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ビジョナル Research Memo(4):日本の労働市場に変革をもたらした「BizReach」(2)


BizReachは、日本の労働市場においてプロフェッショナル人材に特化した転職プラットフォームとして成長を遂げています。2024年7月期第4四半期には、累計導入企業が5,500社増加するなど、安定した顧客基盤を構築しています。日本における従業員101名以上の企業は50,455社存在する一方、BizReachの利用企業は16,000社にとどまっており、さらなる成長の余地があります。市場拡大のために、生成AIによる「求人自動作成機能」と「レジュメ自動作成機能」が導入され、企業および求職者の負担を軽減しています。国内の転職市場は構造的成長期にあり、政府の「雇用の流動化」政策とも一致しているため、今後も更なる発展が期待されています。

*11:34JST ビジョナル Research Memo(4):日本の労働市場に変革をもたらした「BizReach」(2) ■ビジョナル<4194>の事業内容

2) BizReachの顧客基盤
BizReachの競争優位は、強固な収益構造を支える顧客基盤の数で、直接採用企業、ヘッドハンター、求職者の三者から獲得する売上高の種類は以下のとおりである。

BizReachの主要KPIを見ると、累計導入企業数、スカウト可能会員数、利用ヘッドハンター数、年次利用中企業数の各指標は順調に積み上がっており、安定的な顧客基盤を構築していることがわかる。2024年7月期第4四半期の主要KPIを前年同期と比較すると、累計導入企業数は約5,500社増加、スカウト可能会員数は約44万人増加、利用ヘッドハンター数は約1,200名増加、年次利用中企業数は約2,600社増加と、各指標で順調な成長を続けている。

c) 市場環境と成長戦略
1) 市場でのポジショニングと拡大余地
BizReachは、HR市場において「プロフェッショナル人材(管理職・専門職等)に特化した会員制転職プラットフォーム」として認知を拡大しているが、同社の地位はさらなる拡大のポテンシャルを持っている。ダイレクトリクルーティングにおける主要顧客は直接採用企業(年次利用中企業)数と求職者(スカウト可能会員)数の2つとなるが、各市場規模を見ると、BizReachの主なターゲットとなる日本における従業員101名以上の企業が50,455社※1存在しているのに対し、BizReachの年次利用中企業数※2は16,000社である。また、求職者の主要ターゲットである年収600万円超の国内給与所得者対象人数は1,148万人※3であるのに対し、BizReachのスカウト可能会員数は258万人※4である。このようにBizReachは未利用企業の新規開拓や既存利用企業への深耕営業、及びプロフェッショナル人材への販促活動等を促進することで、さらなる成長可能性を有していると言えるだろう。

※1 2023年9月末時点。「都道府県別一般事業主行動計画策定届の届出及び認定状況」
※2 会計期間中に1日以上の利用がある直接採用企業数
※3 令和4年分民間給与実態統計調査(国税庁)
※4 BizReachのデータベース上に登録されている会員のうち、採用企業またはヘッドハンターへの職務経歴書公開設定を「公開」にしている会員(無料会員を含む)

2) 「働き方」の変化による市場拡大とさらなる成長機会
社会構造の変化と技術の進歩により、「働き方」や「転職への考え方」が根底から変化し、国内採用市場は構造的成長局面を迎えており、日本における「雇用の流動化」は加速している。なお、2023年は、日本における正規雇用者数3,615万人に対して転職者数は94万人と転職者数割合は2.6%程度にとどまる。

一方、年収帯別の転職者割合の調査をみると、特にプロフェッショナル人材市場においては近年転職者数が増加傾向である。同社がターゲットとする年収600万円以上の年収帯別の転職者割合は2017年から2022年の間で0.5~1.5ポイント程度上昇しており、同社ではプロフェッショナル人材の需要の高まりに伴って、中途採用は今後さらに拡大すると見ている。

また、諸外国と比べると日本の雇用の流動化及び市場拡大の余地は依然として存在していると言える。諸外国との勤続年数の比較においては、諸外国では労働需要がより高い分野への労働移動の促進を図っており、勤続年数10年以上の雇用者割合が30%以下となっている国が多いが、日本は約46%となっており、他国に比べ割合が高く、勤続年数が長い傾向が見える。

さらに、政府の主要政策実現に向けた「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」のなかでも「雇用の流動化」について言及されており、雇用システムの転換を図り、労働移動の円滑化を図ることが、日本企業と日本経済のさらなる成長のために急務であると示されている。雇用の流動化を目指すBizReachの将来像は日本の政策にも合致しており、今後より一層の構造的変革が生じるものと同社は考えている。

3) 生成AIへの投資及び活用
BizReachの顧客基盤の拡大や、生産性向上を実現するために、同社は生成AIへの投資を強化し、直接採用企業向けに、生成AIによる求人作成サポート「求人自動作成機能」※1サービスの提供を開始している。プロフェッショナル人材の採用が活況ななか、求人作成のハードルを低減するのが狙いである。専門性・新規性が高いポジションを募集する求人作成は難易度が高く「部門主導採用」の広がりにより、人事だけではなく採用経験がない部門においても求人作成が必要となる。GPTツールは、OpenAIの提供するGPTモデルに対して、BizReachがこれまでに蓄積してきたノウハウとデータを活かした独自のロジックで構成した指示を与える。「どんな人材を採用したいか?」という質問に対して、職種や期待する役割等を直感的に回答すると、BizReachに蓄積された豊富なデータベースから募集背景が提案されるのが特徴である。

また、求職者に対しても同様に生成AIによる「レジュメ自動作成機能」※2サービスを提供している。転職が以前より一般的になったものの、求職者にとって転職の最初の壁の1つが職務経歴書の作成だろう。求職者と企業の質の高いマッチングのためには、職務経歴書の内容が重要となる。「レジュメ自動作成機能」は、最適な内容の職務経歴書を小さな負荷で簡単に完成できるようにGPTツールを活用した機能となる。GPTツールは、OpenAIの提供するGPTモデルに対して、BizReachがこれまでに蓄積してきたノウハウとデータを活かした独自のロジックで構成した指示を与える。GPTツールの性能は、マッチング理論の第一人者である東京大学大学院経済学研究科教授兼東京大学マーケットデザインセンターセンター長の小島 武仁氏との共同研究により検証され、GPTツールの使用によって質の高い職務経歴書を作成でき、スカウト受信数も増えることが確認されている。

※1 GPTツールを活用することで、最短30秒で高精度な求人が自動で提案できる採用企業向けサービス。
※2 BizReachに登録後、簡単な質問(職種、ポジション、業務のミッション、業務領域)に回答するだけで、業務内容を自動でスピーディーに作成できる転職者向けサービス。

これらの最新テクノロジーを利用した機能の提供は、直接採用企業及び求職者がダイレクトリクルーティングを初めて利用する際に必要となる、求人情報や職務経歴書の作成をサポートすることで、サービス利用に対するハードルを下げ、サービス利用を促すよう機能することが期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)

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