エヌ・シー・エヌ Research Memo(5):非住宅分野の業績が回復し黒字化(1)
1. 2025年3月期の業績
2025年3月期の連結業績は、売上高8,124百万円(前期比1.6%増)、売上総利益2,163百万円(同1.8%減)、営業利益178百万円(同114.7%増)、経常利益292百万円(同513.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益193百万円(前期は0百万円の利益)と増収、営業利益以下増益となった。通期業績予想の達成率は、売上高90.5%、営業利益80.1%、経常利益102.8%、親会社株主に帰属する当期純利益93.1%と、経常利益以外は未達となった。
住宅業界では、資材価格の値上がり等を背景に、新設住宅着工戸数は2022年度以降2年連続で減少したが、木材相場の落ち着きや、建築基準法改正前の駆け込みと思われる需要もあって、2024年度は81万6,018戸(前期比2.0%増)と、3年振りに微増した。建築基準法改正で2025年4月から木造住宅の省エネルギー性能の確保や、2階建て木造住宅の構造建築確認申請が義務化されることを受け、制度開始直前の2025年3月期は、住宅分野ではSE構法の出荷件数が前期水準を維持した。しかし、木材相場の落ち着きから1棟当たりの平均売上金額が下落し、売上高は同3.2%減の4,729百万円となった。KPIとする構造計算出荷数は足元4期で減少が続いたものの、2025年3月期は989棟と増加に転じた。SE構法登録施工店も前期で37社が新規に登録し総数は621社となり、法改正を追い風として事業基盤を拡大させている。大規模木造建築(非住宅)分野は、売上高2,945百万円(同6.7%増)となった。SE構法出荷数及び構造計算出荷数のいずれも増加した。SE構法以外の大規模木造建築設計を扱う木構造デザインの構造計算出荷数の増加や、翠豊の万博案件を含む大型案件の売上が寄与した。環境設計分野は売上高290百万円(同17.4%増)、DX・その他の分野は売上高158百万円(同54.1%増)とそれぞれ大幅増収となった。前者は一次エネルギー計算書の出荷数や長期優良住宅申請サポート件数が増加、後者は主にMAKE HOUSEでの高画質建築空間シミュレーションサービス「MAKE ViZ」の好調に起因する。
利益面の回復要因は、子会社の業績回復である。連結経常損益ベースで、2024年3月期は連結子会社3社(木構造デザイン、翠豊、MAKE HOUSE)が計16百万円、持分法適用関連会社4社(MUJI HOUSE、N&S開発、SE住宅ローンサービス、イデーユニバーサル)が計56百万円の損失となったが、2025年3月期は連結子会社で計156百万円、持分法適用関連会社で計63百万円の黒字を計上した。特に大規模木造建築(非住宅)分野の成長が著しく、今後の動向が注目される。費用面では2025年3月期より費用の一部を販管費から製造原価へ計上区分を変更した影響で、営業利益率は同1.2ポイント増の2.2%と改善した。
2. 事業セグメントとセグメント売上高
住宅分野の売上高は4,729百万円(前期比3.2%減)となった。また同分野でKPIとする構造計算出荷数は989棟(同14.1%増)、SE構法出荷数は902棟(同0.6%減)となった。木材相場が落ち着いたことによりSE構法1棟当たりの平均売上金額が同2.7%下落した結果、売上高は前期比で微減となった。構造計算出荷数及びSE構法出荷数は登録施工店向けとハウスメーカー向け(OEM)の2種類に区分される。登録施工店向けに関しては、2025年3月期に37社が新規登録し621社体制となり、ネットワーク展開を拡大して出荷数の押し上げを図ったことで、構造計算出荷数は同30.9%増の665棟となった。SE構法出荷数も同様で、全体の棟数は前期比で微減となったが、登録施工店向けは同11.6%増の596棟となった。登録施工店に対する支援施策として、顧客からの相談案件へ同社営業設計担当者の商談参画や、SE構法の優位性である耐震性や設計自由度の説明、構造計算や省エネ計算の支援を推進しており、効果が表れていることから今後も推進する。なお、構造計算出荷はSE構法出荷の前段工程と位置付けられており、2025年3月期は989棟と増加に転じたことから2026年3月期以降のSE構法出荷数の伸びが想定される。
大規模木造建築(非住宅)分野の売上高は2,945百万円(前期比6.7%増)となった。KPIである構造計算出荷数は同5.8%増の239棟、SE構法出荷数は同1.5%増の138棟となった。住宅分野が伸び悩む一方で堅調に業績を伸ばしており、全売上高の36%を占めるまでに成長し、さらに利益面でも子会社の黒字化が進んだことで、売上・利益両面で同社の成長を支えている。売上面での成長要因は、木造建築の構造計算ニーズ増大による引き合い増加や、継続的なプロモーション活動である。同社によれば、前者は複合施設やカフェなど、非住宅分野で木造ならではの温かみのある建築施工を求めるニーズが増えており、多くの引き合いがあることや、後者では非住宅分野への対応が可能な登録施工店を支援する販促活動で受注増につなげている。その結果、構造計算出荷数のうち、子会社の木構造デザインが手掛けるSE構法以外が2025年3月期に90棟と、同7.1%増の伸びとなった。またSE構法の構造計算出荷数は149棟と、同4.9%増となった。子会社の翠豊では万博のパビリオン向け等の大規模案件が増加したことで業績を押し上げた。同社は翠豊に対し、シナジーによる受注数拡大に向けて施策展開するほか、木材加工の機械化や経営管理の強化等、効率化による利益向上策を打っており、売上面だけでなく利益面でも改善した結果、2025年3月期は黒字転換した。今後もSE構法に加えて翠豊の有する大断面集成材特殊加工(湾曲集成材)へのCLTパネルの併用といったコラボ案件の推進など、シナジーの高度化により一層の業績拡大が期待される。
環境設計分野の売上高は290百万円(前期比17.4%増)となった。2021年4月より住宅の省エネ性能の説明が義務化されたことや、2025年4月からはすべての新築で省エネ基準適合が義務付けられたことで、木造住宅や非住宅木造物件及びリノベーション物件向けに受託した一次エネルギー計算書の出荷数が3,220件に達し、前期比で11.5%増加した。特にリノベーション案件については、2025年3月期に301件を受託するなど増加しており、新築に比べて割安なリノベーション需要の拡大を背景に、今後の伸びが期待できる。従来から手掛ける長期優良住宅申請サポート件数は489件(同15.9%増)となったことや、設備設計業務の受注増加も売上高に寄与した。また、2025年3月期よりマンションの省エネルギー計算の受注を開始した。2025年4月に始まった省エネルギー計算義務化の対象は新築マンションのみだが、対象外の中古マンションの省エネルギー計算義務化は脅威となるため、自主的に中古マンションのリノベーションに省エネルギー計算を付与して販売する業者の増加が予想される。省エネルギー計算需要の増加による収益寄与への期待は大きい。
DX・その他の分野の売上高は158百万円(前期比54.1%増)と大きく伸長した。木造建築向けITソリューションを開発・展開する子会社MAKE HOUSEでは、2021年10月から提供を開始した高画質建築空間シミュレーションサービスである「MAKE ViZ」の受注が好調に推移し、同分野での増収に貢献した。「MAKE ViZ」では、二次元の設計図面から精緻な3Dパース(視覚的な表現手法)を作成できる。ハウスメーカーや工務店では、設計だけでなく販売活動におけるプレゼンテーション資料向けとしての活用が評判で、受注増加の要因になっているようだ。加えて設計書類の電子化が今後さらに進む見通しで、BIM(建築物のモデリング手法)技術の活躍機会の増加が期待される。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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