クオールHD Research Memo(8):2030年度に売上5,000億円、営業利益350億円、ROE15%目指す
2. 中期経営計画
同社は2025年11月に2031年3月期までの中期経営計画の骨子を発表した(詳細は2026年2月に発表予定)。不確実な市場環境が続くなかでも、グループの「総合力」を結集して健康・医療の社会課題解決(質の高い医療サービスの提供)と経済的価値追及(収益成長)を両立し、2030年のありたい姿「すべての人に、医療の安心を届ける存在へ」の実現と企業価値の向上を目指す。
2031年3月期の経営数値目標として、連結売上高5,000億円、営業利益350億円、ROE15%を掲げた。売上高は年平均成長率で11%程度を見込み、2025年3月期比で1.9倍に、営業利益は同2.6倍に拡大することになる。ROEについては2025年3月期の9.4%から6ポイント程度引き上げる目標で、収益性の向上に加えて資本効率の向上(株主還元を含む)も意識した経営を進める。
成長シナリオは、既存事業の拡大と今後実施する大規模投資(大型M&A、製品導入など)による効果の2つに分けて計画している。5年間で売上高を2,200億円、営業利益を195億円上積みすることになるが、このうち既存事業の拡大で売上高を420億円、営業利益を66億円上積みし、大規模投資によって売上高1,780億円、営業利益130億円を創出する。また、各事業においては「深化(これまでの成長戦略をより深掘りし追求する)」と「進化(セグメント間シナジーの最大化、幅広い接点を有する強みを新たな成長ドライバーに育てる)」に取り組むことで成長を目指す。事業セグメント別の業績目標については、2026年2月に発表予定の詳細版で開示する予定だ。
(1) 薬局事業
薬局事業では、店舗数で1,000店舗超を当面の目標とし、売上高は年率2%成長を計画している。「深化」の取り組みとして専門性、利便性、収益性の向上を図る。より質の高い医療サービスを提供すべく、薬局の機能として健康相談やセルフメディケーション、未病予防など健康を支援する機能を拡充するほか、在宅調剤の取り組みも引き続き強化する。利便性向上の取り組みとしては、QOLお薬便やオンライン薬局などITを活用したサービスの提供や、LINE公式アカウントを活用したサービス提供、再来店施策の強化などに取り組むほか、パートナー企業との連携を強化する。収益性向上施策としては、DXの推進(電子薬歴クラウド利用等)や業務フロー改革(処方箋遠隔入力支援、オンライン服薬指導支援など)により店舗の生産性向上を目指す。
一方、「進化」の取り組みとして薬局の機能集約・分担化(対人業務に専念できる環境整備)を進めるほか、新規事業として集約した自社機能を地域薬局向けにサービス化して提供し(アポプラスキャリアと連携して拡販)、必要に応じM&Aによって機能やサービスの強化を図る。
(2) BPO事業
BPO事業では、M&Aも活用しながら売上規模を2025年3月期比で1.5倍に拡大する。また、CSO事業におけるCMRを1,000名に増員することを目標としている。「深化」の取り組みとして、CSO事業ではオンコロジーなど成長領域への営業拡大、人材紹介会社との業務提携やM&Aの実施により人的リソースの拡充を図り、競争力を強化する。CRO事業では、M&A・アライアンスによって先進技術を獲得し、食品分野での新規顧客開拓を推進する。紹介派遣事業では、薬剤師のスポット展開のシーズを掘り起こしていくほか、顕在層及び潜在層の集客拡大に取り組むことで持続可能な成長力を醸成する。
「進化」の取り組みとしては、グループ横断での重点顧客選定により営業の効率化を図るほか、顧客ごとの営業方針を策定し、成約件数の拡大につなげていく。また、地域医療支援の強化・拡大に向けたサービスを薬局事業と連携し推進する。そのほか、自社薬局や地域医療との関係を生かして製薬企業向けに医療機関のニーズ情報の提供や、マーケティング支援等のサービス展開を図る。
(3) 製薬事業
製薬事業での「深化」の取り組みとして、既存領域ではAG製品のラインナップ強化、製造ラインの生産性向上などに取り組み、新規領域ではリポジショニングやオーファンドラッグ、新規剤形などの開発に注力するほか、医療機器や医療アプリなど患者目線での製品開発を進める。
「進化」の取り組みとしては、研究開発、生産、流通、販売等をグループ間で連携・協力しながらバリューチェーンの最適化を図るほか、薬局事業を通じて患者や医療関係者のニーズを収集し、医薬品開発に生かしていく。
2031年3月期に温室効果ガス排出量を2024年3月期比42%削減(スコープ1+2)
3. SDGsの取り組み
同社グループは人々の暮らしや健康を守る医療サービスを提供する企業として、気候変動や環境汚染がグループの事業に大きな影響を及ぼしうる社会課題であり、これらに積極的に取り組むことが重要との認識のもと、2025年3月に「クオールグループ環境方針」を定め、気候変動や環境汚染に対する取り組みを推進してきた。今回、その取り組みをさらに加速させるために、新たに温室効果ガス排出削減目標を設定し、Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)※1の認証を取得した。具体的には、2024年3月期を基準に2031年3月期の温室効果ガス排出量をスコープ1+2※2で42%、スコープ3※2で25%、それぞれ削減することを目標として掲げた。
※1 SBTiは、CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所、世界自然保護基金の4つの機関により共同運営されている。パリ協定の目指す世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して1.5℃以下に抑えるという目標に向け、企業に対して科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を設定することを推進している。
※2 スコープ1は自社での燃料の使用や工業プロセスによる直接排出、スコープ2は自社が購入した電気、熱の使用に伴う間接排出、スコープ3はスコープ1、2以外のサプライチェーンにおける間接排出。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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