ヤマノHD Research Memo(3):事業ポートフォリオ最適化に向けセグメント変更(1)
ヤマノホールディングス<7571>の中期経営計画では、既存事業のオーガニックな成長で2027年3月期の売上高145億円、EBITDA4億円を稼ぎ出し、これに事業承継型M&Aによる新規事業(企業)で売上高30〜40億円、EBITDA3〜4億円を上乗せする計画である。計画初年度に当たる2025年3月期においては、既存事業の収益構造改革と徹底したコスト最適化により全セグメントの収益性を改善し、売上高140億円、EBITDA3.7億円を達成した。既存事業のオーガニックな成長に道筋をつけたと言えよう。計画2年目の2026年3月期は、M&Aによる新規事業(企業)獲得と業容の拡充に向けた成長ステージ移行プロセスに入る。当初中期経営計画3年目に予定していた次期中期経営計画(成長を加速するステージ)への移行準備を1年前倒しで実行していく形だ。中期経営計画の重点施策であった「既存事業の収益安定化」は、ステージの変化に合わせて、中長期視点での「事業ポートフォリオの最適化」に再定義するとともに、事業セグメントを従来の5区分から2区分に再編し、各セグメントの戦略を明確化した。
事業セグメントは、「和装宝飾」「美容」「DSM」(2026年3月期より「ライフプラス」に名称変更)「教育」「その他(リユース)」の5区分を、新たに「ニューバリュー」と「コアバリュー」の2区分に再編した。「ニューバリュー」は、2020年以降に開始した教育・リユース・フォト事業を対象とした。それ以前の既存事業と比較して収益性が高く、成長をけん引する領域と位置付ける。今後は、積極的なM&Aにより収益性の高く成長ポテンシャルを持つ新領域(事業・企業)を「ニューバリュー」に取り込み、その拡大、成長を加速し、「ニューバリュー」のウェイトを高める戦略だ。「コアバリュー」は、安定した収益を担う和装宝飾、美容、ライフプラス、リユース事業を除くその他の事業を対象とした。「コアバリュー」は成熟市場ではあるが経営基盤を構成しており、効率化を進めるとともに利益の安定化、キャッシュ・フローの最大化により事業基盤を強化する戦略だ。各事業においては、蓄積した顧客基盤・運営ノウハウを最大限に活用し、競争優位性を高めて収益構造を進化させることを基本とするが、セグメントにおいては成長ポテンシャルが高く、収益性のより高い「ニューバリュー」を伸長させ、「事業ポートフォリオの最適化」を推進しながら収益の一層の拡大を図る方針である。2025年3月期において、「ニューバリュー」の売上高は全体の12%だが、EBITDAでは既に全体の48%を占めており、2030年3月期には売上高の50%、EBITDAの80%まで、「コアバリュー」との適切なバランスをとりながら伸長させるイメージだ。「ニューバリュー」の利益率は「コアバリュー」よりも高く、美容・和装宝飾事業の営業利益率が2%を下回る水準であるのに対して、教育事業は8.5%を確保しており、新しく買収した「NYJも買収費用を加味しなければ10%以上の営業利益率を確保できるようだ。そのため、2027年3月期には「ニューバリュー」のEBITDAが全体の50%を超えると同社では予測する。
(1) ニューバリュー
a) 教育事業
同社の成長戦略の方向性を「モノ」から「コト」へ移行を進めるなかで教育事業へのM&Aを開始し、2020年3月にマンツーマンアカデミー、2022年5月に東京ガイダンス、2023年12月に灯学舎を子会社化した。各社ともやる気スイッチグループ「スクールIE」のFC加盟店事業を主力とするメガフランチャイジーであり、重要なFC加盟店オーナーとして個別指導教室を展開している。同社グループの学習塾ビジネスは、この3社で67教室と首都圏を広くカバーしている。同一FC加盟店なので、3社間での事業運営ノウハウ・人財採用・育成プランの共有などを図り、販売管理コストの削減効果による収益力向上のシナジーも期待できる。
b) リユース事業
2022年6月OLD FLIP(2018年設立)を子会社化することでリユース事業に参入した。店舗及び催事会場での古着の買取・販売を行うほか、BtoBでの古着卸売も行う。気軽に立ち寄れる安さ、商品の豊富さを提供する「ゴー!ゴー!古着」をマルイなど商業施設の中に4店舗を展開するほか、ポップアップストアなどで短期の催事販売も行う。また、仕入商品の一部をBtoB取引に活用することで、店舗販売・卸販売の両輪で安定した販路を確保しつつ、商品廃棄ゼロを目指す。2023年には、同社グループ店舗や協賛先に設置された衣料品回収ボックスを通じて回収されたリユース着物のリメイクブランド「zivun(ジブン)」を立ち上げ、帝国ホテルやラフォーレ原宿でポップアップストアを開催した。さらに、イトキン(株)と協力し、イトキンの倉庫に眠る商品を新たなデザインでリメイクしたD2Cブランド「re:mine(リマイン)」と「zivun」がタッグを組み、新しい商品を作っていくことを公表した。同社グループに加わることで、グループ会社や他社とのコラボレーションが進み、グループ全体での販売チャネル多様化も期待される。古着のアップサイクル、サーキュラーエコノミーを促進し、変化する消費者ニーズに対応するとともに、持続可能なサプライチェーンの実現に向けた取り組みを進め、グループの企業価値向上を目指す。
2025年6月には東京の下北沢・吉祥寺・渋谷でファッションリユース店舗を展開するNYJ(2012年設立)を子会社化した。直近2024年11月期の売上高は492百万円、営業利益は7百万円を計上している。OLD FLIPは幅広い年齢層を対象にしているが、NYJはSNSを積極的に活用し、感度の高い若年層ニーズに最適化されたブランドを提供している。元銭湯を改良したユニークな店舗などでビンテージ家具や拘り照明でトキ、イミ消費などの体験価値を演出し、専門スタッフによるコーディネート提案、現金買取りに加え商品交換も可能な「トレード方式」を導入するなど、ブランドロイヤリティを高める事業モデルを確立している。休日には、東京だけでなく地方からも若者が来店するほどファッション業界や美容業界では有名なブランドとなっており、OLD FLIPとは異なったビジネスモデルだ。OLD FLIPとはビジネスノウハウ共有や人財の交流を図るとともに、共同仕入れ・卸売りといった協力体制を構築していくなどシナジー効果が期待される。
c) フォト事業
2025年4月に東京町田市周辺にフォトスタジオを4店舗、衣装レンタル専門店1店舗を運営するYS(1991年設立)を子会社化した。フォトスタジオのうち1店舗は日本初の犬専門の肖像写真館である。直近2024年10月期第3四半期の売上高は172百万円、営業損益は5百万円の損失を計上している。マタニティフォトやニューボーンフォトなど新市場への先進的なサービスを展開する。また、SNSを活用した集客、インスタ映えを意識したサービス提供など若年層向けの集客力も高めている。YSは、町田周辺で店舗展開しているが、同社の美容室(My jStyle)、和装店舗(東京きもの愛)も町田にあり、成人式・結婚・出産などライフイベントを軸とした継続的な顧客接点によるLTVの最大化、美容・和装との高い親和性を活かした統合的新サービスなどによるシナジーの創出が可能となるであろう。将来的には、和装×美容×フォトによるインバウンド向け店舗の展開なども視野に入れているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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