ワコム Research Memo(1):2025年3月期上期は増収・営業増益。「ブランド製品事業」の構造改革を推進
ワコムは2025年3月期上期において、売上高が前年同期比3.1%増の57,315百万円、営業利益が同122.9%増の5,475百万円と、増収増益を達成しました。特に「テクノロジーソリューション事業」でのOEM需要の増加と円安効果が大きく寄与しました。一方で、「ブランド製品事業」は市場環境の変化に苦戦を強いられていますが、商品ポートフォリオのアップデートを進めることで改善を心がけています。2025年3月期の業績予想は売上高120,000百万円、営業利益8,500百万円と見込まれ、「ブランド製品事業」の改革を続けながら増益を狙います。また、次期中期経営方針においては新しい技術開発と商用化を目指し、持続的な成長のための準備を進めています。
ワコム<6727>は、デジタルペンとインクの事業領域で、技術に基づいた顧客価値の創造を目指すグローバルリーダーである。映画制作や工業デザインのスタジオで働くデザイナー、アニメーターなどプロのクリエイターからの支持により高いブランド力とシェアを誇る。自社ブランドで「ディスプレイ(液晶ペンタブレット)製品」や「ペンタブレット製品」等を販売する「ブランド製品事業」と、スマートフォンやタブレット・ノートPCなど完成品メーカー向けに独自のデジタルペン技術をコンポーネントとして供給する「テクノロジーソリューション事業」の2つのセグメントで事業を展開している。
1. 2025年3月期上期の業績概要
2025年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比3.1%増の57,315百万円、営業利益が同122.9%増の5,475百万円と増収及び営業増益となった。円安効果や好調なOEM需要を背景とする「テクノロジーソリューション事業」の伸びが増収に寄与した。ただ、「ブランド製品事業」については、商品ポートフォリオのアップデートを進めるなか、市場環境の急激な変化により苦戦が続いている。損益面では積極的な研究開発投資を継続しながらも、「テクノロジーソリューション事業」の伸びや「ブランド製品事業」における損益改善により大幅な営業増益を実現した。活動面では「ブランド製品事業」の構造改革の1つに掲げる新ユースケース「ポータブル クリエイティブ」を確立すべく、2024年5月に「Wacom Movink 13」をリリースした。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績予想について、同社は期初予想を据え置き、売上高を前期比1.0%増の120,000百万円、営業利益を同20.4%増の8,500百万円と見込んでいる。2026年3月期からスタートする次期中期経営方針(Wacom Chapter 4)に向けて、「ブランド製品事業」の構造改革を進めながら、事業成長の土台となる収益基盤の確立を図る想定である。売上高では、「ブランド製品事業」の新たな商品ポートフォリオ群の市場浸透を図る一方、足元では好調な「テクノロジーソリューション事業」についてはほぼ横ばいと慎重な見方をしている。損益面では積極的な研究開発投資を継続する方針の下、「ブランド製品事業」の構造改革を進めることで増益を確保する。
3. 中期経営方針アップデートの改編
同社は、4ヶ年の中期経営方針「Wacom Chapter 3」(2022年3月期~2025年3月期)に沿った取り組みを推進してきた。「ライフロング・インク」のビジョンを継承し、改めて「5つの戦略軸」を設定するとともに、その実行に当たって「6つの主要技術開発軸」を定めて具体的な価値提供と持続的な成長につなげる方針である。特に既存技術と親和性の高いAI(人工知能)、XR(クロスリアリティ)、セキュリティ(安全性)の3分野を選択し、新コア技術と新しいビジネスモデルで新しい価値提供の実現を目指すことが戦略の目玉となっており、基本的な方向性に見直しはない。ただ、足元での急激な市場環境の変化といった外部要因に加え、「ブランド製品事業」における商品ポートフォリオの刷新と粗利改善や販路マネジメントの強化など同社自身の体制にも改善すべき余地があることから、後半2年間(2024年3月期~2025年3月期)を次のWacom Chapter 4での事業成長につなげるための「事業構造変革期間」と位置付けた。粗利改善や成長基盤の構築に注力する方針(アップデートプラン)を打ち立てると、その後も状況に合わせた改編を行いながら、Wacom Chapter 4に向けた構造改革を推進している。2024年5月にはWacom Chapter 4の方向性を公表し、経営資源の集約や次世代の成長エンジンとなる技術開発の商用化や市場実装に向けたロードマップを提示した(最終案は2025年5月公表予定)。
■Key Points
・2025年3月期上期は円安効果やOEM需要増に伴う「テクノロジーソリューション事業」の伸びにより増収増益を実現。「ブランド製品事業」は市場環境の急激な変化により苦戦が続く
・2025年3月期の連結業績は、期初予想を据え置き、「ブランド製品事業」の構造改革を進めながら、増収増益を確保する見通し
・2026年3月期よりスタートする次期中期経営方針では、経営資源の集約を図るとともに、次世代の成長エンジンとなる技術開発の商用化や市場実装を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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