CRI・MW Research Memo(7):「ADXAT」と「CRI Glassco」がモビリティの成長をけん引
2. コア事業の成長戦略
(1) モビリティ事業
モビリティ事業では、音声製品「ADXAT」及び「CRI SOLIDAS」と映像製品「CRI Glassco」を中心に、M&Aや業務受託による成長も想定する。音声製品の成長戦略では、日系メーカーだけでなく海外メーカーとも関係を構築し、2030年までに四輪車の世界生産台数の20%強(2,000万台)への採用を目指す(年間の採用台数は3倍強を目標とする)。また、機能展開先については、現在はメータークラスタが中心だが、今後は車両接近通報装置やETCなどへと拡張するとともに、カーオーディオや統合コックピットへの「CRI SOLIDAS」の採用も推進し、車両1台当たりの収入増加を目指す(1台当たり収入1.5倍増を目標とする)。
グラフィック製品の成長戦略では、「CRI ADXAT」で構築してきた大手メーカーなどとの関係を糸口に、「CRI Glassco」でメーターグラフィック分野へ進出する。低スペックマイコンでも高品質なグラフィックを提供できる強みを生かし、まずは二輪市場を中心に展開し、2030年までは二輪・四輪車の世界生産台数の10%(1,500万台)への採用を目指す。特に、世界最大の二輪市場であるインド二輪市場では、萩原エレクトロニクスのインド海外子会社と連携して様々なメーカーでの採用を進め、市場シェアで約50%(1,000万台)の採用を目指す。このため、注目度の高い南西アジア最大級の業界専門展示会「electronica India 2025」に既に出展した。
(2) ゲーム事業
世界のゲームコンテンツ市場は、日本の12倍、30兆円以上の規模でありながら、これまで成長にあまりベットしてきたとは言いづらい状況だったが、今後は国内、海外ともに一層の成長戦略を展開する。国内ミドルウェア事業は同社の主力事業にして利益の稼ぎ頭であるため、自社の新製品/新機能や他社製品との連携による既存ミドルウェアの機能強化、製品ラインナップ拡充、一括許諾の推進により、シェアの拡大を目指す。また、「CRI LipSync」などの新製品を市場に継続して投入することで、「CRIWARE」ブランドの市場浸透を推進する。
海外ミドルウェア事業(中国)では、顧客とのつながりをタイトル単位から会社単位に引き上げる計画である。これにより、顧客のニーズに寄り添うアカウント営業体制を強化し、同社の技術力やサービス品質を再認識させることで売上の拡大を目指す(売上高で2倍を目標とする)。また、HarmonyOSの拡大をバネに、「CRIWARE」許諾ビジネスの拡大を図る(売上高で1.5倍を目標とする)。海外ミドルウェア事業(欧米)では、GDC(Game Developers Conference)など世界的なゲームイベントへの出展を通じて「CRIWARE」の認知度向上を図るとともに、現地販売代理店を2~3社に増やして市場での影響力を拡大、2028年までに米国子会社の立ち上げも視野に入れる。また、「Destiny」や「Hitman」シリーズなどビッグタイトルへの導入実績から、「CRI Sofdec」や「CRI Clovis」などの映像関連ミドルウェアをドアノック商材に拡販を進める。これにより、2030年度に中国で6億円、欧米で4億円の売上高を目指す。
音響制作事業では、技術力やサービス品質を背景に業界内での評判を高め、既存顧客からのリピートオーダーを確実に取り込むとともに、新規顧客の取り込みを図る。また、CRI Chinaと緊密に連携し、需要旺盛な中国現地企業の「日本人声優によるボイス収録需要」の取り込みを強化する。2030年度には6億円の売上高を目指す。
(3) オンラインコミュニケーション事業
オンラインコミュニケーション事業では、新製品の検討を進めることも考えられるが、当面は「CRI TeleXus」とクラウドソリューションを2本柱に成長戦略を展開していく。
「CRI TeleXus」については、オンラインコミュニケーションミドルウェアであるがゆえ、コロナ禍収束後にメタバースブームが縮小したことで出足が鈍かったが、大人数同時会話や立体音響・空間演出、AI通訳の進歩により没入感や臨場感を再現できるようになり、将来性は高まった。ゲーム向けでは、「CRIWARE」で培った音声や映像技術に対する実績を背景に、ボイスチャットの採用実績を積み上げるとともに、新機能リリースにより他のボイスチャットとの差別化を図り、ユーザーの利用を増やして売上増加を目指す。アプリケーションの動作を阻害しない低遅延、低負荷が評価され、すでにVR対戦アクションゲーム「ブレイゼンブレイズ(2024年7月リリース)」などに採用されている。非ゲーム向けでは、特に「モビリティ」「イベント」「教育」の3市場に注力、M&Aやアライアンスを駆使して新市場の開拓も推進する。低遅延に加えて空間オーディオや多人数ボイスチャットが評価され、3Dバーチャルオフィスサービス「NTT XR Lounge」などに採用された。2030年度にゲーム向けで3億円、非ゲーム向けで7億円の売上高を目指す。
クラウドソリューション事業では、様々な機器がAI化し、パーソナライズされたコミュニケーションに進化すると予測されている。複雑化するニーズに対して、オンライン上でのリアルタイム処理技術に動画や画像の軽量化技術などを組み合わることで、顧客に最適なソリューションを提供する計画である。このため、2026年3月までは研究開発期間と定め、リアルタイム処理技術と動画及び静止画に関する処理技術を中核にした新製品の開発に注力する予定である。2030年度に10億円の売上高を目指す。
5年間で成長投資は約31億円を予定
3. 基本方針
同社は中期経営計画策定に合わせて、サステナビリティ、人財、M&A/アライアンス、株主還元、キャッシュアロケーションに関して基本方針を公表した。とりわけ新技術や新製品の開発にかかる時間の短縮や、それを実現するための社内リソース不足を補うため、M&A/アライアンスを積極的に活用する方針である。このため、中期計画の達成状況に応じて、2030年度までに15億円程度のM&A投資を予定しており、特にモビリティ事業では、音声や映像周りの技術や専門技術者の取り込みを強化する考えである。
キャッシュアロケーション及び財務方針として、2030年度の目標達成に向け、成長のための投資(研究開発投資、海外投資、M&A投資など)と安定経営に資金を配分し、余剰資金は継続的に株主へ還元していく。財務方針としては、手元資金を売上高の4ヶ月分を目安に保有(現状の手元資金と同水準の30億円)し、財務健全性を考慮して自己資本比率は65%以上を維持する。これに従い、2030年度までのキャッシュインを約44億円と想定、キャッシュアウトを成長投資約31億円、株主還元約13億円、手元資金約30億円とする計画である。また、成長投資の内訳としては、新製品や新技術への研究開発投資が約10億円、海外展開推進への投資や事業設備、事務所拡張への投資が約6億円、事業領域拡大やシナジー効果期待のM&A投資が約15億円を予定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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