日精鉱 Research Memo(4):売上高は前年同期比91.9%増、営業利益は419.7%増
1. 2026年3月期中間期の業績動向
日本精鉱<5729>の2026年3月期中間期の連結業績は、主力であるアンチモン事業が急伸した結果、大幅な増収増益を確保した。売上高は前年同期比91.9%増の20,839百万円、営業利益は同419.7%増の4,802百万円、経常利益は同438.9%増の4,755百万円、親会社株主に帰属する中間純利益は同445.9%増の3,301百万円となった。いずれの指標も前年同期を大きく上回り、収益性・資本効率ともに顕著な改善を示している。業績拡大の要因としては、国内外におけるアンチモン製品の需要回復と、高付加価値粉末の出荷増加に加え、原材料調達の最適化及び為替効果が挙げられる。また、グループ内連携強化による生産効率の向上と固定費吸収の進展も利益拡大に寄与した。
2. セグメント別の業績動向
(1) アンチモン事業
2026年3月期中間期におけるアンチモン事業は、原料価格の高騰を背景に収益が急拡大した。原料であり製品販売価格の指標ともなるアンチモン地金相場は、主産地である中国において需給がひっ迫したことから急騰した。背景には、国内外での鉱石不足や環境監査の強化による地金生産の減少に加え、太陽光パネル関連など新興需要の増加がある。さらに2024年9月、中国当局がアンチモン地金の輸出管理措置を発表し、同12月には対米輸出の原則禁止を公表したことが、市場心理を刺激して一段の価格上昇をもたらした。結果として、2026年3月期第1四半期末にかけて国際相場は急伸し、中間期の平均価格はトン当たり約57,930ドルと前年同期比約173%上昇(円建てでは約161%上昇)した。ただし第2四半期単独では需要の一服感から調整局面を迎え、ドル建てで約4%、円建てで約2%の下落となった。
販売面では、製造業全般の生産活動がやや停滞し、さらに中国などからのOEM調達が制約を受けたことから、販売数量は前年同期比16.9%減の2,035トンとなった。しかし、販売単価の大幅上昇が数量減を大きく上回り、売上高は同173.8%増の15,936百万円、セグメント利益は同754.3%増の4,644百万円と、いずれも過去最高水準に達した。利益拡大の要因としては、相場高騰による価格転嫁効果に加え、生産効率の改善や在庫評価益の寄与もみられる。市況の変動要因が多いなかで、原料調達と販売契約の両面で柔軟な価格対応力を発揮し、変動リスクを収益機会へ転換した。今後は、アンチモン地金の供給構造変化を踏まえ、長期的な資源安定化戦略と高付加価値品シフトの両立が収益持続性のカギとなる見通しである。
(2) 金属粉末事業
2026年3月期中間期の金属粉末事業は、原料価格の下落と自動車関連需要の低迷により減収減益となった。主原料である銅の国内建値は、当中間期平均でトン当たり約146.1万円と前年同期比2.4%下落。資源市況は比較的安定して推移したものの、需給バランスの緩みや為替の影響からやや軟調な展開となった。もっとも、2026年3月期中間期においては市場の二極化が鮮明となった。販売ではハイエンドスマートフォンやAIサーバー向けなど先端領域では堅調に推移した一方、ローエンドスマートフォンや自動車関連分野では競争激化により鈍化した。結果として電子部品向け金属粉末の販売数量は同23.6%減の435トンにとどまり、粉末冶金向け粉末も自動車部品需要の低迷を受け同17.5%減の618トンとなった。全体では同20.1%減(265トン)の1,053トンと、数量ベースでは約2割減の水準で推移した。この結果、同事業の売上高は同2.8%減の4,883百万円、セグメント利益は同61.7%減の138百万円と大幅減益となった。操業度の低下に加え、固定費負担の増加が利益を圧迫した形である。一方、同社では生産効率向上や高付加価値製品の拡販を進めており、つくば工場の増築を完了させるなど、次世代電子材料向け需要への備えを強化している。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期中間期末の資産合計は24,337百万円(前期末比3,399百万円増)となった。主因はアンチモン事業の大幅増収による流動資産の拡大であり、特に現金及び預金が3,500百万円(同1,371百万円増)へ増加した。営業活動によるキャッシュフローが堅調で、さらなる資金繰りの安定化が進んだことを示す。
固定資産は6,232百万円(同267百万円増)と小幅な増加にとどまった。中瀬製錬所やつくば工場の生産設備更新など、成長投資の継続を反映している。負債合計は9,398百万円(同394百万円増)となったものの、有利子負債は2,894百万円(同797百万円減)と、実質的な財務リスクは低下した。純資産は11,932百万円から14,938百万円へと増加し(同3,005百万円増)、自己資本比率は57.0%から61.4%へ改善した。内部留保の積み上げにより、財務体質の強化が着実に進展している。
経営効率指標では、売上高営業利益率は14.3%から23.0%と同8.7ポイント上昇し、収益性は飛躍的に向上した。これは主にアンチモン事業における販売価格上昇と生産効率の改善が寄与したものであり、同社の収益構造が一段と高付加価値型へ転換していることを示唆する。
総じて、財務健全性と収益性の両面でバランスの取れた改善がみられる。自己資本比率6割超という堅固な財務基盤のもと、営業利益率2割超を実現しており、資本効率と安全性を両立した理想的な財務体制に近づいている。今後は増加した現金及び預金を成長投資・株主還元にどう振り向けるかが、中長期的な企業価値向上の焦点となるであろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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