タカラスタンダード:ホーロー技術を武器に住宅設備でシェア上位、ROE改善と株主還元の両立でまずはPBR1倍へ
同社は1912年の創業以来、キッチン、浴室、洗面化粧台など住宅の中核設備を中心に製品ラインを広げ、長年にわたり住宅設備の総合メーカーとしての地位を築いてきた。同社の事業は、大きく分けて「住宅設備関連事業」と「その他事業」に分類されるが、製品カテゴリ別では、キッチン、浴室、洗面化粧台などが主力であり、中でも新築集合(マンション)においてはキッチンと洗面化粧台で圧倒的なシェアを誇る。2025年3月期における業界シェア(同社調査)では、キッチンで約29%(1位)、浴室で約14%(3位)、洗面化粧台で約22%(3位)を占めている。これらの製品のうち、特に独自素材である高品位ホーロー製品は耐久性や清掃性、さらに意匠性に優れるという特性を持ち、住宅設備の長寿命化と上質な暮らしを志向する顧客層から高い支持を得ている。
同社の強みは、独自素材の開発・量産技術と、それをベースにした製品力、さらに信頼性の高い納品・施工体制にある。また、商品ブランドの価値を全国で統一するために導入したのが「適正価格政策」である。同社が設定している希望小売価格(定価)は、商品の価値に見合った適正な価格で値引き販売を前提としておらず、他社との差別化ポイントとなっている。そのほか、販売面では、全国に展開するショールーム網(全国約160か所と業界1位)を活かし、地域特性に即した製品展示・提案を行うとともに、リフォーム需要の掘り起こしにも注力している。ホーロー素材に代表される機能性と意匠性を兼ね備えた製品群は、設計対応力や施工体制、物流の一貫性といった業務オペレーションと結びつくことで、高い顧客満足度とリピート率を支える。製品は全国の工務店やハウスメーカー、ゼネコン、さらにはリフォーム事業者を通じて幅広く導入されており、新築向け・リフォーム向けともに安定した顧客基盤を持つ。
2025年3月期の売上高は243,380百万円(前期比3.7%増)、営業利益は15,635百万円(同25.8%増)と売上高は4期連続で過去最高を更新する好調な決算となった。増収に加え、価格改定効果による売上総利益の改善や合理化・コストダウンが寄与した。とりわけ、受注から納品までリードタイムを要する新築集合住宅向けで2023年度に実施した価格改定の収益押し上げたほか、在庫圧縮や原価低減などの合理化施策が相まって、営業利益の増加に大きく貢献した。市場別では、新築向け売上が1,594億円(前年比8.6%増)と全体の65.5%を占め牽引役となった一方、リフォーム市場は727億円(同5.3%減)と減収だった。リフォーム市場では、前期の価格改定に伴う駆け込み需要の反動もあり減収となったものの、下期は「商品力の強化」や「提案力の強化」といった取組施策の推進により回復基調となったようだ。
2026年3月期の売上高は247,000百万円(同1.5%増)と5期連続の過去最高を見込み、営業利益は17,200百万円(同10.0%増)と12期振りの過去最高更新を目指す。新築市場向けは好調だった前期並みの売上を確保しつつ、リフォーム市場向けでの各取組施策を更に推進。また、生産の合理化や在庫圧縮などによるコストダウン効果も引き続き寄与する想定である。ROE予想は6.7%で、業績を向上させつつ、株主還元の大幅拡充により純資産の圧縮を進めるようだ。
同社は、「中期経営計画2026」のもとで、2027年3月期における売上高2,500億円、営業利益200億円、営業利益率8%、ROE8%の達成を掲げている。当初のROE目標は7%だったが、資本市場との対話を経てより高い資本効率の実現を目指し目標を引き上げた。長期目標では、2031年3月期に売上高2,700億円、営業利益270億円、営業利益率10%、ROE10%の達成を掲げている。
住宅設備業界を取り巻く市場環境は、資材価格の高騰や為替の影響といった外的要因のリスクが残る一方で、リフォーム市場の底堅さや新築マンション市場の需要回復が追い風となっている。このような状況下で同社は、豊富な住宅ストックを背景に市場成長が見込まれるリフォーム事業の売上構成比を高めていく方針を示している。同社のキッチン・浴室・洗面化粧台のリフォーム市場における売上シェア(2025年3月期・各社決算公表数字より)は15%程度とまだまだ伸び代があり、今後もシェア拡大に注力するようだ。市場の縮小が見込まれる新築事業は、高いシェアを持つ新築集合向けでの浴室の拡販によって売上の維持を目指す方針である。新築集合住宅市場(分譲)における出荷台数シェア(同社調べ)では、キッチン約80%、洗面化粧台約73%に対して、後発の浴室のシェアは約6%と拡大の余地が大きい。キッチン・洗面化粧台の営業力・提案力とホーローパネルで差別化された独自の浴室を武器にシェア拡大を図るという。
リフォーム及び新築市場での浴室の販売を強化するため、福岡工場へ投資も行っている。2028年4月以降に新棟の本格稼働(投資額 約400億円)が予定されており、ホーロー浴室パネル生産台数は約1.5倍(2024年3月期比)となる。2031年3月期に浴室売上高200億円増を見込んでおり、最新設備を導入して生産性向上・収益力強化で更なる利益成長を図る。そのほか、現時点では売上全体に占める割合は小さいものの、海外市場の重要性も高まっている。すでに展開している中国・台湾・ベトナムに加え、今後はインドやインドネシアといった新興国への展開を進め、グローバル市場での事業拡大を図る方針である。日系キッチンブランドグローバルトップリーダーを目指して、2031年3月期KPIとして海外売上高100億円を掲げている。
また、収益成長のみならず株主還元を重視しており、「中期経営計画2026」期間中において、配当性向は50%へ引き上げ、利益成長に伴う累進配当を予定している。さらに今後2年間で約220億円の自己株式取得を計画しており、自己株式の取得と配当性向を併せて2年間の総還元性向は130%水準となる。現状PBR0.8倍台で推移しており、まずはPBR1倍に向けて資本効率向上に向けた取り組みが進んでいこう。総じて、同社は長年の技術的蓄積と業界トップクラスの製品品質、加えて強固な営業・施工体制を武器に、住宅設備業界において着実な成長を遂げている。市場の変動に柔軟に対応しつつ、ROE改善と株主還元の両立を図る経営方針は、中長期的にも投資魅力が高い企業として注目に値する存在である。
<HM>
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