SANKO MARKETING FOODS:水産6次化で描く成長シナリオ、収益改善進み今期黒字転換を模索
同社は沼津魚市場での買参権をグループ内に有しており、これにより市場のセリに直接参加し、並んだ水産物を仕入れることが可能となっている。さらに豊洲市場に大卸機能を持つことで、産地と市場、そして外食・小売という出口をつなぐ流通網を形成している。産地と紐づいた形でセリそのものを開催できる立場にあることは、水産物の安定調達だけでなく、流通全体における情報優位性の確保にもつながっている。こうしたポジションがあることで、愛媛県をはじめとした自治体・産地側から声がかかるケースも出てきており、漁獲資源や産地に早期に関与できる機会が増えている。また、水産事業においては、ホテル、スーパー、高級飲食店向けといった外部販売が増加している。6次化モデルでは自社飲食店舗との内部取引が存在するが、外部販売の拡大によって販路の多様化が進んでおり、需給調整の柔軟性が高まっている。
同社の特徴となるSANKO船団は自社船を含め計4隻体制で運営され、月間漁獲高目標は約3トンとされている。漁獲量や魚種、相場にかかわらず全量買取を行う仕組みは、漁師側にとっては天候や相場変動に左右されない安定収入をもたらす。一方で自然条件次第では漁獲量が1トン程度にとどまるケースも想定されるが、単価変動も含めて会社側はこれを大きなデメリットとは捉えていない。豊洲の大卸や浜松の仲卸といったグループ内流通網を通じ、供給調整や販売先の分散が可能であるためである。漁師の高齢化や担い手不足が進むなか、「漁師をなりたい職業にする」という理念を掲げ、一次産業の持続性を確保する姿勢は、中長期的には調達安定性の確保という経済合理性にもつながる。
一方で、コスト先行型の事業構造となる。一次産業側では漁船維持費や人件費が発生し、加工段階でも加工場の設備費・人件費が必要となる。こうしたコストは初期段階では収益を圧迫するが、会社側は現在64店舗体制の飲食事業によって本社機能をカバーしつつ、水産事業については中長期での自走を目指す構えである。すなわち、短期的には飲食が屋台骨を支え、将来的には水産事業が収益ドライバーへ転換していく設計と読み取れる。
水産市場を取り巻く環境は、資源量の減少、気候変動、漁業従事者の減少、経済要因、消費構造の変化といった複合要因により、国内漁獲量が長期的に減少傾向にある。会社側も漁獲量が大きく回復する局面は想定しておらず、むしろ減少前提での事業設計が必要との認識を示している。排他的経済水域の設定や国際条約の影響により、かつてのように海外沿岸まで漁獲に行くモデルは成り立ちにくくなっており、各国が資源管理を強化する流れは今後も続く見通しである。そのなかで、作る漁業(養殖)や資源管理型の漁業が相対的に伸びると見られており、同社が産地と早期に関係を構築する戦略は、リスクであると同時に機会にもなり得る。
2025年11月14日に発表された第1四半期決算は、売上高2,445百万円(前年同期比3.6%増)、営業損益174百万円の赤字での着地となった。収益改善は依然として途上段階にある。ただ、今期は9店舗出店予定のうち、すでに第1四半期で3店舗の出店に加えて、第2四半期中に7店舗(2025年12月31日時点)を出店し、計画を上回る出店数を達成している。出店戦略においてはスピードよりも収益性と立地の見極めを重視しているようだ。通期計画は売上高11,160百万円(前期比15.3%増)、営業利益17百万円の黒字転換を見込んでいる。
中期的な成長イメージとしては、コロナ禍で閉店を進めてきた飲食事業が安定運営フェーズに入り、水産事業が徐々に自走していく構図が描かれている。加えて、ホテル清掃事業や海外人材(ベトナム・インドネシア)供給といった周辺事業も着実に拡大しており、人手不足に悩む飲食業界へのソリューション提供という側面から、グループ外への展開余地も広がっている。今後3年で最も経営リソースを投下する領域としては、水産を軸にしつつも、加工・卸・飲食を含めたバランス型の投資が想定される。
財務面では、自己資本比率が2025年6月期末で13%、進行期第1四半期は19.6%と低水準にある点が引き続き課題である。会社側もこの点は認識しており、営業キャッシュフローの改善や有利子負債管理を通じて、来期以降に改善の兆しを示すことが重要となる。自己資本比率の水準そのものよりも、事業が黒字化し、キャッシュ創出力が回復するかどうかが評価の分岐点となろう。
株主還元については株主優待を導入しているが、当面は事業基盤の強化と財務改善が優先される局面とみられる。過去には「金の蔵」「東方見聞録」といった居酒屋チェーンのイメージが先行していたが、現在は水産を軸に、飲食・加工・流通・人材サービスまで含めた複合事業体へと変貌しつつある点は、改めて認識されるべきであろう。
<NH>
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