ネットイヤー Research Memo(3):あるべきCXを実現するデザイン設計力に強みを持つ
ネットイヤーグループは、デジタルマーケティングを主軸にオウンドメディアを中心としたサービスを提供し、企業とエンドユーザーの関係強化を図っています。同社の強みは、顧客体験(CX)の向上を目指した設計力にあります。プロジェクトはクライアントのニーズに合わせてカスタム化され、期間は3ヶ月から1年程度です。受注単価はプロジェクトの複雑さによって異なりますが、クライアントとともに長期的な成果を目指します。また、NTTデータとの協業により高度なシステム開発の課題を克服しつつあります。営業先としては、スターバックスやモスフードサービスなどがあります。NTTグループが売上の大部分を占め、協業強化により中期的な成長を見込んでいます。
2. 事業内容と強み
同社が事業領域とするデジタルマーケティングとは、企業活動においてオウンドメディアを中心に、既存メディアや営業、コールセンター、店舗などと連携させ、各顧客接点における体験価値を向上させることで、企業とエンドユーザーの関係性を強化するマーケティング手法を指す。企業や自治体などのクライアントに対して、新たなデジタルマーケティング戦略を提案・実践することで、クライアントが目標とするブランド価値の向上や売上成長、業務変革の推進などの成果を導き出すサービスである。
デジタルマーケティング領域は、顧客との接触手段によって以下の4つのメディアに分類される。1つ目は、ネット広告を掲載する「ペイドメディア(Paid Media)」、2つ目はインフルエンサーマーケティング等を行う「アーンドメディア(Earned Media)」、3つ目がSNSなどで消費者が口コミ投稿を行う「ソーシャルメディア(Social Media)」、4つ目が自社のWebサイトやアプリ上で各種コミュニケーション施策を行う「オウンドメディア(Owned Media)」である。このうち、同社は「オウンドメディア」を主軸としたデジタルサービス開発やデジタルマーケティング施策の立案・開発・運用などを強みとしている。
同社の強みは創業から25年間、CXの向上を起点としてプロジェクトに取り組んできたことで、あるべきCXを実現するための引き出しを多く持っていることにある(=高いコンサルティング力)。CXとは直訳すると顧客体験のことだが、「顧客が店頭、広告、Webサイト、アプリなど様々な接点を通して、企業が提供するサービスや商品に興味・関心を持ち、購入し、利用し続ける一連の体験」を指し、CXを高めることで商品の購入につなげる、あるいはその企業やブランドのファンになってもらうことが最終的な目標となる。こうしたCXのデザインから構築、運用・改善等の一連のプロセスをPDCAで回すことでより良いものにし、顧客企業の事業成長を支援している。また、同社はスペシャリストとしてのUXデザイナー以外の人材がUXデザインの価値を理解し、プロジェクトを推進できることも強みだ。社内のUXデザインレベルを高める活動として、一定のスキルを満たした従業員などに対して認定を行う制度を運用しており、UX講習※の受講者は156名と全従業員の約8割が受講しており、うち12名が資格認定者である(2024年5月末時点)。
※ UXに関する基礎知識の習得だけでなく、ワークショップで実際にUXデザインを行う6ヶ月間の講習。
CXを効果的に高める方法はクライアントの事業内容によって異なるため、案件ごとにクライアントが直面する本質的な課題を踏まえた上で「目指すべきゴール」を設定するカスタムプロジェクトとなる。一般的にプロジェクト期間は3ヶ月程度、長いもので1年程度となる。また、それ以降も継続して成果を出し続けるためにクライアントと伴走するためのサービス提供を行う。システム開発部分に関しては目指すゴールにより必要なテクノロジーを組み合わせるため、外部パートナーを含めて臨機応変に体制を構成している。受注単価は案件によって様々だが、クライアントが持つ既存システムとの複合的な連携や、クライアント社内の横断的な調整といった、能動的な繋ぎ込みを行うことでプロジェクト全体の進行をドライブすることが求められるなど、プロジェクトが複雑化かつ大型化する傾向にある。これはCX/DXプロジェクトが目指すものが「クライアント自身の変革」となる傾向が強まっているためでもある。また、デジタルマーケティング技術もAI技術を取り入れるなど日々進化を続けており、ここ最近はクライアントの要求もより専門的かつ高度化している。こうした市場環境において、同社の課題であった高度なシステム開発についてはNTTデータと協業することによって解消されつつあり、協業案件の増加によって同社の業績も低迷期を脱するなどシナジー効果が出始めている。
カスタムプロジェクト以外では、自社及び他社開発プロダクトの導入支援も行っている。クライアントの業種は小売・飲食業やサービス業、製造業、金融業など幅広く、顧客規模は日本を代表する大企業が中心だ。なかでも、オウンドメディアによるデジタルマーケティングの重要性が高いBtoC領域を展開するクライアントが多く、最近手掛けた大型案件にはスターバックスコーヒージャパン(株)(以下、スターバックス)やモスフードサービス<8153>などのプロジェクトがある。
2024年3月期までの3期間の顧客別売上構成比では、NTTデータを中心としたNTTグループが3~4割と最も高く、次いで小売・飲食業が2~3割、サービス業が1割台となっている。2024年3月期の個社別売上構成比ではNTTデータが30.9%、スターバックスが12.3%となっており、両社で売上高の40%以上を占める状況が続いている。NTTデータ向けでは通信業や金融、自治体向けの協業案件が多く、今後も協業関係を強化していくことで売上規模も中期的に拡大していくと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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