リアルゲイト Research Memo(4):渋谷区・港区・目黒区の小規模再生オフィスに特化して高稼働率を実現(2)
5. 業務プロセス:企画・設計から運営まで一気通貫で内製化
同社では、物件ごとにプロジェクトが組成され、プロジェクトリーダーの下に、企画営業(宅建士)、一級建築士、1級建築施工管理技士、デザイナー、営業事務などのメンバーが協力して業務にあたる。プロジェクトでは、企画・デザイン、設計・建設、リーシング、運営を一気通貫で行う。特に、同社では「運営」業務を重視している。入退去理由やクレーム内容等入居者の意見を分析することが良い企画の源泉となるため、早期リースアップと高単価の実現にも寄与している。優秀な人材の確保・定着のため継続的なベースアップを行っている。
6. 収益構造:先行投資・費用をリーシング稼働率の向上により回収していく
主体となるビジネスモデルであるMLでは、契約当初からビルオーナーへの賃料の支払いが発生するものの、入居企業が決まるまでには時間がかかるため空室時の損失が発生する。典型例(渋谷区延床面積400坪の築古ビル、以下同様)では、竣工から6ヶ月で損益分岐点に達し、8ヶ月でリースアップする。リースアップ後は毎月の粗利は250万円(エンド賃料の25%)が得られる。初期(6ヶ月)の損失は先行投資と考えられ、月次黒字化後は投資を回収し、10年~20年をかけて収益を得ていくという形である。「保有」に関しては、先行投資がさらに大きくなり、物件価格を除いても、物件取得費用(税金、仲介料など)が3,000万円かかる。また、リノベーション関連の工事・設備費が自己負担になる。一方で、リースアップした際の月額の粗利は月650万円(エンド賃料の65%)と相対的に大きくなる。「保有」は収益性が高いビジネスモデルではあるが、築古ビルでも数億円から数十億円の価格となり、自己資本比率を低下させるため、一時期に取り組める棟数には限界がある。同社では、資金効率を最大化するために、リースアップ後一定期間保有をした物件は売却してML・PMの受託につなげている。PMは、先行投資・費用が発生しないのが特徴である。竣工前には企画・設計・施工を担当でき、リースアップまでの各種支援も収入になる。一方、リースアップ後は月80万円(エンド賃料の8%)と粗利は相対的に低い。
7. 強み:技術力、企画・運営力により適正価格を実現
同社の強みは、「技術力、企画・運営力により、適正価格でのサービスを実現する力」である。「技術力」は、検査済証取得をはじめ、耐震補強、エレベーター新設、用途変更、増築、耐久性の向上など築古ビル特有の問題を解決し、安心・安全な物件への再生を可能にする。築古ビルには旧耐震基準の時代のものがあり、検査済証未取得のケースが多い。同社では、検査済証取得のための技術力とノウハウがあるため、他社が断念する物件にも取り組める。また「企画力」により、外観デザインの変更、屋上のスカイテラス設置、ラウンジ設置、館内アート導入などヴィンテージ物件を作り上げる多彩な共用部と洗練されたデザインのノウハウを蓄積し、活用する。「運営力」は、創業以来、PM業務やML業務を内製化し、入居テナントとのコミュニケーションを直接行ってきたことが、顧客満足度の高いサービスの源泉になっている。“適正なエンド価格を間違えないこと”も同社の強みの重要な要素である。同社では坪単価で3万円前後のエンド価格を想定し、その金額から逆算して建築・運営コスト、仕入単価を設定する。適正なエンド価格、建築コスト、減価償却費、運営諸経費などをスピーディかつ正確に見積もることで、仕入れの判断も早くなる。築古建築の古くなった部分をそのまま活用したり、敢えてコンクリートをむき出しにするなど、建築工事費低減の工夫によって適正価格での提供を実現している。
■業績動向
2025年9月期通期は営業利益目標の10億円を突破。運営物件の高稼働によりストック売上・粗利が堅調
1. 2025年9月期通期の業績概要
2025年9月期通期は、売上高が前期比23.2%増の9,791百万円、営業利益が同36.0%増の1,043百万円、経常利益が同31.3%増の827百万円、当期純利益が同47.0%増の559百万円で大幅な増収増益となった。売上高に関しては、ストック型・フロー型ともに順調に推移した。ストック型売上高は、同10.8%増の6,118百万円となった。既存運営物件は、一部で賃料の適正化・値上げも行っているなかで、2025年9月の稼働率で98.1%と安定した稼働を維持した。下期には「NEUK shirokanetakanawa(港区)」「ANYZ(港区)」が開業し事業規模が拡大した。運営中物件は65件(前期末は62件)、運営面積は104,253m2(同98,923m2)といずれも前期を上回る。フロー型売上高は、同51.3%増の3,673百万円と伸長した。これは、上期に売却が完了した2件によるものであり、これらフロー関連の物件は引渡・売却後もML・PM契約を締結しストック型売上につなげている。
売上総利益率は同0.8ポイント増の17.1%となった。売上総利益は同29.8%増の1,677百万円と伸長した。内訳としては、共通経費配賦前のストック粗利で2,040百万円、フロー粗利で636百万円である。同社では固定費(1,464百万円)をストック粗利でカバーすることで、余裕を持った経営ができている。販管費は、管理部門の人件費や本社家賃等であり、人件費の増加を主因として同20.6%増の633百万円となった。結果として、営業利益は同36.0%増の1,043百万円となり、通期計画1,000百万円を上回った。
2. 財務状況と経営指標
2025年9月期末の資産合計は前期末比5,370百万円増の21,264百万円と資産規模が拡大した。流動資産は同1,054百万円減の4,472百万円であり、販売用不動産が926百万円減少したことが主な要因である。固定資産は同6,424百万円増の16,792百万円であり、これは主に「(仮称)中目黒1丁目再生PJ」、「OMB北参道」、「OMB東麻布」、「(仮称)港区芝5丁目再生PJ」及び「(仮称)千駄ヶ谷1丁目再生PJ」の取得等による土地・建物(有形固定資産)が増加したことによる。
負債合計は同4,730百万円増の17,913百万円となった。そのうち流動負債は同1,936百万円減の3,901百万円あり、これは主に、借入金の返済により1年内返済予定の長期借入金が2,480百万円減少したこと等による。固定負債は同6,666百万円増の14,011百万円であり、これは主に、不動産取得のための新規借入により長期借入金が6,711百万円増加したこと等による。純資産合計は同639百万円増の3,351百万円であり、これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が559百万円増加したこと等による。
安全性に関する経営指標では、2026年9月期以降に向けた物件の取得を反映して、流動比率114.6%、固定長期適合率95.6%、自己資本比率は15.5%(前期末16.9%)とややレバレッジを強く効かせた数値ではあるが、適正にコントロールされた水準である。上場を契機に物件を取得するビジネスモデルに移行したが、健全な財務基盤を維持できていると言えるだろう。なお、自己資本比率に関しては2026年9月期第1四半期の物件売却で回復見込みである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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