日精鉱 Research Memo(1):アンチモン化合物のトップメーカー。2026年3月期は大幅増収増益へ
1. 会社概要
日本精鉱<5729>(以下、同社)は、1935年に設立された非鉄金属メーカーであり、本社を東京都新宿区に置く。東京証券取引所(以下、東証)スタンダード市場に上場し、創業以来、アンチモンの精錬及び化合物の製造・販売を主力として発展してきた。我が国におけるアンチモン化合物の先駆的企業として、難燃助剤、触媒、金属粉末など多様な産業分野に製品を供給している。事業は「アンチモン事業」「金属粉末事業」「その他事業」の3つに区分される。アンチモン事業では、プラスチック用難燃助剤やポリエステル重合触媒として用いられる三酸化アンチモンを中心に、硫化アンチモンやアンチモン酸ソーダなどを製造・販売し、自動車・電子部品・半導体など幅広い分野を支えている。金属粉末事業は子会社の日本アトマイズ加工(株)が担い、水アトマイズ法による銅粉・鉄粉系合金などを電子部品や粉末冶金向けに供給し、高精度化に貢献している。その他事業では、金属硫化物(硫化スズ・硫化銅など)の製造販売や不動産賃貸、アグリ事業を行い、安定収益を確保している。
同社は兵庫県中瀬鉱山で産出される金・銀・アンチモン鉱石の製錬を目的に創業し、戦後に国内有数のアンチモン製錬一貫メーカーとして地位を確立した。現在はグローバルに原料を調達し、ファインマテリアルメーカーとして事業領域を拡大、グループ全体で産業基盤を支えている。
2. 2026年3月期中間期の業績概要
2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比91.9%増の20,839百万円、営業利益が同419.7%増の4,802百万円と大幅な増収増益を達成し、過去最高水準となった。主力のアンチモン事業が急伸し、金属粉末事業の減益を補った。アンチモン事業では、中国のアンチモン輸出管理措置と中国での鉱石不足や環境規制強化により需給がひっ迫し、アンチモン地金の平均価格が1トン当たり約57,930ドルと同約173%上昇した。販売数量は減少したものの、価格転嫁効果や在庫評価益により売上高が同173.8%増の15,936百万円、セグメント利益が同754.3%増の4,644百万円を計上した。一方、金属粉末事業は銅の国内建値の下落と自動車関連需要の低迷で販売数量が減少し、売上高4,883百万円(同2.8%減)、セグメント利益138百万円(同61.7%減)と苦戦した。ただし、AIサーバー向けなど先端分野は堅調で、つくば工場の増設など生産効率向上を進めている。
3. 2026年3月期通期の業績見通し
2026年3月期の連結業績は、売上・利益ともに過去最高を更新する見通しである。売上高は前期比59.7%増の40,200百万円、営業利益は同47.3%増の5,300百万円、経常利益は同47.3%増の5,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同44.5%増の3,550百万円を見込んでおり、中間期終了時点の進捗率からみても計画達成の確度は高い。業績前提として、アンチモン地金は第1四半期をピークに軟化し下期は平均39,000ドル/トン、銅建値は平均1,480円/kg(為替145円/ドル)を想定する。相場は安定化傾向にあるが、販売価格の高止まりと在庫評価益の残存効果により収益を支える見通しである。
セグメント別では、アンチモン事業の売上高は前期比86.6%増の29,500百万円、セグメント利益は同56.9%増の4,800百万円を見込む。価格上昇と生産効率の改善により過去最高益更新が予想され、中瀬製錬所の電熱炉転換投資を通じた省エネ・環境対応も進む。一方、金属粉末事業は売上高同6.6%増の9,950百万円、セグメント利益は同14.5%増の430百万円を見込んでいる。中間期の減収減益を下期の需要回復で補い、AIサーバー・EV向け高機能粉末が成長ドライバーとなる。全体として営業利益率13%台を維持し、収益構造の安定化と中期的成長の両立を図る見通しである。
4. 中長期成長戦略
同社の中期成長戦略は、「第2の創生(創立100周年)に向けた基盤づくりのための挑戦と変革」をテーマに、基本理念・長期ビジョン・中期経営戦略の三層構造で策定されている。環境・安全・成長を重視する理念のもと、2035年に向けて「高付加価値化」「人的資本強化」「社会・環境への貢献」を柱とし、ROE10%以上の持続的達成を長期目標に掲げる。中期経営戦略の基本方針は、(1) グループ連携のさらなる強化(ガバナンス・人材・情報基盤の統合)、(2) 既存事業の競争力強化とグローバル展開への挑戦(アンチモンの高付加価値化・金属粉末の技術高度化)、(3) 最適な事業ポートフォリオの構築と新規事業の創出(技術開発部を中心に電池材料など金属硫化物の新製品開発・リサイクル分野への展開)、(4) 人的資本の充実とESGへの取り組み(働き方改革と環境対応KPIの設定)の4本柱で構成される。
また、アンチモン相場変動による業績のボラティリティを踏まえ、中期経営戦略3年間の平均値をKPIとする点が特徴である。営業利益は前中期経営計画の平均17億円から30億円へ拡大、ROEは10%以上を安定的に維持する見通しである。設備投資は前中期経営計画の約2倍にあたる51億円を計画し、アンチモン事業では電熱炉転換やDX、金属粉末事業では高機能粉末量産・環境対応設備導入を推進する。自己資本を活用しつつ、財務健全性を維持した持続的成長を目指している。
■Key Points
・アンチモン化合物の国内トップメーカー
・2026年3月期はアンチモン事業がけん引し売上高、利益ともに大幅増収増益へ
・ニッチトップからグローバルニッチトップへの進化に期待
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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