ジェイ・エス・ビー Research Memo(8):「両利きの経営」と「社員全員の経営」により、目標達成を目指す(2)
3. 事業戦略
(1) 不動産賃貸管理事業
不動産賃貸管理事業の事業戦略では、業務改革と組織改革を最重要課題としている。そして、人間性とテクノロジーの融合、環境配慮型学生マンションの展開、リノベーション事業の確立、海外市場調査、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の組成を推進する。学生マンション事業における同社の強みである「企画・開発・提案力」「募集力」「サービス・管理力」の「三位一体」による一気通貫サポート体制を生かし、企画開発・賃貸・メンテナンス及び食事をはじめとする入居中サービスのそれぞれにおいて顧客基盤の拡大やサービス拡充を図る。そして入居者やオーナーをはじめとした社外各方面との関係性強化を通じ、持続的成長の実現を目指す。事業戦略目標の実現に向けて、企画・賃貸・メンテナンスの一連の業務において、次のような施策を推進している。
まず、企画部門では、食事付き学生マンションの積極的展開を計画する。都心エリアでは、2026年2月に完成予定の「プライムグレーヌ横浜桐畑」は、京浜急行電鉄(株)が事業主となり、同社が運営する環境配慮型木造マンションである。また、地方エリアでは、2026年3月にフルリノベーション完了予定の「学生会館 Uni E’meal 宇都宮」は、宇都宮大学(峰CP)徒歩圏内で、栃木県初進出となるフルリノベーションの食事付き学生マンションだ。このように、多角的な開発による物件展開を企画している。
賃貸部門では、UniLife契約事務センターの運用エリアの拡大、お客様サポートセンターによる対応強化などコア業務の強化や、電子契約促進などに取り組む。契約事務センターの運用では、契約書類を各店舗・支社から個別に発送していた従来の方式から、一部エリアでは契約事務センターから発送することで各店舗がコア業務に専念できる環境を整える。お客様サポートセンターによる手続き対応では、契約に際して必要な重要事項説明を、お客様サポートセンターにおいて一括で担うことで、労務環境を改善し、事務ミスをなくし、サービス品質の均一化・向上を目指す。更新契約の電子契約促進では、満期対象者の電子契約率を2024年3月期の約13%から2025年3月には約36%に拡大しており、コスト削減、業務効率化、サービス品質向上を実現している。
メンテナンス部門では、物件増加に備えた体制整備を図る。すなわち、より良いサービスを提供するため、オーナー担当と設備点検などの現場担当で業務を分業し、より質の高いサービス提供を目指す。また、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)として、現場対応業務の一部機能のアウトソーシングを実施し、専門業者との連携体制を構築する。BPOにより、社内人材がコア業務にフォーカスできる環境を強化することで、社内人員数は据え置きで、ひとり当たりが担当する物件数・戸数の増加を目指し、収益拡大に貢献する。
(2) 新規事業
新規事業の戦略目標としては、若者成長支援サービス事業モデルの確立、全国へのHR(人材)サービスの提供開始、新ブランド創出によるビジネスサイクルの補完(現在の幼児教室だけでなく、対象を小・中学生から大学卒業後まで拡大する)などを掲げる。
若者成長支援サービス事業では、日本社会の重要インフラとしての「新価値創造 学生マンション」を目指し、UniLifeでしか提供できない顧客体験価値(CX)を創出していく。多くの体験や学びの場など、他社とは一線を画す独自ソフトを提供し、社会的価値が高い人材の育成を図る。こうした新規事業分野における各取り組みと、主力の学生マンションや入居者とのつながりによって、同社グループ全体としてのシナジーを追求する。
同社グループが目指す姿は、経営理念にある「健全な若者の育成と魅力溢れる社会の実現」であり、“住居”の枠組みを超えた新たな価値を創造することである。すなわち、従来は安心・安全・快適の学生マンション、学生に寄り添ったサービスの提供にとどまっていたが、今後はソフト面での充実を図り、UniLifeでしかできない学びを提供することで他社との差別化を図り、ブランド価値を高める。
新価値創造の取り組み事例では、学生成長支援プログラム「UniLife 国内留学」として、入居者を見知らぬ地域に招待し、普段できない体験を提供する。2025年8月には京都府福知山市において、サッカー市民交流イベントにスタッフとして参加し、福知山の「変化人(へんかびと)」から「変化」の源泉や行動原理を学んだ。また、生徒と一緒に成長する『お部屋「de」バイト』サービスを2026年春より開始する予定だ。こうした取り組みは他社との差別化になり、賃料上乗せにつながる可能性もある。
以上のように、同社グループでは中期経営計画「GT02」に意欲的に取り組んでいる。同社グループの経営環境は、長期的には今後も成長機会に恵まれ、成長戦略に対する少子高齢化進展の影響も限定的であると考えられる。学生マンション市場については、4年制大学のうち特に女子学生の増加が顕著であること、国の政策サポートにより留学生も増加を続ける見通しであることなどから学生マンションの供給は不足しており、一般マンションでは提供できない「安心感」「サービス」という強みが世の中に浸透するに伴い、同市場は今後も拡大傾向を続けると予想される。
また同社グループは、学生マンション業界のパイオニアとして高い知名度や信頼を築いている。今後も学生マンション供給不足が続くと予想されるなか、成長余地は大きいと言えるだろう。弊社では、今後の事業環境変化を見据えた中期経営計画の推進により、同社グループのさらなる成長が可能であると考えており、引き続き中期経営計画の進捗状況に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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