芙蓉リース Research Memo(3):2025年3月期の経常利益は8期連続で過去最高益を更新
1. 業績を見るポイント
同社の売上高は、全体の80%超を占めるリース料収入のほか割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ主力のリース料収入は、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格が含まれている。金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入益を含む)」※などの費用を引いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的である。なお、「経常利益」は「営業資産残高」と「ROA(営業資産経常利益率)」の掛け算となるため両方の動きによって影響を受ける。また最近は、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり「その他」のセグメントの動きにも注目する必要がある。
※ 貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、「経常利益」は「営業資産」の積み上げとROA向上の両方により増益基調を続けている。特にROAの向上については、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大に加え、最近ではBPOサービスを中心としたビジネス(ノンアセット収益)の伸びが寄与している。
費用面を見ると、2023年3月期までの「資金原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、低金利政策の影響により調達利回りが低下してきたことが要因である。ただ、2024年3月期は海外の取り組み伸長による外貨調達の拡大等に伴い調達利回りが上昇すると、2025年3月期は国内金利の上昇により「資金原価」は2年連続で大きく増額した。一方、「人物件費」を一定水準に抑えるとともに「貸倒関連費用」も低位で推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。それらの結果、2025年3月期の経常利益は8期連続で過去最高を更新した。
有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、2025年3月期の自己資本比率は13%を超える水準を確保している。同社の水準は、流動性の高い「営業資産」を大量に保有するリース業界において他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
また資本効率を示すROEについても、利益水準の底上げとともに上昇し、2021年3月期以降は10%で推移している。
3. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の業績は、営業利益が前期比7.9%増の648億円、経常利益が同1.0%増の690億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.1%減の453億円となり、経常利益は過去最高益を8期連続で更新した。また、通期予想に対しても各段階利益を超過することができた。
事業本来の業績を示す「差引利益」も、「モビリティ/ロジスティクス」や「航空機」といった成長領域を中心に、前期比16.6%増の1,498億円と順調に拡大した。
経常利益についても、「差引利益」の伸びにより増益を確保した。事業分野別で見ると、「不動産」が売却関連益の剥落等により一旦減益となったものの、「航空機」が機体数の積み上げや円安効果も手伝い大幅な増益を実現したほか、「モビリティ/ロジスティクス」「エネルギー環境」「BPO/ICT」「ヘルスケア」も堅調に推移しており、成長領域を中心にバランスの取れた利益成長が続いていると言える。
費用面に目を向けると、営業資産の積み上げに伴う調達残高の増加に加え、調達利回りの上昇により資金原価が大きく増加した。また、人的資本投資による人件費の増加等も加わりマイナス要因となったものの、「差引利益」の伸びで打ち返すことができた。OHR(経費率:人物件費/売上総利益)も良好な水準を維持したほか、保有する債権の貸倒リスクも低く抑えている(貸倒引当金戻入益を計上)。「契約実行高」については前期比5.8%増の1兆8,440億円に増加した。アセットコントロールを進めている「不動産」が減少したものの、アクリーティブによる診療・介護報酬ファクタリングが大きく増加したほか、「航空機」や「モビリティ/ロジスティクス」も順調に拡大した。また、「営業資産残高」についても、成長ドライバーに位置付ける「航空機」「モビリティ/ロジスティクス」(国内・海外)や「エネルギー環境」を中心に着実に積み上げ、前期末比6.8%増の3兆721億円に拡大した。
ROA※については2.3%(前期は2.4%)と大口の売却関連益等の特殊要因があった前期を下回ったものの、その影響を除いた実質ベースでは同水準を維持しており、収益性の高いポートフォリオへの転換や事業領域の拡大による収益力の底上げが定着してきたとの見方に変わりはない。
※ 経常利益(年換算)÷営業資産残高(平均残高)
財政状態に特筆すべき変動はなく、総資産は前期末比5.2%増の3兆5,671億円となった一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同10.1%増の4,754億円に増えたことから、自己資本比率は13.3%(前期末は12.7%)に向上した。また、有利子負債(リース債務を除く)は営業資産の積み上げに伴い同4.7%増の2兆8,082億円に増加したが、長期調達比率※は70.6%(前期末は68.4%)を確保し、長短のバランスも安定している。
※ 有利子負債に占める、長期有利子負債(社債+長期借入金+債権流動化に伴う長期支払債務)の比率。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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