unerry Research Memo(3):リアル空間のデータを収集・蓄積・整理・分析・活用しUX向上を実現(2)
2. 事業内容
同社は、GPSとBluetoothビーコンより取得した生活者行動ビッグデータをAI群で解析し、3つのサービスを提供先の顧客・市場別に各業界の課題解決に最適化し、4つの事業を展開している。小売・外食等を対象とする主力の「リテールDX事業」、消費財メーカー等向けの「リテールメディア事業」、不動産・自治体・官公庁等向けの「スマートシティ事業」、海外・外資・越境事業者等向けに「グローバル事業」、の4事業である。3種類のサービスは、「分析・可視化サービス」「行動変容サービス」「One to Oneサービス」である。「分析・可視化サービス」を導入サービスとして位置付け、その上位サービスとして「行動変容サービス」と「One to Oneサービス」があり、これらのクロスセルを促進する仕組みを構築している点も特徴だ。データ分析による現状把握から顧客に合わせたシステム構築まで一気通貫で提供できるサービス群を擁することで、顧客の囲い込みが可能となっている。
(1) 「分析・可視化サービス」
「分析・可視化サービス」は、同社が「Beacon Bank」に収集・蓄積した位置情報データをAIで解析し、小売事業者、商業施設運営事業者、消費財メーカー、自治体等に対してダッシュボードサービスや顧客のニーズに応じてカスタマイズした行動分析レポートを提供している。顧客は生活者行動データに基づく各種行動分析レポートを参照することによって自社のDX推進や店づくりに活用できるほか、街づくりにおいてはスマートシティの構築に活用することができる。主に小売事業者を対象に提供している「ショッパーみえーる」は、全国約4.6万店(2024年9月末時点)における来店者のリアルな行動データをAIで分析・推定することによって、商圏の把握、競合店舗とのシェア比較、来店客のデモグラフィー、細かな行動嗜好を簡単に把握できる可視化ツールである。分析機能の拡張を続けており、2024年10月には従来の個別店舗別の詳細分析だけでなく、チェーン×都道府県における分析や、任意のエリアの来店者数ランキングなど、メーカー企業の販促戦略や小売企業の地域戦略に役立つ分析機能を搭載した。主に小売事業者のマーケティング施策に関わる意思決定の際の根拠として導入されている。クラウドで提供するSaaS方式を採用しており、サービス契約期間は基本的に年間で、分析対象のエリアや業態に応じて月額課金(15万円〜130万円)としている。
「生活者行動データ可視化・分析」サービスでは、上記以外も含めたカスタマイズ性の高い分析などを提供しており、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング/エビデンスに基づく政策立案)を推進する自治体などにも活用されている。
そのほか、観光地やイベント会場などの曜日・時間帯別混雑状況をAIが「混雑」「通常」「閑散」の3段階で推定し可視化する「カスタマイズ混雑マップ」も提供している。顧客は混雑状況を推定したグラフを自社のサイトやアプリに好みのデザインで掲載でき、密の回避により来訪者・自社スタッフの安全の確保や快適性を実現することができる。
(2) 「行動変容サービス」(Beacon Bank AD)
「行動変容サービス」は、まず生活者行動ビッグデータのAI解析により小売事業者や消費財メーカーに対し、来店可能性が高い消費者群と商圏を発見する。そして、消費者群へSNS(Instagram、X、LINE、Facebookなど)や動画共有サイト・コネクティッドTV等で情報発信することにより行動変容を促す広告配信サービスを提供している。最大の特徴は、広告配信の効果を測定することで、次の意思決定の質を向上し顧客企業のROI(費用対効果)を高めることができる点だ。店頭に設置しているビーコン等を活用することによって、来店数、来棚数、購買数などの単位で効果を計測できる。顧客はその測定結果に基づきPDCAサイクルを回すことによって、より効果の高い広告配信施策を打つことが可能になる。主な用途としては、流通店舗・イベントのデジタル集客、メーカーなどの販促プロモーション、オンラインイベント・ECへの集客である。同社が提供する「分析・可視化サービス」でターゲットを抽出・把握したうえで、「行動変容サービス」によって効果的なプロモーションを行うといった利用方法が主である。同サービスの収益は、デジタルチラシの配信として毎月受領する配信料のほか、新規出店や特売セールなどのイベント、商品のシーズンインに応じて情報配信需要が高まるスポット収入から構成される。
(3) 「One to Oneサービス」(Beacon Bank 1 to 1)
「One to Oneサービス」は、小売事業者や商業施設運営事業者等に向けてオリジナルアプリの開発や統合マーケティング基盤(CDP:カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築・提供し、消費者にパーソナル体験を届けるシステムソリューション全般を支援している。「分析・可視化サービス」でターゲットや課題を抽出・把握し、「行動変容サービス」で効果的なプロモーション活動を実践したあと、顧客エンゲージメントをさらに高めて維持したいという場合には「One to Oneサービス」が導入される。同社の保有する生活者行動ビッグデータをはじめとした各種データソースに顧客が保有するデータ等を集約し、リアル行動、リアル購買、ネット行動、ネット購買のデータを統合・分析し、AIで意味付けする。それにより消費者を深く理解し、個々のターゲットが必要とする情報や興味関心のある情報を最適なタイミング、最適な媒体(インターネット上の広告表示、アプリを通じたプッシュ配信、デジタルサイネージなど)を通じて提供することが可能になる。同サービスの収益は、システム・アプリ等の構築対価と構築後の運用・保守への対価からなっている(月額数10万〜1,500万円)。
同社サービスの導入企業の業種は、食品、ドラッグストア、ホームセンター、外食から家電メーカー、金融、不動産、商社、広告、国・自治体、公共交通、メディアなど多岐にわたる。各業界のトップクラスの企業が導入している点も特徴的だ。食品においては三菱食品、金融においては東京海上日動火災保険(株)、ほかにも三菱地所<8802>、三菱商事<8058>、電通グループ<4324>、NTTデータグループ<9613>、(株)TBSテレビ、環境省などの企業・省庁が同社の顧客となっている。業界トップクラスの企業が導入する理由は、同社のサービスが自社業績の拡大に直結するためであると弊社では考えている。実際、三菱地所が利用者の平均購買頻度を10%上昇させることに成功したほか、東京海上日動火災保険はeゴルファー保険広告反応率が1.4倍、ファミリーレストランを展開するジョイフル<9942>は顧客の来店頻度が3.5倍に増えた。ほかにも、TBSテレビは広告クリック率が3%超、(一財)箱根町観光協会は来訪率が4.7倍、ECサイトのHANEDA Shoppingはサイト訪問者の購入率を22%高めることに成功した。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬 智一)
<KM>
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