アイル Research Memo(7):2025年7月期の過去最高予想を据え置き
アイルは2025年7月期の過去最高の業績予測を据え置いており、売上高は前年同期比9.4%増の191億5千万円、営業利益は12.6%増の48億円を見込んでいます。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)需要が中小企業において高まり、案件が大型化していることが影響しています。同社は長期的に営業利益率を30%以上にすることを目指し、ローリングプランを採用しながら成長戦略を進めています。人材投資の強化や広告宣伝の推進、またシステム開発の精度向上などを進める方針です。なお、2025年3月からは「CROSS MALL」の既存顧客への価格改定を予定しています。株主資本コストを9.8%と認識しつつ、ROEは業界平均を上回る水準で推移しており、今後も企業価値の向上を図ります。
● 2025年7月期の連結業績予想概要
2025年7月期の連結業績予想は、期初計画を据え置いて売上高が2024年7月期比9.4%増の19,150百万円、営業利益が同12.6%増の4,800百万円、経常利益が同12.6%増の4,826百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同12.8%増の3,257百万円と、増収増益で過去最高予想としている。売上総利益は同10.3%増の10,783百万円、売上総利益率は同0.5ポイント上昇して56.3%、販管費は同8.6%増の5,983百万円、販管費比率は同0.3ポイント低下して31.2%の計画である。なお増収増益を継続しつつも、次のステップに向けた成長投資を優先する方針としている。
全体の市場観として、2025年10月予定のWindows10サポート終了関連需要の影響は軽微だが、中堅・中小企業における人手不足深刻化などによりDX需要が高水準に推移し、案件規模の大型化が進展することを想定している。コスト面ではライセンスなどの仕入商品の値上げ、採用強化や人事制度見直しに伴う人件費増加、TVCM通年化による広告宣伝費増加などを見込むが、増収効果、契約案件の見極め精度向上による納期短縮と安定稼働、仕入価格高騰に対する価格転嫁、ストック売上積み上げなどによりコスト増加を吸収する見込みだ。
事業別の重点施策として、システムソリューション事業では上期の計画未達分に対してシステム開発案件の回転率アップでカバーするほか、エンジニア全体(SE/プログラマ)の稼働状況を考慮したプロジェクト進行による組織全体の作業負荷の偏り解消、プログラミング作業やテスト工程での生成AI活用を推進する。CROSS事業では「アラジンオフィス」ユーザーへのアプローチ強化、システム連携パートナーの拡大のほか、サポート品質向上に伴い「CROSS MALL」の既存顧客に対する価格改定を2025年3月より実施した。その他Web事業ではEC運営の付加価値サービスとして分析支援やブランディング支援を強化する。
通期予想に対する中間期の進捗率は売上高が48.3%、営業利益が47.1%、経常利益が46.3%、親会社株主に帰属する当期純利益が47.2%とやや低水準だった。ただしストック売上の積み上げやエンジニアの成長により下期の構成比が高い季節要因があること、システムソリューション事業の受注が拡大基調であること、2024年10月からのクラウド月額利用料値上げによって第2四半期より売上総利益率が上昇に転じていること、2025年3月より「CROSS MALL」の既存顧客に対する価格改定を実施したことなどを勘案すれば、通期会社予想の達成は可能であり、好業績が期待できると弊社では考えている。
■成長戦略
長期的に営業利益率30%超を目指す
1. 中期経営計画(ローリングプラン)
同社は中期経営計画について、急激な事業環境の変化に応じて随時計画を見直すローリングプランを採用している。2024年9月に策定した3ヶ年計画(2025年7月期~2027年7月期)は、長期的な目標である営業利益率30%超に向けた第3フェーズと位置付けて、年平均2ケタ成長(2024年7月期~2027年7月期のCAGRは売上高10.3%、売上総利益11.6%、営業利益15.7%、親会社株主に帰属する当期純利益15.7%)を維持しつつ、人材投資やプロモーション投資など成長投資の加速によって経営基盤の一段の強化を推進する。計画の前提として、受注環境はDX需要に加え、オフコンなどのレガシーシステムのオープン化や、2020年の軽減税率対応及びサーバーOS入替特需のリプレースタイミング到来など、複合要素による強い需要を想定している。これに伴ってシステム開発プロジェクトの案件規模が継続的に拡大する。年間人材採用数は新卒70名~80名、中途25名~35名を想定し、認知度向上に向けてTVCMなどのメディア戦略も強化する。
重点施策としては、人事制度見直しによる成果配分と優秀な人材確保のための給与・賞与・報酬の継続的な上昇、人材投資(採用・育成の強化)や認知度向上のための広告宣伝投資(TVCMの通年化など)の継続、組織再編と製品開発スピード加速による「CROSS-OVERシナジー」戦略の深化、余剰資金を活用したM&Aの検討や株主還元の一段の強化などを推進する方針だ。また事業戦略として、システムソリューション事業では、製販一体体制による案件見極め精度向上や大型案件への対応を継続的に強化することに加え、新たなパートナーの開拓、銀行からの紹介を活用した営業エリアの拡大(東名阪から100%リモートサポートを前提)などを推進する。CROSS事業では「BACKYARDTM」の機能強化・拡販などを推進する。
なお同社は現状の株主資本コストを9.8%程度(2020年7月期~2024年7月期の平均)と認識している。ROE(自己資本利益率)はおおむね30%前後と株主資本コストを上回る水準で推移しており、業界(情報・通信業)平均を上回るパフォーマンスを出している。またPBR(株価純資産倍率)はおおむね8倍前後と業界(同)平均を大幅に上回る水準で推移しており、市場からも一定の評価を得られている。今後も継続した利益率向上と人材投資により企業価値を高める。なお同社は、海外投資家比率の上昇及び海外投資家との取材増加を受けて英文開示資料の充実を図り、会社・ビジネスモデルの理解に資する英文資料も自社ホームページ上で公開している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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