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クラウドW Research Memo(4):2024年9月期はM&A効果などにより増収。SaaSの損益も改善


2024年9月期におけるクラウドワークスの業績は、売上高が前年比29.5%増の17,113百万円と急成長を遂げました。この成長は、既存事業の好調とM&Aによる新規子会社の貢献約20億円によるものです。特に、エンジニアやデザイナー向けのエージェント領域が順調で、売上を牽引しました。また、SaaS事業では売上高が大幅に増加し、営業損失も改善しました。財務面では、自己資本は利益拡大に伴い順調に積み上がっており、健全な状態を維持しています。M&Aにより一時的に負債が増加しましたが、手元流動性は十分にあると評価されています。また、企業のキャッシュフローに関しても、M&A関連の支出が影響した一過性の負担が見られるものの、全体としては良好な状態を保っています。ROEは税負担増で低下しましたが、収益力は依然として高い水準を保っています。

*12:34JST クラウドW Research Memo(4):2024年9月期はM&A効果などにより増収。SaaSの損益も改善 ■クラウドワークス<3900>の業績動向

1. 2024年9月期の業績概要
2024年9月期の業績は、売上高が前期比29.5%増の17,113百万円、売上総利益が同27.7%増の7,846百万円、営業利益が同16.2%増の1,340百万円、EBITDA(Non-GAAP)が同22.6%増の1,741百万円、経常利益が同11.9%増の1,386百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同16.9%減の910百万円となった。期初計画は売上高15,860百万円、売上総利益7,370百万円、営業利益1,270百万円、EBITDA(Non-GAAP)が1,570百万円といずれの項目も過達して着地し、売上高・営業利益ともに過去最高値を更新した。

売上高は、既存事業の好調及びM&Aに伴う子会社の新規連結効果(約20億円)により大幅増収となった。営業利益は、M&Aにかかる費用増やのれん償却費増などの営業コストの拡大影響を受けたものの、増収効果により2ケタ増益を確保した。親会社株主に帰属する当期純利益が減益となった要因は、累積損失の解消により支払う法人税等の税金が通常水準に戻り、税率が10.47%から31.9%に増加したことよるものである。この影響は一時的で、2025年9月期以降に継続するものではない。

2.事業セグメント別動向
1) マッチング事業
マッチング事業の売上高は前期比27.3%増の16,235百万円(うちプラットフォーム領域は同2.8%増の1,891百万円、エージェント領域は同31.5%増の14,343百万円)、売上総利益は同22.9%増の6,992百万円、営業利益は同2.2%増の1,351百万円と拡大した。売上面はエンジニア・デザイナー向けのエージェント領域の好調及び子会社の新規連結効果により、大幅増収となった。営業利益はM&Aにかかる費用増及びのれん償却費の拡大などにより小幅増益に留まったが、同影響を除いたベースでは順調な着地であった。

2) ビジネス向けSaaS事業
ビジネス向けSaaS事業の売上高は前期比82.3%増の768百万円、営業損失は71百万円(前期は197百万円の損失)と、前期に比べ改善した。主力サービス「クラウドログ」の2024年9月期第4四半期のARR※は前年同期比31.6%増の646百万円と好調が継続、チャーンレート(直近12ヶ月平均解約率)は1.05%と低位を維持している。また、同第3四半期からグループインした(株)AI techのSaaS事業を加えると、ARRは928百万円と拡大した。

※ Annual Recurring Revenueの略。年間経常売上。


自己資本は順調に積み上がる。健全な財務状況

3. 財務状況と経営指標
2024年9月期末の財務状況は、総資産は前期末比3,542百万円増加の13,537百万円となった。うち、流動資産は同924百万円増の8,827百万円、固定資産は同2,618百万円増の4,709百万円であり、固定資産は主にM&Aに伴う株式取得及びのれんの計上などにより増加した。

負債合計は前期末比2,276百万円増加の6,232百万円となった。うち、流動負債は同1,794百万円増の5,534百万円、固定負債は同482百万円増の698百万円であり、M&Aの実施により有利子負債が同1,336百万円増加した。

純資産は前期比1,265百万円増の7,304百万円となった。利益拡大に伴い、利益剰余金は同867百円増の1,165百万円と積み上がった。

自己資本比率は、借入の増加により前期比7.1ポイント減の50.8%と低下したが、自己資本は利益創出により同1,095百円増の6,879百万円と順調に積み上がっている。ネットデット(有利子負債-現金及び預金)は2023年9月期よりも借入が増加し同1,111百万円悪化したものの、-3,926百万円とマイナスの状態を維持していることから、手元流動性は十分にあると言える。

ROEは前期より6.8ポイント減の14.4%と低下したが、累積損失の解消に伴う税額の増加による売上高当期純利益率の低下が影響した。M&Aや既存投資の強化を中心とする成長投資の加速により財務レバレッジが高まっているものの、財務は健全な状態である。

4. キャッシュ・フロー
2024年9月期のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが1,680百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが2,440百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが960百万円の収入であった。フリー・キャッシュ・フローは759百万円の支出となったが、その影響の大半はM&Aに伴う支出の影響であり、一過性である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)

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