証メインへの新規上場を申請すると決めたことなどを焦点としていた。また、投資ファンドのオアシス・マネジメントもガバナンスに対する批判を行っており、イオンがグループのツルハホールディングスと合わせて約15%のクスリのアオキ株式を保有し、香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントも11%超を保有している。一方で、クスリのアオキホールディングスの買収防衛策では、特定の株主グループの議決権割合が20%以上となる買い付けに動く場合、意向表明書の提出や取得者の詳細情報などの提供を求めるようだ。2月17日に石川県白山市で臨時株主総会が開かれるが、株主構成の動向も投資家は見守っておきたいところである。
総じて、クスリのアオキホールディングスは、生鮮食品と調剤を武器にした独自の「フード&ドラッグ」戦略により、既存の小売業態の垣根を越えた圧倒的な成長を続けている。足元の業績は想定を上回るペースで推移しており、株主還元の抜本的な強化や中長期的な1兆円企業へのロードマップは、投資家にとって魅力的なプラス要因である。今後、大型フォーマットの展開や物流網の高度化を通じてさらなる収益構造の強化が期待される同社の動向には、引き続き注目していきたい。
<NH>
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