住友林業:海外住宅・不動産事業をドライバーに再び成長局面へ
(元禄4年)に遡る。1948年に法人化され、住友グループを構成する中核企業の一社として、長い歴史とブランド力を有している。
事業内容は、注文住宅や分譲住宅の建築を中心とする住宅事業にとどまらず、木材・建材の製造販売、森林経営、海外での住宅・不動産開発など多岐にわたる。国内では戸建住宅を主軸としつつ、賃貸住宅、分譲住宅(まちづくり)、リフォーム、不動産の管理・仲介や緑化事業まで事業領域を広げており、海外では米国や豪州を中心に住宅開発事業を展開するなど、収益源のグローバル分散も進めている。
同社は自らを単なる住宅メーカーや林業会社とは位置付けず、森林経営から木材加工、木材・建材の流通、木造建築、バイオマス発電などの「木」を軸にした事業を展開しており、このバリューチェーンを「ウッドサイクル」と表現している。この
「ウッドサイクル」を回すこと、つまり、木を植えて育林し、森林のCO2吸収量を増やし、またその木材を建築物や家具に使用し長期間にわたり炭素を固定することで脱炭素社会へ貢献することを経営の重要テーマとして掲げている点に、同社の特徴がある。
このように、同社は長期的な視点で「森林」「木材」「建築」「エネルギー」の各分野のビジネスモデルを通じて、「地球環境」「人と社会」「市場経済」の3つの価値を同時に実現していく企業である。
同社の2025年12月期第3四半期累計の連結業績は、売上高1,633,880百万円(前期比9.5%増)と増収を確保した。一方で、営業利益は122,336百万円(同12.1%減)、経常利益は126,721百万円(同9.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は69,064百万円(同17.0%減)となり、利益面では前年同期を下回った。売上高は主として豪州Metricon社買収により増加した一方、米国住宅事業・米国不動産事業の市況悪化により利益が圧迫された。
米国住宅事業では、住宅ローン金利の高止まりが継続し、戸建住宅市場は引き続き厳しい環境にある。同社は住宅ローン会社との共同施策を通じ、顧客へのローン返済額の軽減などのインセンティブ施策を講じているものの、購入者の慎重姿勢は根強く、販売戸数は伸び悩んだ。また、米国不動産事業では、米国における不動産売却の遅れが発生したが、米国における住宅不足を背景に賃貸用集合住宅のリーシングは堅調である。売却条件を見極めつつ売却を進めていく方針である。一方、豪州事業は極めて好調に推移している。前期に買収したMetricon社の業績改善および連結効果による売上・利益貢献が大きく、業績を押し上げている。シナジー効果の本格的な発現は今後の課題と位置付けられるが、販売戸数の増加や単価上昇により、海外事業全体の成長ドライバーとなっている。
国内事業では、中・高価格帯商品の受注が堅調であり、地方エリアでは平屋やセミオーダー商品の「Forest Selection」による価格帯別の販売戦略が奏功し、業績向上に寄与している。都心部では引き続きフルオーダー型住宅の比率が高い傾向が続いている。
通期業績予想については、第2四半期時点で公表した数値を据え置き、売上高2,320,000百万円(前期比13.0%増)、営業利益164,000百万円(同15.7%減)、経常利益170,000百万円(同14.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益96,000百万円(同17.6%減)を見込んでいる。金利動向や市場環境といった外部要因の不確実性は残るものの、同社は現時点では想定の範囲内としており、通期計画の達成を目指す構えである。
同社の中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 2」(2025年12月期~2027年12月期)は、「脱炭素への挑戦」「稼ぐ力の向上」「グローバル展開の進化」「経営基盤の強化」「事業とESGの更なる一体化」を基本方針に掲げ、持続的価値創造を目指す構成となっている。連結売上高は2027年12月期に3兆2,200億円、経常利益2,800億円の達成を目標としており、各セグメントで戦略的施策を積み上げる方針である。
建築・不動産分野では、米国・豪州を中心とした海外事業を成長の中核とし、戸建住宅と木造に特化した集合住宅の2本柱で各地域の住宅需要に応え事業拡大を図る。
米国戸建住宅では、現在約1万1,000戸の事業規模を、将来的に2万3,000戸へ拡大する計画である。またFITP事業※を新たな成長領域として位置付け、施工効率の向上と収益性改善を図る。豪州では、Metricon社買収により確立したトップシェアを基盤に、今後は資材の共同購買、技術・部材の開発などのシナジー創出フェーズへ移行する考えである。
※FITP事業:トラスや床・壁パネルなどの設計、製造、配送、施工までを一貫して提供する「Fully Integrated Turnkey Provider事業」の略。
国内事業では、引き続き高価格帯商品の強みを活かしつつ、地方エリアで価格帯別の販売戦略を進め、安定的な収益基盤の構築を目指す。加えて、森と木の価値を最大限に活かす「ウッドサイクル」をグローバルに展開し、脱炭素社会への貢献と事業成長の両立を図る戦略である。
財務面では、ROE15%以上の維持を目標とし、同社想定の資本コスト7.4%を上回るリターン創出を重視する。株主還元については、配当性向30%以上を基本とし、下限設定を設けた安定配当を行う方針であり、成長投資と還元のバランスを意識した資本政策が示されている。今後の展開に注目したい。
<NH>
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